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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十九章

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第528話 威力偵察 前編


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほおう、ここがダンジョンの内部か」


「ヴァルドゥスは大分長生きしているんだろぅ? 人化も出来るんだし、これまでダンジョンに入ったことはないのかぁ?」


「確かに我は"人化"スキルを取得しておるが、そうそう使うことのないスキルなのだ。ましてや、ダンジョンに入る為に人化しようなどという発想すら浮かばなかったわ」


「へー、そんなもんなんだなー」


 北条達が会話をしているのは、久々に訪れた中間地点。

 初見殺しエリアを抜けた先にある、それなりに広い洞窟内の空間だ。

 部屋の隅にはレイドパーティー対応の迷宮碑(ガルストーン)が設置されていて、つい先ほど北条達はそこへ転移してきた。


 地面には二つの魔法陣が描かれており、そのうちの片方が初見殺しエリア五十層のドレイクを突破した先と通じていたものだ。

 しかしこちらから魔力を送っても、初見殺しエリアに飛ぶことは出来ない。

 もう一方の魔法陣もそれは同様だ。

 どちらも片道通行しか出来ないのだろう。


「それにしてもこっちの魔法陣は何なのかしらね」


 前回と同じように、もう一つの魔法陣に魔力を籠めたりして色々試してみるが、うんともすんとも反応がない。


「ううむ。見た所、こちらもそっちと同じようにどこかから転移してくる為の魔法陣だろう。どこから通じてるのかは、トンと見当がつかぬがな」


 魔法陣の文様などを調べていたヴェナンドが、知見を述べる。

 彼は"魔法陣知識"のスキルを持っており、それなりにこの手のことには詳しい。

 ……とはいっても、素人目に見てももう片方の魔法陣と模様が殆ど同じなので、同じようなものなのだろうとは予想はついていたが。


「まあ結局はあのどちらかに進むしかないってことだぁ」


 北条の視線の先には二つの分岐路がある。


「んじゃとにかく行ってみよーぜ」


 龍之介の意見にのっかるように、全員が移動を開始する。

 その結果、大小の入口の先にはどちらも魔法陣が設置されていることが判明した。

 片方は前回北条がチェックしてはいたが、やはりもう片方にも同じように魔法陣が設置されていたようだ。


「じゃ、まあ……こっちから行くかぁ」


 緊張感のない声で北条が告げたのは、小さい方の出入り口の先にあった魔法陣近くでのこと。

 恐らくは大きい方の出入り口の先が、レイドエリア仕様になってるんじゃないか? ということで、先にこちらの魔法陣を選ぶことになった。




「これは……」


「緊張してたけどなんかふつーだね?」


「普通……かあ? なんかなんっもねえぜ、ここ」


 転移した先はフィールドエリアのようで、何もない平地がどこまでも続いている。

 地面には草が僅かに生えて茂っているのみで、他に樹木や動物などの姿も見られない。

 見渡す限り視線が通る、だだっ広い空間の中に突然放りだされた感じだ。


「空の様子も嫌な感じがしますね……」


 上を見上げていたメアリーがポツッと感想を漏らす。

 空は灰色の雲に覆われており、周囲はどこまでも薄暗い。

 真っ暗という程でもないのだが、どしゃぶりの雷雨の時のような雲がどこまでも続いている。


「でもまあ、どうやらさっきの中間地点には戻れるらしい。これならちょっと調査して戻ってくることもできるなぁ」


 転移した先には魔法陣セットが敷かれている。

 石造りの床や、四方に立つ小さな柱状の建築物。

 中心部分に描かれている魔法陣は、一方通行ではなくこちらからも元の場所に戻れる仕様の魔法陣だ。


「それでは早速調べるとしましょう」


「うむ」


 メアリーの言葉に鷹揚に応えた北条は、〈従魔の壺〉を取り出して従魔を呼び出していく。

 アーシアとヴァルドゥスだけは中間地点の部屋で先に呼び出していたが、他の魔物はまだ呼び出していなかったのだ。


「これはあの時引き連れていた魔物たちじゃな」


 それを見てヴァルドゥスが北条と出会った時のことを思い出す。

 ヴァルドゥスらとの戦闘直前に"空間魔法"で退避させた彼らだが、拠点へ帰還する直前に再度"召喚魔法"の【サモン】で呼び出して合流している。


 一度契約した魔物は【デポテーション】の魔法で送り返すことはできなくなるが、【サモン】で傍に呼び出すことは可能だ。

 ただし、ダンジョンの内外で隔たれていた場合は【サモン】は効果を発揮しない。

 北条がわざわざ〈従魔の壺〉に従魔を収納しているのも、それが理由だ。


「ううむ、これ程までに多種多様な魔物たちを従えるとは。それにあちらにいるのはフェンリルではないか!?」


 呼び出した魔物を見て、ヴェナンドが興奮した様子で声を張り上げる。


「言ってなかったかぁ? "召喚魔法"には【コントラクト】っつう魔法があって、それで魔物使いのように契約を結び、召喚した魔物を従魔として契約出来るんだよ」


「なぁっ! なんと!?」


「あれ? ヴェン知らなかったの? メイが連れてるマンジュウ達だってそうだったじゃん」


 ヴェナンドとファエルモはここ数か月の間、芽衣と同じパーティーで活動していた。

 しかしコミュ障気味のヴェナンドは、芽衣と殆ど交流しておらずそのことに気づかなかったらしい。

 逆にファエルモの方はすっかりメンバーとも打ち解けており、拠点内での休日には由里香や芽衣と町に遊びに行ったりしている。


「んなことより、早く調査にいこうぜ」


「ふふ、リューノスケと一緒ってのも久しぶりだね?」


「ぐ、ぐぅ……。さ、先いくぞ!」


 出発しようとした間際に始まった会話に、早く探索に行きたい龍之介が急かせようと発言する。

 しかしその発言に、すぐさまファエルモが反応を示した。

 そして嬉しそうに腕にまとわりつくファエルモを振り解きながら、龍之介は一人歩き出す。


「やれやれ、じゃあ皆も龍之介の後に続いて移動開始するぞぉ」


 こうして新エリアの威力偵察が開始されることとなった。







▽△▽△▽



「……なんつうか、ふつー……だったな」


 新エリアに入ってから、丸一日調査を続けた北条達一行。

 どうやらこのエリアには朝や夜といったものがないようで、一日中この薄暗い天気が続くようだった。


 魔物の方は、龍之介が言うようにいきなり強い魔物が出てくるとかいうこともなく、ロックボアやグローツラングなどこれまで見たことのあるような魔物から、ウィンドカットやピコリータなどの魔物が出現するようだ。

 前者はこれまで遭遇経験があった魔物達。

 後者は北条の従魔が進化した種族なので見覚えはあったが、魔物として遭遇するのは今回が初めてだった。


 これらこの階層で出現する魔物は全てCランクの魔物であり、一日中歩き回った範囲内では、DランクやBランクの魔物とは遭遇することはなかった。

 中間地点を挟んで一つ前の、初見殺し四十一~五十層ではBランクの魔物も出現していたので、そこより魔物が弱くなったことになる。


「そうですね。魔物もなんだか弱くなっているようですし」


「んー、まあメアリーの言う通りなんだけど、それでもCランクの魔物って普通の冒険者からしたら強敵なんだけどね」


 ただでさえ引き連れている従魔達が張り切っていたので、メアリーが実際にメイスを振るって戦う場面は殆どなかった。

 そのことで少し悶々としているかのようなメアリー。


「確かにあのエリアに比べたら魔物は弱いがぁ、ここが最初のエリア、最初の階層だというのも忘れてはならん」


 この先どれくらいこのエリアが続いているかは不明だが、最弱の階層からCランクの魔物が出るということは、少なくともこの先Bランクの魔物が出る階層も出てくるものと思われる。

 あるいは更にその上の、Aランクの魔物が控えていることだってありえるのだ。


「でもま、この調子なら一つのパーティーだけでもいけそうだな!」


「まあそうだなぁ。ただここにくるまでが大変なんだがぁ……」


 一度踏破してきたとはいえ、初見殺しエリアは全部で三十層近くもある。

 今度は地図があるから、一直線に進むだけなら大分期間は短縮できるだろう。

 ただ今後のことを考え、マッピングしながら先に進むとしたら、かなりの時間が掛かることだろう。



 結局北条達は丸一日の調査を終えた後、それ以上先へは進まずに元の中間地点まで戻ることにした。

 そして魔物も出ない、安全地帯である中間地点で休憩を取った後に、今度は大きい方の出入り口の先へと調査に赴くのだった。



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