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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第446話 今後の方針


 今日の朝は『サムライトラベラーズ』の見送りから始まり、続く『メッサーナ商会』からの使者による貴族の反乱の話によって、一日中話し合いが続けられていた。

 その途中マデリーネ、アリッサの両名とも合流し、更に細かいあれやこれやを話し合っている内に、すっかり陽も暮れ始めている。

 そうした長時間に及ぶ話し合いも、信也の発言によってそろそろ一旦の区切りとする頃合だ。


「まず最初に、今回の問題は俺たちだけの問題ではない。町の人にも力を借りる必要がある」


「それって冒険者たちのことですか?」


「勿論それもあるが、ここの代官をしているアウラ様も交えて話し合った方がいいだろう」


「それならば、アウラ様への使者は私が務めよう」


「うん、それが一番適任だと思う。任せた」


 マデリーネが我こそはと声を上げ、信也はアウラへの使者をマデリーネに託す。


「後は冒険者ね」


「それなんだが、この貴族反乱の情報はまだ一般には出回っていないはずだ。俺たちが下手に扇動する形になっても混乱しそうなので、そこら辺はまずアウラ様と話し合って対処を決めてからにした方がいいだろう」


「それもそっか」


「なので本格的に動くのはアウラ様との話し合いの後になるが、冒険者は大きなファクターの一つだ。戦力として出来るだけ多く確保しておきたいし、逆に貴族側に参加しないように説得もしておきたい」


 この辺りは正直信也の目算では厳しいだろうと思っている。

 冒険者に何か頼むのには、やはり報酬というものが一番大きい。

 アウラとの話し合いにもよるが、恐らくは冒険者を雇うとしてもそれほど多くの予算はないだろう。


 だから今回は別方面から呼びかけて説得をして、貴族側に回らないように根回しする位で手一杯かもしれない。

 しかし、それでも何もしないよりはマシだと信也は判断する。

 例えば、貴族派がこの町を支配下においたら、まともにダンジョンに潜れなくなる恐れがあるぞ、とでも囁いてやれば少しは効果もあるだろう。


「ふむ……。確かにそれはあり得ない話ではない。迷宮都市の中には、中に入るのに入場料を取っている場所もあるからな」


 例として信也が思い付きで出した話だったが、マデリーネによるとそう的外れな意見でもないらしい。

 傲慢な貴族派ならば、法外な入場料を要求してくることも予想できるとのことだ。


「そうなのか。少しでも冒険者を説得出来る要素があるなら、それを積極的に使っていこう」


「冒険者の説得か。それならまさに僕らにはうってつけだね」


 自信ありげにシグルドが言うと、他のメンバーも同様の反応を示す。



「他にも冒険者相手に情報収集もしておきたい。他領で有力な冒険者の情報を集めておけば、敵に加わっていた場合判断もしやすくなるだろう」


「他領の有力な冒険者ねえ。そうなるとやっぱり……」


「あの勇者……ですか」


 信也も発言しながら『勇者』シルヴァーノのことを思い浮かべていたが、陽子もやはりその顔が浮かんでいたらしい。

 続いて発言した咲良も、眉間に皺を寄せながらあの男の顔を思い浮かべる。


「シルヴァーノか……。私が己の力不足を感じ、冒険者になるきっかけとなった男だな」


 そう言うマデリーネも、やはりしかめっ面を浮かべている。

 ライオットもシルヴァーノとは面識があり、やはり彼もシルヴァーノにはいい思い出がない。

 この場にいる殆どの人物から嫌われているシルヴァーノ。

 出来るなら無視したい所だが、敵として立ちはだかった場合はそうもいかない。


「奴については俺たちは一度戦っている。手持ちのスキルなども割れているので、それについては後程説明しよう。間違いなく敵陣に参加しているだろうからな」


 あの時は結局危うい所をゼンダーソンに助けられたが、今は地獄のレイドエリア修行によって皆のレベルも大分上がっているし、他の仲間たちもいる。

 前回よりはまともに戦えるようにはなっているだろう。


「後はこの拠点で暮らしてる人に、しっかり避難訓練などをしておかないとな」


「避難訓練? 一体どこに避難するというのだ?」


 信也の口から漏れた避難訓練という言葉に、マデリーネが疑問を呈する。


 山賊集団が小さな村などを襲う場合は、それこそ女以外を皆殺しにして根こそぎ略奪した挙句、村に火をつけて破壊の限りを尽くすこともある。

 しかし、軍隊であればその後その場所を統治することになるので、住民を皆殺しにするようなことを通常は行わない。


 兵達へも略奪の日数を制限するなどして、やりすぎないよう注意する。

 また各種神殿や冒険者ギルドなど、世界的な規模の組織の施設にも通常手を出されることはない。


 とはいえあくまでそれらは一般的な話であり、戦に勝利して興奮している兵士であれば、時にやりすぎることもままある。

 要するに占領された町は基本どこも危険だということだ。



「俺は北条さんから、この拠点に関する情報を色々教えてもらっていてな。この拠点の地下には下水道が流れているんだが、その地下内部には緊急時用の避難部屋も用意されている」


「そういえばそんなのも作ってたわね」


「中にはしばらく暮らしていけるように食料や水、生活設備が整えられている。それに入口も巧妙に隠されているので、見つかる可能性も低い。ここなら拠点が占拠されても、しばらくは大丈夫だろう」


 信也は北条からこの避難部屋の場所と、中への入り方も教えてもらっている。

 もし拠点が占拠されることがあっても、避難部屋に退避している間に北条が戻ってくれば、拠点奪取の目途もつくだろう。


「そうか……。私も領民のことはどうしようかと思っていたから、避難する場所もあるようで助かったよ」


 信也の発言に一番安心したのはロアナだ。

 領民共々この拠点へと移住し、充実した日々を送っていたロアナにとって、今回の話は寝耳に水だった。


 このような状況下では、力の無い農民はただ震えて嵐が過ぎ去るのを待つしかできない。

 だというのに、幸いなことに北条は避難場所まで用意していたという。


「北条さんは病的な位、この拠点を改造していたからな」


「なんかいっつも楽しそうに拠点を弄繰り回してたッス」


 何故そこまで? という程に要塞のような拠点になってしまっていたが、今はそのことが彼らの安心に繋がっているようだ。

 この拠点が建築されていなければ、流石に町が襲われるとしても抵抗しようとはならなかったかもしれない。



「さて、そういう訳でまずはマデリーネにアウラ様と繋いでもらい、そこで話をしてから本格的に動き出すことになると思う」


「今日はもう遅いので、明日の朝にでもアウラ様にお目通り願おうと思っている。緊急事態故、もしかしたら明日の午後には話し合いの場が持たれるかもしれない」


「分かった。では俺たちは拠点で待機しておこう」


 長かった本日の話し合いも、ここで一先ず終わりとなった。

 しかし各人思うところがあるのかその場からなかなか去ろうとはせず、ざわめきが広がっていく。


「うーー、拠点でジッとしてるだけってのもきちーな」


「ならムルーダ。午前中は俺と訓練でもしないか?」


「……僕も訓練しておこうかな?」


 ムルーダとキカンスは明日の午前中の予定について話しており、それにつられてシグルドも彼らに同調している。

 近日中に人同士の争いがあるかもしれないとなって、対人の訓練を積んでおきたいという心理が働いたのだろう。


 こうして一日が終わり、次の日からはアウラを交えての対策会議が開かれることとなった。

 そして数日間にわたる話し合いが終わり、今後の方針について決定される頃になって、ようやく《ジャガー町》にも王都の急変の知らせが届いたのだった。



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