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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十六章

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第442話 第二回 クラン会議 前編


 朝からの話し合いは、平行線のまま一旦休憩となった。

 その後、昼食を終えたライオットが町までマデリーネ達を迎えにいったが、彼女らの宿泊している宿に二人の姿はなかった。

 宿の人に尋ねても行き先は分からないとのことで、仕方なく拠点まで戻ってきたライオットだったが、拠点に戻ると探していた二人はすれ違いで拠点を訪れていたらしい。


「すまない。無駄足をさせてしまったようだ」


「いや、ちゃんと合流出来たんならそれでいいよ」


 こうしてフルメンバーが揃った状態で、再び話し合いが再開された。

 今回はアウラの従者であったマデリーネらが加わっている。

 彼女らもロディニアの民である以上、戦争の経験などは勿論ないのだが、兵士とは共に訓練をしたこともあったので、冒険者である他のメンバーよりは事情に明るい。



「実は今朝、我々の下にアウラ様からの使者が訪れたのだ」


 信也がマデリーネらに話を伺おうとすると、まず初めに口にしたのが午前中の彼女らの行動についてだった。


「ということは……」


「そうだ。こちらにも商会からの使者があったようだが、恐らく内容は同じであろう。貴族派の反乱についてだ」


「その件について、アウラ様はどうお考えなのでしょう?」


「アウラ様としては複雑な気持ちを抱いておいでなのだろう。武人として父君のおられるグリークへ馳せ参じたいというお気持ちと、代官としてこの地を守るべきだというお気持ちと」


「……アウラ様はどのような決断を?」


「それなのだが、実は『メッサーナ商会』は先にグリークを訪れていたようでな。すでにアーガス様からの命令書がアウラ様に届けられている」


 《鉱山都市グリーク》には、『メッサーナ商会』の東支部の拠点がある。

 一時期は《ジャガー町》に滞在していた東支部長のシノンも、今ではそちらを活動拠点として動いている。

 そのため、重要な情報はまず《鉱山都市グリーク》へと伝えられていた。


「アーガス様からの命令書の内容は、『防備を固め、いざという時の犠牲を出来るだけ抑えるように』とのことでした」


「防備を固めると言っても、この町にはまだ街壁もないだろう?」


「ああ、なので最優先すべきは領民の犠牲を減らすということだろう。グリークでは近隣住民の受け入れ態勢を整え始めているとのことだった。それと、勝ち目がない戦いで徹底攻勢するような真似はするなとも書かれてあった」


「そうだ……な。それは俺たちとしても基本はその方針でいいんじゃないかと思う」


 信也としては、日本へ帰還するための鍵がサルカディアにある以上、この地を離れたくないと思っている。

 しかし、戦乱に巻き込まれるような事態に遭うのなら、一時的にこの町を離れることも考慮に入れるべきだ。



「領主様はこの町に兵を派遣してはくれないのか?」


 キカンスが疑問に思った事を口からポロっと漏らすと、マデリーネが申し訳なさそうに答える。


「アウラ様の護衛として精鋭を何名か派遣して下さるそうだが、兵力としてはアルザスに集中させる為に、余裕がないそうだ……」


 『ロディニア王国』の東は、北から順にバルトロン領、グリーク領、ベネティス領と三辺境伯家が治めている。

 この三つの辺境伯家の内、バルトロン領とグリーク領の関係は良好であり、どちらも王家派に属している。


 またこれらの領の東には、雄大なガリアント山脈が聳えており、天然の防壁となっている。

 そして最北のバルトロン領の更に北はミランダ海と面している為、バルトロン領としては注意すべきは西のブライジル侯爵領だけだ。



 《迷宮都市リノイ》があるブライジル侯爵領は、中立派の貴族が治める土地だ。

 現時点での商会の調べでは特に動きはなく、様子見か中立を貫くと見られている。


 そのため、グリーク辺境伯はバルトロン辺境伯に援軍を要請する意向であり、恐らくその要請は通るだろう。

 しかし万が一の事を考えると、バルトロン辺境伯としても自領の守りの為に兵を残さざるを得ない。


 一方バリバリの貴族派であるベネティス辺境伯は、まずは周辺の貴族派の兵力を結集して、グリーク領に攻め込むものと予想される。

 その際に最初の攻略目標となるのが、グリーク領の南西にある都市アルザスだ。



「やはりアルザスが鍵となりそうだね」


 シグルドが改めて注目点を指摘する。

 今はまだ秋口といった季節だが、この先の冬のことを考えるとアルザスを落とした余勢を駆って、冬が来る前に更に軍を進めていくだろう。

 そうなるといよいよ《ジャガー町》も脅威に晒されることになる。


「それは間違いないだろうが、この町にわざわざ大軍で進攻してくることはないだろう」


「確かにダンジョンを擁するとはいっても、まだまだ発展途中だしね」


 陽子もマデリーネの所見に賛成意見を述べる。


「いや、そういった側面はあるのだが、地理的な問題もあるのだ」


「地理的?」


 気になった信也が質問を挟む。

 異邦人たちは一度だけ《鉱山都市グリーク》に行ったことはあるが、基本はこの町周辺で大半を過ごしている。

 そのせいか、周辺の地理に関してはかなり疎い。


「うむ。この《ジャガー町》の北から西にかけて、カラブリア山地が走っているのは知っているな?」


「……名前は初耳だったが、小さな山脈が連なっているのは知っている」


「この町は、そのカラブリア山地と東のガリアント山脈の間に位置している。そして町の南西にはマヌアヌ湿地という湿地帯があるのだ」


 その湿地帯は、カラブリア山地とガリアント山脈から流れ込んだ水によって形成されている。

 面積はかなり広く、湿地に適応した厄介な魔物も多く生息していた。


「このマヌアヌ湿地のせいで、アルザスから《ジャガー町》への最短ルートは大軍が進軍するには向いていない。少数で旅する商人なども態々この湿地を通ることはせず、迂回路を選ぶ程なのだ」


「そーいえば、ギルドの依頼にそのなんちゃら湿地の魔物を倒すって依頼があったっす!」


 《ジャガー町》の冒険者ギルドでは、当然ながらダンジョンにまつわる依頼が多い。

 しかしそれ以外に、周辺の魔物討伐や素材回収などの依頼も発注されている。


「そういった訳で、この町に進軍してくる場合は南の森を抜けてくるルートと、西の山地超えの二つの迂回ルートが考えられる。そのどちらにせよ、補給の問題などから大軍の移動に適したルートではない」


「もし奴らがアルザスを突破したとして、《ジャガー町》に兵を向けるとしたら具体的にはどれくらいの規模になる?」


 信也が質問すると、マデリーネは頭の中で大まかに考えをまとめ始める。


「……そうだな。小さな町や村を制圧していくだけなら数百人もいれば十分だ。ただ、この町には冒険者も数多くいるので千以上差し向けてくる可能性はある。多くても二千くらいだろう」


「んん~、二千はちょっと多すぎじゃなぁい?」


「む、そうか? まああくまで多めに見積もっての話だからな」


 マデリーネもアリッサも、戦闘技術については学んでいたが戦術はそれほど明るい訳ではない。

 この数字もあくまで参考に留めてくれと、最後にマデリーネが念押しする。


「数百から千人以上……ねえ。今の状態だと厳しそうだけど、団長がいればどうにかなりそうな数字ではあるね」


「ホージョーさんのあの魔法なら、確かにそれくらい行けそうッス」


「そうね。肝心の本人がいないけど」


 シグルドの意見に賛成の者が多いようだが、陽子の言うように今はいない人の話をしても仕方ない。

 と、ここで、これまで余り意見を出していなかった芽衣が口を開いた。



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