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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十五章

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第430話 トラップ


 サンドワームを倒し、魔法陣から次の場所へと転移していった北条達。

 そこは終点ではなく、また新たなエリアが待ち構えていた。

 軽く周囲を見た限りでは、フィールドの平原タイプの階層のようだ。


「まだまだ続くってことか」


 余り期待はしていなかった様子の龍之介だが、やはりゴールはまだ先だと知ってテンションが少し下がっている。


「この調子でまた五十層まで続くとしたら、二か月以上はかかるだろう。そうなると、三十九層で確保しておいた食料だけでは足りなくなりそうだ」


「そっちはどうなの? ボクらはヴェンの言うように、三十九層で保存食なんかも用意してたんだけど」


 ゴールがまだ先だと分かり、ヴェナンドとファエルモは食料の心配を始める。

 それに対しすぐさま北条が答えた。


「食料に関してはまったく問題はぁない。年単位の食料が"アイテムボックス"に入ってるからなぁ」


「"アイテムボックス"!? 荷物が少ないのは性能の良いマジックバッグのせいかと思ったけど、そんなレアなスキルまで持ってるんだね!」


 関心したようにファエルモが言う。

 冒険者となると、"アイテムボックス"持ちなんて奴を目の前にしたら、何かしら思惑が顔に出たりするものだ。

 だがファエルモにはこれまでと変わった様子は見られない。

 フラットな状態のままだ。


「それに、五十層まで続いていたとしても、二か月も時間はかからんだろう」


「なに? この先はこれまで以上に魔物も強くなっているはずだ。私達は三十層から四十層に辿り着くのに、二か月近くかかった。となれば、この先はそれ以上かかってもおかしくはない」


「二か月ぅ? 俺らは二十日近くで踏破したから、魔物が強くなっていても、一か月もあれば五十層には着くと思うぞぉ」


「なに? あの行程をそんな短期間でか!?」


 北条はネタ晴らしというように、いつもの探索用オークキング部隊を召喚する。

 これ以降の階層は更に魔物のランクも上がっているだろうが、戦闘させずに探索に専念させるだけならば、まだまだオークキングでも問題はない。



「こ、これは……」


「こいつらにもバラバラに探索させるので、普通に探索するよりは短時間で済む」


「うわ、これってオークキングじゃん。それを五体も召喚するなんて……」


 これにはファエルモも若干引いているようだ。

 ヴェナンドに至っては、顎が外れそうな程に口を開いている。


「という訳で、探索を開始するぞぉ。これまで通り、魔法陣を捜すのを優先して即降りで最下層を目指す!」


「おうよ」


「気を抜かないようにしないとね」


 ヴェナンドとファエルモの二人は未だ驚きから抜けでていないが、すっかり慣れている龍之介らは各自返事をしていく。

 そして、ヴェナンドらを加え人数が増えて一行による、新たな階層の探索が始まった。






▽△▽





 その日の夜。


 一日の探索を終えた一行は、野営に適した場所に陣取って夜を明かしていた。

 初日の探索によって、この階層にはオークやスライム系の魔物を中心に、D~Bランクの魔物が出現することが明らかになった。


 今更Dランク? と当初は疑問に思っていた北条だが、すぐにその理由は明らかになる。

 普通にC~Bランクの魔物が四、五体出てくるところに、更におまけでDランクの魔物が同数以上出てくるのだ。


 それも、オークにせよスライムにせよ、上位種が"指揮"やら"同族強化"のスキルを持っているので、普通にDランク単体として出てくる時より強化されている。


 オーク種としては北条が探索用に召喚している、オークキングも少数ながら出てきた。

 以前の時とは違い、守護者(ガーディアン)として出て来た訳ではないので、強さはあの時よりは大分劣っている。


 とはいえ、Bランクの魔物が混じり始めたことで一度の戦闘にかかる時間も増えてきていた。



「四十一層がこのような感じだとはな……。サンドワームを無事倒していたとしても、この階層を進んでいくのは私達には無理だったかもしれない」


「そうだね。Dランクとはいえ、あれだけ一度に魔物に襲われ続けたら、途中で持たなくなってたかも」


 ヴェナンドとファエルモは、そうなっていたことの事を想像して暗い気分になる。


「オレ達は散々レイドエリアでレベル上げしてたから、数が多いのは慣れてんだけどよぉ。でもオッサンが助っ人を召喚してなかったら、確かにきつくなりそうだよな」


「そうね。領域守護者(エリアボス)の強さといい、かなり余裕のあるランクの冒険者でないと、この『初見殺しエリア』の突破は無理だわ」


 この階層では魔物の数が多かったので、途中から北条が追加で魔物を召喚して戦わせるようにしていた。

 その結果、大分戦闘には余裕が持てるようになり、これまで事故も起こらず無事に探索することができている。



「とにかく今日はもう休みましょう。夜も遅いことですし……」


 すでに彼らは夕食を終えている。

 食料のことを心配していたヴェナンドらだが、所持していた生ものは北条の"アイテムボックス"に預かってもらい、作成していた携帯食なども一緒に北条へと提供していた。


 それら提供されたものと、元々『サムライトラベラーズ』が持っていた食材とで一緒に料理を作り、今後ダンジョンから脱出するまでの間、食事は『サムライトラベラーズ』が提供することになった。


 "料理"スキルを持つ北条の料理に、二人は幸せそうに舌鼓を打っており、カタリナが苦手だったカニやエビなども問題なく食していた。

 「あの島では重要な食材の一つだったしな」とはヴェナンドの弁だ。




 そして、夜。

 見張りはニアとラビに任せ、他のみんなが眠りについた頃。

 龍之介は間近に気配を感じて目を覚ました。


「ん、んん……? なんかあったか……い"い"い"い"い"い"ッッ!? 」


 最初こそ寝ぼけ眼だった龍之介だが、急速に意識が覚醒していく。

 目覚めた時に感じた気配は、探すまでもなく龍之介のすぐ近くにあった。


「う、ううぅぅん……」


「ふぁ、ふぁえるも!?」


 若干裏返った声で龍之介が口にするも、ファエルモは起きる気配がない。

 一体どういう寝相なのかは謎だが、離れた場所で寝ていたはずなのに、今は龍之介の体にしがみつくようにして寝息を立てている。


 突然の事態に、龍之介はしばし考えるのを止めて、その場でジッと息を殺す。

 すると、ファエルモから漂ってくるフェロモンを感じさせる体臭に、龍之介のボルテージが徐々に高まっていく。


(お、落ち着け……。こんな所をルーの奴に見られたら、とんでもないことになるぞ……)


 今やすっかり恋人となっているルーティアのことを思い出し、興奮を収めようとする龍之介。

 しかし、


「んんんっ……」


 そんな時に限って、妙に艶めかしい声を上げたファエルモに、龍之介の胸の鼓動が高まっていく。


(ま、マズイ……。今も俺の左腕を抱き枕みてーにして、ギュってされちまってる。これじゃファエルモの胸の……、胸の感触が…………。そーいえば、ファエルモは貧乳だったな)


 別に龍之介はおっぱい星人という訳ではないので、貧乳も許容範囲だ。

 現にルーティアもファエルモと同じくらい貧乳だ。

 だが、逆にファエルモの貧乳を意識したことで、龍之介は頭の中のボルテージを一段下げることに成功する。


(だ、だけどっ……。その腕の先が……、先がヒジョーにヤバイ! クソッ、なんで太腿で挟み込むようにして俺の腕に抱き着いてんだ!?)


 若干体を丸めるようにして寝ているファエルモは、器用に両腕と両足で龍之介の左腕に絡みついている。

 しかも時折体を擦り付けるような動きを見せるので、その度に龍之介の頭がフットーしそうになる。


(大丈夫……大丈夫。おち、落ち着くんだ、オレ。まずは、この強くホールドされている左腕を引き抜くんだ)


 まるでパンツ脱がせ職人が、夜中寝ている人のパンツを本人に気づかせずに脱がせるかのように、強く抱き着かれたままの自身の左腕を、ゆっくりと引き抜いていく龍之介。


(ソーっと……ソーっと、落ち着いて……)


 なんでこんなに緊張しなくちゃいけないんだ! と思いつつも、焦らずじっくりと腕を引き抜いていく龍之介。

 しかし、それは突然訪れた。


「ううううん……」


 龍之介の微かな動きに反応したのか、ファエルモが軽く寝返りを打ってしまったのだ。


 その結果、龍之介の左手部分はファエルモの股間部分にもろに触れてしまっていた。

 しかもそれだけでなく、更にギューッと抱き着くようにしてファエルモが力を強めたので、龍之介の左手に股間の感触がムニュムニュと伝わってくる。


(うげっ、ちょ……、これはヤバイって……オイッ)


 そうは思いながらも、蛇に睨まれた蛙のように身動きがとれない龍之介。


(そ、そんなムニュムニュっとした感触を押し付けられたら……押し付け……。……ん? ムニュムニュ?)


 頭の中がピンク色に染まっていた龍之介は、そこでようやっと違和感に気づく。

 その違和感を確かめるために、敢えて龍之介は左手でファエルモの股間をまさぐる。


(こ、この感触……この形……。ま、まさかっ!?)


 ここに至って、龍之介はついにひとつの宇宙の真理に到達した。


「ファエルモ、お前男だったのかああああ!?」



 それまではどうにか声を抑えていた龍之介だったが、衝撃の事実につい大きな声が漏れてしまう。

 その声によって、近くで寝ていた仲間たちが軒並み目を覚ましていく。

 冒険者は野外で夜寝ていても、物音があれば目を覚ますものだ。

 しかしその冒険者の習性が、今回ばかりは龍之介にとっての不運だった。


「ふ、ふあぁぁぁ……。んんあ、え? ちょ、ちょっとぉ。リューノスケ、ボクに何してるの?」


 気づけば、全員が注目する中、ファエルモの股間をまさぐり続ける龍之介という構図がそこにはあった。



「リューノスケ、あんた……」


「龍之介くん……。ルーティアさんという素敵な方がいるのに……」


「…………不潔」


「い、いや! 待ってくれ! ちょ、これは違うんだ!」


 女性陣の反応に、慌てて弁明しようとする龍之介。


「龍之介ぇ。お前、そっちの気もあったのかぁ? まあ、そのこと自体にとやかく言ったりはしないがぁ……」


「だから、違うんだって! だって、どーみてもファエルモって女だっただろ!?」


「いんやぁ、俺は最初から男だって気づいていたぞぉ」


「えっ、マジかよ!」


 まるっきり助けが得られないまま、泥沼にはまっていく龍之介。

 そこに、肝心のトラップ本人が話に加わってくる。


「リューノスケ……。ボクは確かに見た目は女の子っぽいけど、これでも普通に女の人が好きなんだよ? ……でも、リューノスケがどーしてもって言うなら、ボクは、その、構わない……よ?」


 恥じらいながらそんなセリフを吐くファエルモ。

 それはからかっているのか本気なのか、かなり判別しにくい絶妙なものだった。


「オレは構うわッッ!!」


 すっかり暗くなった、初見殺しエリア四十一層の夜の平原。

 そこに、大声コンテストで優勝できそうな程の龍之介の大声が、虚しく響き渡っていくのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] >ひとつの宇宙の真理 つい先日知りましたが、男の娘の英語って昔はtrapと表現していたのですね、作者様のつけたサブタイトルがそこからきていたとは、宇宙の真理の奥深さよ [一言] この設定…
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