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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十三章

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第354話 クラン登録


「それではクラン名『ジャガーノート』で登録しますね」


 信也達四人はギルドへと向かい、まずはムルーダとキカンス達が集めてきたドロップを買い取りに出す。

 買い取りには少し時間がかかるので、先に受け取り用の木札を受け取って、次は受付で本登録の手続きを申し込む。


 すると、受付嬢は必要な処理をするために、奥の部屋へと消えていく。

 すでに北条以外の三人のリーダーのサインもしてあるので、あとは登録を待つだけになる。


 なお、クランリーダーは北条、サブリーダーは信也で登録している。

 これは異世界(ティルリンティ)残留を公言している北条と、日本帰還を公言している信也との差だ。

 帰還がいつになるかは分からないが、手間を考えて最初から北条をリーダーにしたという訳だ。



「初めてパーティーを組んだ時とは、また違う感覚がするな」


「へっ、まさかおれがクランに加入することになるとは思いもしなかったぜ」


「俺もだ。うちは獣人のパーティーだったからな」


「まあこれからは宜しく頼むぞぉ」


 受付嬢を待っている間、四人は会話をして時間を潰す。

 少しすると、奥から先ほどの受付嬢とジョーディが一緒にやってくる。


「シンヤさん、ホージョーさん。クラン結成されたんですね」


「ジョーディ、久しぶりだな」


「そうですね、この間ホージョーさんとはお会いしたんですが」


 顔見知りの信也たちが挨拶を交わしていると、ムルーダが話に加わってくる。


「ギルドの職員に知り合いがいたのか」


「ああ、彼とはこっちに来てからは古い付き合いなんだ」


「へー。そういえばリューノスケが言ってたな。遠い異国の出身なんだっけ?」


「そうだ。ところでわざわざジョーディが姿を見せたのは、挨拶をしにきただけなのか?」


「ああ、いえ。勿論挨拶もありますけど、それは知人としての挨拶ではなくて、『ジャガーノート』担当としての挨拶になります」


「担当?」


「はい。ギルドではクラン登録をした場合、職員が一人専用の窓口係というかサポート係を任命します。それに私が立候補したんです」


「ほう、具体的にどんなことをするんだ?」


「私の権限内の範囲で便宜を図ったり、『ジャガーノート』の皆さんに耳よりの情報や依頼などが入ったらお知らせしたり、そういったギルドに関することのフォローなどですね」


「クラン登録の利点として聞いていた内容を、実際に俺達に伝えたりする役割という訳か」


「そうですね。後は一般冒険者にはまだ出せないような情報なども、場合によってはお渡しすることもあります」


 これは恐らく、以前のような魅了事件騒動などが起こった場合のことなのだろう。

 他にも一般の冒険者には伝えないが、『ジャガーノート』に伝えることで両者に益のあるような情報なども、教えてもらえるということだ。


「なるほど、大体理解出来た。これからもよろしく頼む」


「ええ、こちらこそ」



 ジョーディとは面識のなかったキカンスとムルーダも、その後ジョーディと軽く会話をして面識を深める。

 会話が一通り終わると、仕事の続きがあるからとジョーディはまた奥へと引っ込んでいった。


 パーティー登録もそうだが、クラン登録もギルド側で登録情報を管理しているので、ギルド証のようなものは配布されない。

 なので、登録はこれで完全に終了だ。


 あとは、クランによってはクランマークのようなものを自分たちで用意して、目立つところに身に着けるなんてことをしてる所もあるらしい。

 キカンスがそのことを話すと、ムルーダが乗り気で印章のアイデアを出し始める。


 しかし四人だけで決めるような問題でもないし、ムルーダのアイデアは相変わらず首を傾げるようなものが多かったので、ひとまずは買い取りに出していたドロップの代金を受け取って、拠点に戻ることになった。


 その帰り道でのこと。




「やあ、君たち。ギルドからの帰りかい?」


 拠点に向かっていた四人は、向かいから歩いてきた冒険者パーティーの男に声を掛けられる。

 正確には、「四人に」ではなく「信也と北条に」であるが。


「あ、これはシグルドさん。お久しぶりです」


「いよう。最近ほとんど姿を見なかったけど、元気してたかぁ?」


 信也達に話しかけてきたのは、冒険者パーティー『リノイの果てなき地平』のリーダーであるシグルドだった。

 彼の背後には他に六人(・・)の仲間が控えている。


 メンバーである残り五人のことについては、勿論信也も北条も顔見知りであったが、残ったドワーフの男についても、二人は面識があった。


「そちらは既に奴隷身分は解放されたと聞いたが、一緒に行動しているのか?」


「……我らドワーフにとって、同朋というのはかけがえのない仲間だ。とはいえ、奴隷から解放までしてもらったのに、それではいさようならという訳にはいかん。受けた恩義を返すためにも、今は無理を言って彼らのポーターとしてダンジョンに一緒に通っておる」


 それは、元『流血の戦斧』で奴隷として酷い目に遭わされていた、ドワーフの重戦士。ドランガランだった。

 彼はあの事件の後、身元をリノイで引き取られ、しかる後にドランガランの奴隷身分は解除されていた。


 これは、ドランガランが犯罪奴隷ではなく、戦争奴隷であったからというのが大きい。

 犯罪奴隷は金を積んでも解放されることはないが、戦争奴隷であれば金さえあれば解放することが出来るのだ。


 同じドワーフであるリノイのメンバー、ガルドが主導してのことだったが、他のメンバーも文句を言わず、資金的にも協力をしてもらっていた。

 そうした事情を知っているドランガランは、義の為に、奴隷解放された後も自らリノイに付き従っているようだ。


「なるほど。それでその大荷物か」


 ドランガランは、自分の背丈の何倍もあるかのような、大きな荷物を背負っていた。

 それだけでなく、両手にも持てるだけの荷物を持ち運んでいるといった様子だ。


「ははっ、そこまでしなくてもいいとは言ってるんだけど、本人が聞かなくてね」


「これくらいの荷物、どうということはない」


「ところで君たちは……初めて見る顔が二人いるけど、ギルドからの帰りかい?」


「はい。今はギルドでクラン登録をしてきた帰りです」


「そうか、クランかあ。そういえば君たちは元々人数がおお…………え? クランかい?」


「そうです。俺と北条さん、それとこの二人がそれぞれ別のパーティーのリーダーで……、キカンスとムルーダです」


「どうも。『獣の爪』のリーダーのキカンスです」


「おれは『ムスカの熱き血潮』のリーダー、ムルーダだ!」



 続く二人の自己紹介に、未だにシグルドは少し戸惑った様子のままだ。


「あ、はあ、これはどうも……。ところでクラン登録はCランク以上にならないと出来ないはずだけど、そちらの二人のどちらかがCランクなのかな?」


「いや、俺たちのパーティーは一人を除いて全員Dランクだ」


「おれらは……逆に一人だけDランクで、残りがEランクだ」


 これは、ジャドゥジェムのEランク、ツヴァイのDランクという内訳になる。

 それから二人は簡単な挨拶と自己紹介を交わす。


「しかし、この二人が違うということは……?」


 恐る恐るといった様子で、シグルドが北条の方へと視線を送る。


「そうだぁ、俺が一足先にCランクになってなぁ。俺が発起人の形で、クランを創設することになったぁ」


「ホージョーさんが? ……なるほど、それなら納得だよ。しかし、とうとう追い付かれてしまったね。最初に出会った時は、ホージョーさん達もまだFランク位だったのに」


「まあ最初の内は実力さえあればランクは上げやすいからなぁ。それに、そちらは言うてBランクも間近なんじゃあないのかぁ?」


「ははは、実力的には資格はあるかもしれないけど、最近は活動の方が停滞……というか、余り進んでいなくてね」


「へえ、シグルドさん達でも手こずるとは、大分厳しい場所を探索してるんですね」


「いやあ、厳しいというかなんというか……ねえ」


 信也と北条がシグルドと話しているが、その脇では他のメンバーの初顔合わせ同士でも会話は進んでいた。



「獣人で魔術士ってのは珍しいですね」


「そうかい? 確かにそうかもしれないね。でも、ケイドルヴァは大成するよ。それは間違いない」


「アンタは初対面の相手でもホントぶれないわねえ。あ、アタシはディズィー。精霊使いよ」


「せーれいつかい……。そんなに見かけない筈なんだけど、身近にいすぎてそんな感覚が薄れてきちまったわ」


「ああ、えっとメイちゃんだったっけ? 後はあのハーフエルフの娘も使えるのかな?」


「ああ、他にもホ……ぐ、ぐぐぐっ」


「え、ちょっと突然どうしたの?」


 ディズィーと話していたムルーダが、急に苦しそうな声を上げだしたので、ディズィーが心配そうに呼びかける。


「……ムルーダぁ」


「あ、ああ。いや、ダイジョーブだ」


 北条の能力の一端である、"精霊魔法"を使用可能という情報を漏らそうとした為に、契約魔法の効果が自動的に発動して、軽い制裁が加えられたムルーダ。


 このように北条との契約は、うっかり情報を漏らすことを防ぐために、最初に警告のような段階が発生する。

 それでも無理矢理続きを口にしようとすると、強制的に口を閉ざすような制裁が加えられることになる。


「そ、そう? それならいいけど……。ところで、クランに加入したってことは、アンタ達もあの砦に住むの?」


「ああ、その予定だぜ! っつっても、今は家を建てる金もねーから、まずは金策にはげまねーといけないんだけどな」


「へえ、いいわねえ。アタシらもそろそろ腰を落ち着けようと考えてたんだけど、それには大規模ダンジョンが近くにあるこの町が一番なのよねえ」


「おう。それなら、お前たちも俺たちのクランに加入するかぁ?」


 そこへシグルトとの会話を抜けてきた北条が、冗談半分で口にする。


「ええぇ!? そうねえ、それはシグルドやみんなと話してみ……」


「加入する」


「ないと分から……って、ラミエス?」


「加入する」


「いや、まあアンタの意見は分かったけど、他の人とも話してみないと……」


「加入する」


「うん、これはダメそうね」


 「加入する」と発言するだけの、魔法装置になってしまったかのようなラミエス。

 そんなラミエスの様子に、信也と二人で話し込んでいたシグルドも気づいたようだった。



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