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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第443話 第二回 クラン会議 後編


「あの~。敵の数はいいんですけど~、敵の個別の強さってどうなんですか~?」


「む、敵兵個別の強さ……か。それは一概には言えぬものであるが……」


 芽衣の質問にマデリーネが考え込む。

 それほど回数は多くないが、マデリーネとアリッサはアウラの従者として、一般兵と魔物狩りをした経験があった。

 その時のことや、これまでの経験からマデリーネが芽衣の質問に答える。


「そうだな。各兵の強さはそれこそバラバラなので、これはあくまで参考程度に留めて欲しいのだが……」


 そう前置きして話し始めるマデリーネ。

 彼女の語るところによると『ロディニア王国』の戦力は以下のようなものであるらしい。


 まずこのロディニアには第一軍団から第四軍団までがあり、それぞれ特色を持っている。

 第一軍団が王都を守るエリート騎士で構成された、一番練度が高く精鋭と呼ばれた部隊だ。


 そして第二軍団は主に、騎士や腕に自信のある兵士。それから貴族の子弟などで構成されている。

 第三軍団は平民出のものを中心に構成されており、第二、第三は常備軍として組織されているので、常日頃から訓練や魔物狩りなどのレベル上げを行っている。


 最後の第四軍団は、軍団と名が付いてはいるが実際は民兵などの集まりであり、村の自警団なども含まれる。

 恒久的に兵として戦う訳でもないので、戦闘訓練なども最低限しか行われておらず、四つの軍団の中では一番練度が低い。

 平時であればそこまで数は多くないのだが、戦時ともなれば幾らでも徴用できるので、数だけでいえば第四軍団が一番動員数が多い。



「……そっか。戦うとなったら、その辺の農民の人なんかと戦うこともあるんっすね……」


 マデリーネからロディニア王国の兵士達の話を聞いて、由里香がポツリと呟く。


「そうだな。しかし、それが戦争というものだ。敵も好き好んで参加した者ばかりではない。特に貴族派の貴族ならば、強引な手法で働き手である村の男達を徴用するだろう」


 マデリーネの説明は、殊更に異邦人にとっては触れたくない現実であった。

 由里香も実際にそうした相手と戦った時のことを想像したのか、「うぅぅ……」と頭を抱えている。


「……それでも俺は、皆を守るため、この地での冒険者としての生活を確保する為ならば、相手がどんな境遇の者であろうと戦おう」


「和泉……」


 陽子が驚きの混じった声で信也の名を呼ぶ。

 こういったことに一番拒否反応を示しそうな信也だったが、先ほどの言葉は勢いで飛び出たものではなかった。

 その証拠に、苦しそうに顔を歪めながらも信也の瞳は力強く前を見据えていた。


「そッスね。僕の人生、思い返すと色々と逃げて来てばかりな気がするけど、今はこの拠点を守るためにも戦ってみたいって思うッス」


 ロベルトが信也に同調して意見を述べると、キカンスが更に後に続く。


「そうだな、俺もその辺は同じだ。団長たちは俺たちが獣人であろうと、気にせず迎え入れてくれた。無駄死にするつもりはないが、俺も戦わせてくれ」


 「俺は――」 「私は――」


 それからも、『ジャガーノート』のメンバーから次々と声が上がっていく。

 各人それぞれ別の理由があるにせよ、今の生活を守るために戦うという意見が多い。

 少なくとも、最初から全てをほっぽり出して逃げるという意見は出なかった。



「お前達……」


 それら仲間の声に、一人でダンジョンに挑戦するかのような面持ちでいた信也は、心の奥から湧き上がってくる熱い気持ちを感じていた。

 知らずの内に零れそうになる涙をグッと堪え、信也は話を本題へと戻す。


「皆の意見、よく分かった。そこでまずこれだけは了解を取っておきたい。相手の戦力が想定外に多い場合は、無理せず一旦引く。しかし、持ちこたえられそうな数であれば抗戦する、と」


「おおうっ!」


「ま、仕方ないわね」


「ケイドルヴァの火炎の妙技。見せてやるね」


「フハハハハ!! 我が参戦すれば、たちまち戦場は嵐が吹き荒れるであろう!」



 こうして一先ずの『ジャガーノート』の方針は決定された。


 勿論こちらには兵を差し向けず、全軍で《鉱山都市グリーク》に向かう可能性もあるし、アルザスの防衛に成功する可能性だってある。

 今決定したのは、あくまで貴族派が《ジャガー町》にまで攻めこんできた場合の話だ。


 それとこの話をしている現時点では、貴族派が蜂起したという報告は届いていない。

 時期的な問題で、計画が春まで延期される可能性もあるだろう。


 そうしたことを踏まえた大まかな方針が決定された後は、細かい部分での話し合いが始まった。

 まず最初に、シグルドから先ほど芽衣が出した話題について、詳細を尋ねる質問が発せられる。




「それでマデリーネ。具体的に先ほど言っていた各軍団の兵は、冒険者ランクで言ったらどの程度なのかな?」


「む……、冒険者ランクで、か」


 まだ冒険者としての活動期間が短いマデリーネは、強さを語るときにそういった目線で考えることが余りなかった。

 だが、冒険者からすればランクで例えられると相手の強さについての想像がしやすい。


「そうだな……。第四軍団に関しては、平民から徴集するのでせいぜいG~Fランクといった所だろう」


「それなら戦力としては問題はなさそうだ、な」


 そうは言いつつも、信也の表情は芳しくない。

 いざ戦いとなったら、そういった相手を次々切り倒していかなければならない。

 相手は魔物ではなく人間であり、その背後には家族や恋人などもいることだろう。

 信也はそうした考えが頭に浮かびあがってくるのが止められずにいたが、それでも心を殺し、思考を鈍らせないよう話に集中していく。


「次に第三軍団だが、こちらは常備軍だけあって訓練を受け、それなりに魔物退治をしてレベルも上がっている。ランクとしてはF~Eランクといった所だろう」


 この第三軍団での一般兵は、第四軍団では部隊長として任命されることがある。

 そして第三軍団の部隊長には、一部の平民や貴族の子弟が就く。割合としては平民出の部隊長の方が多い。


「第二軍団も基本的には第三軍団と同じだが、強さを認められた平民が第二軍団に移される為、下はFランク。上はDランク位まではあると思う」


 下のFランクというのは主に貴族の子弟のことのようで、第二軍団ではそうした連中が部隊長となり、第三軍団上がりの強い兵を率いているらしい。

 他にも第二軍団は第三軍団と比べ魔術士隊の人数も多く、配属された神官の数も多い。


 そしてもう一つ特徴的なのは、数は少ないが国で雇っている傭兵隊が第二軍団に含まれていることだ。

 それなりに高い金を払って雇われているので、この部隊だけは平均的な戦力が高い。


「そうだな……。恐らく冒険者ランクでいえばE~Cランク位はあるだろう。それも、冒険者とは違って対人戦闘を専門にしてる奴らだ。ちょっとしたレベルの差で優位に立てる相手でもない」


「傭兵か……。それはちょっと避けたい相手だね」


 冒険者の中にも対人に特化した者や、相手が何であろうと寄せ付けない北条のような者もいるが、同レベルで比較した場合に厄介なのは傭兵の方であろう。

 シグルドも傭兵とは戦った経験があり、ついその時のことを思い出してしまう。




「とまあ、大体はそんな感じだ」


 説明を終えたマデリーネがそこで話を終えようとすると、待ったの声がかかる。

 その声の主は、黙って話を聞いていた信也だった。


「第二から第四までは把握したが、第一軍団はどうなってるんだ?」


「第一軍団は王都の守りを担当しているから関係ないだろう」


 マデリーネはそう言い捨てるが、そこにアリッサが加わってくる。


「でも、マディちゃん。今回ばかりは分からないんじゃなぁい? 全部動かすことはないかもしれないけどぉ、何割か動員される可能性はあると思うよぉ」


 アリッサに指摘され、改めて考えなおすマデリーネ。


「それも……そうか。第一軍団の騎士達にも貴族派の手は伸びていて然るべきだ。ただ私も第一軍団の騎士となると、殆ど面識がないので強さまではよく分からない。数がそれほど多くないのは分かっているが、ランクとしては……」


「最低でもDランクはありそぉだよねぇ?」


「そうだな。部隊長クラスとなればBランクの者もいると思う」


 しかも第一軍団ともなると、ただ単に対人戦闘に強いだけではない。

 集団での戦闘と、その集団を指揮する能力が高く、単純な能力値以上の団結力でもってより強力な相手を飲み込むこともある。

 冒険者もパーティー単位で活動してはいるが、それとこれとでは扱う人数が大きく異なるので、集団戦においては第一軍団には及ばない。



「ふむ……。何となくだが相手の戦力に関しては掴むことができた。問題はどれくらいの数、そしてどの軍団が襲って来るのか。といった所か」


「それも勿論重要だが、問題は英雄についてだな」


「英雄? 称号のことか?」


 英雄と聞いて、北条から聞いた話を信也は最初に思い浮かべていた。

 ゼンダーソンが拠点を立ち去った後、彼の保有している称号の中に『ユーラブリカの英雄』という称号があったという話だ。


「いや……。確かに称号にも英雄系のものは存在するが、今言っているのは別の話だ」


 信也の言っている称号とは、世界のシステム的に認識されているものであるが、それとは別に人々は英雄という言葉を使うことは多い。

 マデリーネは、かつて座学で習ったことのあった大規模戦闘における「英雄」について語り始めた。



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