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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

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第434話 ドレイク


 北条が"浮遊"で視界の通る場所まで浮かび上がっても、相変わらずドレイクに動きは見られない。

 ここからドレイクのいる場所までは大分距離はあるが、反応しないのは恐らくまだ城内に入っていないからだろう。


 この遠距離からの魔法攻撃に北条が選択したのは、特級の"土魔法"【メテオストライク】だ。

 これならあの離れた場所にも届くし、威力も申し分ない。


 早速魔法の発動に入るが、この段階でもまだドレイクに動きはない。

 そしてそのまま北条の【メテオストライク】が発動し、上空に生み出された隕石が轟音を立ててドレイクへと迫る。


「GYAAAOOOOOO!!」


 これまで丸くなって休息の体勢を取っていたドレイクは、ここでようやく空からの攻撃に気づき、大きな鳴き声を上げる。

 そして迫りくる隕石を必死に躱そうと動きだすが、その都度軌道を修正された隕石は、見事ドレイクの胴体部に命中する。


 "魔力操作"の上位スキル"精密魔力操作"や、"偏差射撃"、"精魔照準"などのスキルによって、北条の魔法の命中率は高い。

 おまけに"予知の魔眼"もあるので、本来直接対象にぶつけるのが難しい【メテオストライク】の魔法でも、見事ストライクを決めることができた。


「まだまだ、いくぞぉ」


 続いて北条は、直前に使った魔法と同じ魔法に限り、発動を大幅に短縮して発動出来る"リキャストマジック"のスキルを使い、もう一発【メテオストライク】をドレイクへと叩きつける。

 それから下で待っている仲間に大きな身振りで合図を送ると、浮遊状態のまま城壁を上から飛び越えて中へと進入していく。



「お、合図だぜ。いくぞッ!」


「い、今の魔法はもしや……!?」


 ここからでは城門が邪魔で実際の様子は見えなかったが、北条の唱えた魔法の名前を偶然知っていたヴェナンドは、驚愕の表情を浮かべる。


「ほら、ヴェン。いくよ」


 固まってしまっているヴェナンドに、ファエルモが声を掛ける。

 すでに龍之介たちは門を開けて中へと進入している所だった。


「あ、ああ……」


 ファエルモに促され、龍之介たちの後を追って城門の中へと進入していく二人。

 そこではすでに先制の魔法を入れ、空から侵入を果たした北条も合流を果たしていた。


「上手いことデカイのを二発ぶちこんでやったぁ。まだ距離はあるので、もう少し先に進んだ辺りで奴を迎え撃つ」


「この感じならもう一発くらいいけんじゃね?」


「そうだなぁ。じゃあもう一発ぶちかますから、近づきすぎない程度の距離で待機してくれぃ」


 龍之介の提案に乗ることにした北条は、一旦その場に足を止め、再び魔法の発動に入る。

 先ほどは射程距離的な観点から"土魔法"の【メテオストライク】を放ったが、ドレイクは"土耐性"のスキルを持っているので、ダメージがいくらか減衰されてしまっている。

 そこで北条は、ドレイクが耐性を持っていない雷属性と闇属性で攻めることにした。


「雷神が放ちたる矢は、大いなる破壊を齎す、【ライトニングバリスタ】。その漆黒の光線は、生きとし生けるもの全てに破滅を与えん、【ブラックジェノサイドレーザー】」


 北条お得意の"短縮詠唱"と"ダブルキャスト"のコンボによって、特級"雷魔法"の【ライトニングバリスタ】と、特級"闇魔法"の【ブラックジェノサイドレーザー】が発動する。


 まずは北条の頭上に形成された巨大な雷の矢が、猛烈なる勢いでドレイクへと射出される。

 それは見た目でいえば初級"雷魔法"の【雷の矢】に似てはいたが、規模や威力は段違いだ。


 次に、仲間たちに当たらないよう、これまた北条の頭上から発射するように調整された漆黒の光線が、ドレイクへと照射されていく。

 暗闇の中で懐中電灯をつけた時と逆のような状態はしばし続き、着実にドレイクのHPを削っていく。



「相変わらずオッサンの魔法はえぐいなッ!」


 見ただけで威力の高そうな魔法攻撃に、龍之介の戦意は更に高まる。

 すでに後衛は適度な距離に陣取ったので足を止めているが、龍之介とメアリーは作戦通りそこから更に前へと出ていく。


「……最早えぐいとかいうレベルを超越しているように見えるが」


「ほんっと、最初に下手に敵対しなくて良かったね」


 ヴェナンドとファエルモの二人が北条の魔法に胆を冷やしていると、魔法を放った張本人が後方から合流する。


「いつも通り結界を展開していくぞぉ。それと魔物も召喚していこう」


 合流するなり、早速北条は鉄板の結界を二重で張り巡らしていく。

 更に今回は悪魔戦の時にも使用した、"結界魔法"の上位魔法。

 "聖域魔法"の【減衰結界】を一番外側に展開させる。


 サンドワームとの戦いの後、ブレス攻撃への対策を考えていた北条であったが、結局"添加魔法"のブレス耐性魔法はまだ覚えられていない。

 しかし、"聖域魔法"の【減衰結界】に、ブレス攻撃まで減衰させる効果があることを発見し、代わりに使用することにした。


「この結界は内側からの攻撃は減衰しないんだったな?」


「ああ。だからこれまで通り、【魔法結界】の外側に手を突き出して、そっから魔法で攻撃してくれぃ」


 ヴェナンドに返事をしつつ、北条は引き続き魔物の召喚に入る。

 まずはオークキング二匹が召喚され、各種魔法によるブーストを受ける。

 そして、既に交戦を開始している龍之介たちやドレイクの下に、助太刀に向かわせた。


「後は肉壁だなぁ」


 "結界魔法"によって大分防御力の高い後衛陣だが、今回の相手は強力なブレスを使用してくることもあって、巨大な魔物をチョイスする北条。

 そして召喚されたのは、ついこないだ見たばかりの魔物だった。


「ちょっと……こいつを召喚できるの?」


「ご主人さまの、大きいなのです」


 余りの大きさに、結界の範囲の一部が影で覆われている。

 それほどの大きな影を生み出したのは、四十層で激闘を繰り広げたサンドワームだった。

 しかし、四十層のサンドワームは領域守護者(エリアボス)としてサイズも巨大化されていたので、今目の前に呼び出されたのはそれよりは小さい。


「こいつもBランクの魔物だからなぁ。召喚出来んことはないさ。ただ、Bランクでも大分上位の方だから、召喚出来るかは賭けだったがなぁ」


 "召喚魔法"で呼び出す魔物は、一度接触したことのある魔物に限られるという条件があるが、他にも自分とのレベル差によっても召喚出来なくなることがある。

 今回はどうやら召喚に成功したようだ。


「ね、ねえ。これってもしかして何体も召喚出来るの……?」


「別に強さによって召喚枠を多めに使うってのは、今んとこないから呼べるぞぉ」


「うひぇぇぇ」


 ランクでいえばオークキングも同じBランクではあるのだが、やはりこれだけの巨大な体を持つ魔物だと、感じ方も変わるのだろう。

 ファエルモは自分でも知らない内に体が震えていた。


「そんなことよりも、援護を開始するぞぉ!」


 すでに前衛は接敵状態に入っており、巨大なドラゴンの魔物であるドレイクと、大立ち回りを初めている。

 ドレイクは今のところブレスを吐いてはいないが、爪や尾による攻撃は、その巨体に見合わず鋭い。


 すでに一度その尾の攻撃によって、メアリーが大きく吹く飛ばされてしまっていたが、今回は魔法の盾〈ヴィルディヴァルディ〉を装備していたので、咄嗟にそれで衝撃を逸らすことに成功し、大きなダメージには至っていない。


 しかしドレイクは巨体の割には動きがなかなかトリッキーというか、機敏な動きを見せる。

 胴体に比べたら短い二本の足と両腕。

 どうやってその短い足で踏ん張っているのか謎だが、大きく体を前に乗り出して、鋭い牙で噛みついてこようとしたり、鋭い爪で切り裂こうと攻撃を仕掛けてきたりする。


 人間でいえば、前かがみになって足元を手で払うようなものだろうか。

 しかしその払う手の先に鋭い爪が並び、石の床部分を削りながら迫って来る光景は、死の予感を抱かせるに十分なものだ。


「うおっと!」


 龍之介も猛スピードで迫りくるドレイクの爪攻撃を、全神経を集中させながら避けていく。

 右、左……と立て続けの爪攻撃を躱した龍之介は、今が機とばかりにドレイクの足元へと駆け寄る。

 しかし、そこに真横からの尾による攻撃が龍之介に襲いかかった。


「ぐぇへぇッッ!」


 胃の内容物が一辺に飛び散りそうな強烈な一撃。

 龍之介は、斜めに地面へと叩きつけられる形になった。


「龍之介くん!」


 ドレイクが龍之介に集中している間、幾度か攻撃を加えていたメアリーだが、龍之介の様子を見て一旦攻撃を中断し、"回復魔法"による治癒に移る。

 ダメージを負った龍之介に、"回復魔法"の光が降り注ぎ、即座にHPが回復していく中、ドレイクは次の行動に移っていた。


「龍之介ぇ、避けろぉぉ!!」


 メアリーの"回復魔法"でHPが回復した龍之介は、仕返しをしてやろうと攻撃の体勢に移っていた。

 しかしそこに北条の声が聞こえてくる。


「ぐっ!」


 その言葉の意図を理解出来ないまま、龍之介は身体に少し無理のある体勢から、その場を離れようと体を動かす。


「GOAAAAAAッッ!!」


 しかし必死の反応も間に合わず、龍之介は上から吹き降ろされるようなドレイクの"ファイアブレス"を、正面からまともに食らってしまうのだった。



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