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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第444話 英雄への対処法


「英雄というのは要するにレベルが高く、一人いるだけで戦術をひっくり返すような、そういった能力の持ち主のことだ。その強さによっては戦略すらも跳ね返すという」


「つまり、北条さんのような人のことか」


「そうだ。英雄が一人いるだけで戦術を見直さなくてはならない、と言われている」


「確かに団長が敵にいたらと思うと絶望的だね。というか、戦術レベルでどうこうなるレベルじゃないよ」


「むむ……。ホージョーの実力はそこまでなのか?」


 マデリーネとアリッサは、北条がハイクラスな魔法を使用してる現場に居合わせたことがない。

 レイドエリアで修行していた時もそのような魔法を使用することがなかったので、強いという認識はあっても他のメンバーほどの確固たるイメージを持っていなかった。


「あの時団長が見せてくれた魔法は、どれも超一級品と言える魔法だった。あの魔法実演会で私の団長に対するイメージは大きく変わったし、団長もそれを意識していたんだと思う」


「確かにケイドルヴァもあれ以来見る目が変わったね」


 ライオットの言葉に、ケイドルヴァら魔術士組は皆一様に頷いている。



「それは何も魔術士だけじゃなくて、僕らも同じさ。Bランクとなった今でも団長と事を構える気は微塵も起きない。だからこそ気になるんだけど、英雄を相手に戦術を見直すっていうのは例えばどういう感じなんだい?」


「それは相手の能力や戦況によっても異なってくる。例えば、英雄相手に捨て駒をぶつけて時間稼ぎや英雄を消耗させている間に、他方に戦力を集中して打ち破るといった方法がある」


 これは英雄が一人、もしくは同じ場所に偏っている場合に有効だ。

 英雄といえど体が一つである以上、複数の戦場で同時に戦うことは出来ない。

 これを突き詰めていって、英雄からは完全に逃げ回っておきながら、相手陣営の隙をついて攻撃を仕掛けるといった作戦もある。


「それから普通に金銭や女などで篭絡する方法もあるし、家族や大事な人を人質に取るなどという方法もある。それと英雄といえど、全てにおいて欠点のない人物などはいない。毒に対しては高レベルの英雄は"毒耐性"を持っていることも多いが、そのほかの状態異常を仕掛けて無力化する方法もある」


「可能であるなら暗殺という手もある……か」


「それも効果的だ。英雄と呼ばれる者は大抵近接戦闘系か魔法系かのどちらかになる。気配を殺して急所を突くような暗殺者系なら、いくら相手のレベルが高くても魔法系英雄に対しては有効だし、近接系英雄相手でも上手くいく可能性はある」


「つまり英雄と真っ向からぶつかるのは得策ではないという事だな?」


「こちらにも英雄がいるならそれをぶつければいいのだが、基本的にはそうだ」


 現在の『ジャガーノート』の戦力は、シグルドら『リノイの果てなき地平』の

面々が全員Bランクになっているので、戦力としてはそれだけでもかなり大きい。


 基本的に英雄と呼ばれるくらいの強さを持つ者は、冒険者ランクでいえばAランク以上。レベルでいえば八十以上の者が該当する。

 他にも、前衛であれば闘技スキルの奥義クラスを覚えているだとか、魔術士であれば上位魔法を使えるとかいった目安もあった。


 現在のシグルドらのパーティーであれば、英雄の一人を相手にするくらいならば問題はないだろう。

 しかし英雄一人相手にBランクパーティーが足止めされれば、他の人の負担は必然的に高まる。



「他には英雄に対する手というのはないのか?」


「無いことはない。この国自体は大規模な戦争を久しく経験していないが、人間というのは昔から戦いを続けてきているからな。英雄相手に真正面から挑む方法、或いは高位の魔物に対して挑む方法なども研究されている」


「なら相手に英雄がいても、その方法使えばいーんじゃね?」


 ムルーダがポンと軽く言い放つが、マデリーネは首を横に振って見せる。


「それがそうそう上手くはいかん。例えば、英雄相手に弱兵からぶつけていき、相手の消耗を強いるという方法もあるが、これは今の我々にはとれない戦法だ」


 そもそも通常戦力の段階で大きな差があるので、今回はその戦法を取ることはできない。

 それに犠牲も多くでる戦法なので、条件が整っていても易々と実行できるものではなかった。


「他にもデバフ攻め、状態異常攻め、といったものがある。これは、英雄相手では抵抗されて効果が発揮しづらいとしても、数で勝負すればいつかはデバフや状態異常にかかるだろう、というある意味運任せな方法だ」


 英雄の耐性スキルがどの程度かによっても効果は変動するが、レベル差の高い相手であろうと、確率的に状態異常やデバフにかかる確率がゼロになることはほぼない。


 問題はそうやって弱体化させられたとしても、基本的に英雄は強いということだ。

 状態異常やデバフが解除されるまで逃げ回られればそれまでだし、アイテムで回復されることもある。

 弱った状態でも最低Dランク位の兵でなければ、まともにダメージも与えられない。


「他には防御の固い者を英雄に張り付かせ、魔法や弓の遠距離攻撃で地味に削るという方法もある。一見かすり傷のような攻撃でも、膨大に蓄積されると人は死ぬ。それは英雄とて変わらない」


 これは異邦人である信也らには理解しにくい感覚だが、HPというものが存在するこの異世界(ティルリンティ)では、見た目でのダメージイメージと実際のHPが一致しないことがある。

 特に表面に現れにくい打撃攻撃や、直接HPを削る"光魔法"、"闇魔法"によって削られたHPは特に分かり辛い。

 

 そうした一度の攻撃では0.1ダメージといった微小なダメージであろうと、絶え間なく攻撃されることで徐々に削られて行くことになる。

 理論的にはレベルの低い一般人であれば、デコピン程度でも数万回くらい連続してやられると死ぬ可能性があるのだ。

 勿論、防御力が高ければ完全にダメージをゼロで抑えることもできるのだが、それには攻撃側と防御側に余程の差がなければならない。



「塵も積もれば……という奴か」


 信也もこの世界で戦いを続けている内に、自分の身体的な状態とは別に今どれだけ自分のHPが残っているのかというのを、感覚的に理解出来るようになっている。


 格下相手でもまともに攻撃を食らうと、確かにほんの僅かにだがHPが減る感触というのも味わっていた。

 それが積み重なっていくとまずいことになるだろうというのは、予想出来る範囲ではある。


「あとは集団を活かすとなれば、集団で発動するスキルや魔法も効果的だろう。パーティースキルやレイドスキルの中には、メンバーを強化するなどの補助系以外にも、協力攻撃のようなことができるスキルもあると聞く」


 ただしこれに関しては、完全にスキル所有者がいないと発動できない類のものなので、そうそう使えるものではない。


「更に魔法に限って言えば簡易魔法陣を敷いて複数名の魔術士の力を合わせ、より威力を高めた魔法を撃ちだすという技術もある。これに関しては私も専門ではないので詳しくは分からないのだが……」


 こういった技術は魔法研究機関でも研究されてはいるが、基本的には国が抱える研究機関によって研究がされていた。

 『儀式魔法』を呼ばれるこの技術は、各国が抱えている魔術士隊の指揮官レベルの者には必須となっていて、これによってレベル差のある相手に少しでも対応できるようになっている。


「それって儀式魔法のことかな?」


「ケイドルヴァ、知っているのかい?」


「専門に学んではいないけど、概容程度は知ってるよ。けど、あれは念入りな練習も必要だし、そもそもの土台となる魔法陣の知識がないと話にならないよ」


「付け焼刃では効果が望めないということか」


 信也が結論を述べると、ケイドルヴァは一言「そうだね」と頷く。



「これまでの話を纏めると、英雄が現れたらデバフや状態異常を意識して攻撃しつつ、正面からぶつかるって感じかしらね」


 陽子が簡単に話を纏めると、ウーンウーンと考え込んでいたムルーダや由里香などに理解の色が広がっていく。


「ついでにいえば、英雄がいたら真っ先に攻撃を集中して倒しちゃうってのもいいかもね」


 シグルドの意見に、賛成の声が幾つも重なる。

 英雄に集中している間は他の場所が辛くなるだろうけど、問題である英雄を倒してしまえば後は気分的にも楽になれる。相手の士気もくじけるかもしれない。


「うん、その案は良さそうだ。あとは実際に英雄が敵に混じっているのか、という話なんだが……」


 粗方英雄に対しての対処法などを語ったマデリーネは、次に今回の戦で想定される英雄についての見解を語り始めた。



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