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第342話 北条のCランク昇格


「いよう、久しぶりだな! リューノスケ」


「お、ムルーダじゃねえか。これからダンジョンか?」


「そうだ。その前にちょっとこっちに顔出してこうと思ってな」



 シルヴァーノの襲撃から二週間ほど拠点に引きこもり、そろそろ活動再開しようかといった所に訪れた、ゼンダーソンの冒険者仲間たち。

 しかしゼンダーソンのように拠点に長居することはなく、その日の内にゼンダーソン共々町へと帰っていった。

 なんでもこれから四人でダンジョンに潜ってくるらしい。


 ムルーダらが拠点を訪れたのは、その次の日の事。

 昨日はなんだかんだでダンジョンに向かうことはなかったのだが、今日こそは! と意気込んでいた所への訪問だった。


 彼ら『ムスカの熱き血潮』も、今や全員Eランクになっている。

 初めの頃はレベルが上がりやすいとはいえ、これは少し早いペースだ。

 というのも、これも単に無理をしない程度に頻繁にダンジョンに潜っているせいだった。

 他の冒険者のように、一山当てたからといって一か月休みにするようなことはしていない。


 ダンジョンの探索に関しても、『異界の来訪者』の称号を持つツヴァイが、前衛兼ヒーラーとして仲間をフォローしているので、安定感を保ちつつダンジョンの探索に励んでいるようだ。



「ちょっと、ムルーダ」


「ん? ああ……。そうだ、忘れてた。ギルドの方から伝言があったんだった」


 再開の挨拶の後、互いの近況を話し合っていたムルーダと龍之介の間に、シィラが割り込んでくる。

 久々のライバルとの会話に花を咲かせていたムルーダは、今思い出したといった表情になる。


「ああん、伝言?」


「つっても、お前宛てじゃないけどな。お前んとこにホージョーさんっているだろ? その人にギルドまで来てほしいって連絡頼まれたんだよ」


「オッサンに? ああ、分かった。後で伝えとくわ」


「んじゃ、頼んだぜ。じゃあ、俺らもそろそろダンジョンいってくらあ」


「おう、またなー!」


 最後に挨拶を交わすと、ムルーダらは拠点を後にした。

 それを見送った龍之介は、元居た訓練場の方へと戻っていく。

 そこには由里香や芽衣、信也などの姿があり、久々のダンジョン探索の前に軽く運動をしていた所だった。


 中でも信也はシルヴァーノに背後から斬られてしまった鎧を、この引きこもり期間中に修理してもらっており、その鎧の感覚を確かめるかのように、体を捻って可動域を確かめている所だった。



「龍之介。彼らはこれからダンジョンに向かう所か?」


「みたいだぜ。ここへは久々に会いに来たってのと、伝言を頼まれてきたみてーだ」


「伝言?」


「なんでも、オッサンにギルドへ顔を出して欲しいって連絡を頼まれたとか」


「ギルド……か。今日はこの後全員でダンジョンに向かう予定だったが、一緒にギルドにも顔を出していくか」


 すでにシルヴァーノの脅威は去ったと見ていい頃合であるが、直近の事もあって、少しナーバスな空気が信也らの間には流れていた。

 そのためダンジョンまでは全員で移動する予定で、今その準備をしている所だ。


「そーだな。ま、そんな遠くもないし」


 この異世界での生活に慣れ、身体能力も強化されていった異邦人たちは、もはや徒歩三十分程度は近いという認識になっている。

 それに時間に縛られることのない生活を送っているので、時間に関して少しルーズになっているのかもしれない。


 それから龍之介らが訓練場で体を動かしていると、残りのメンバーも続々と訓練場へと集まってきた。

 北条に伝言を伝え、全員でギルドを訪ねることになった信也たちは、全員でぞろぞろとギルドへと向かう。


 そしてギルドへ到着すると慣れた様子で建物へと入り、受付で用件を伝えると、受付嬢は北条にCランクへの昇格を告げた。



「Cランク、かぁ」


「北条さんおめでとう」


「えー、俺たちはー? 昇格したのオッサンだけか?」


「ええと、はい。ギルマスからはホージョーさんだけと窺っております」


「まあ、元々北条さんはDランクになるのも一歩早かったしね」


「そーよ。リューノスケはちょっと図々しいのよ」


「な、カタリナ。てめー」


 カタリナが仲間に加わって以降、咲良以外の天敵が一人増えたことで、龍之介はツッコミを入れられることが増えてきた。

 ただ最近は、咲良よりもカタリナからのツッコミが多くなってきている。


「あの……ギルド証を更新致しますので、提示をお願いします」


「おお、そうだったぁ。……ほいよぉ」


 龍之介のやり取りに少し気を取られていた北条は、〈魔法の小袋〉からギルド証を取り出し、受付嬢へと渡す。


「はい、では少々お待ちください」


 ギルド証を受け取った受付嬢は、奥の部屋へと消えていく。

 ギルド証はランクによって色や素材が変化するので、ランクが上がった際にはその度に再発行される。


 更新自体は、カードの情報をそのまま移行するだけなので、然程時間は必要としない。

 五分もしない内に、部屋の奥から受付嬢が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらがCランクのギルド証になります。Cランクのギルド証は魔鋼製でして、紛失した場合は再発行に金貨一枚が経費としてかかります」


 受付嬢から手渡された新しいギルド証は、黄色をしていた。

 素材が魔鋼製とのことだが、前のと比べても触れた感じでは違いは分からない。


「それとCランクになりますと、指名依頼を受けられるようになります。これは必ずしも受注しないといけない訳ではありませんが、受けておけば依頼者とのコネクションが出来るのでお勧めですよ」


 この指名依頼には、依頼者が直に指名してくる場合と、依頼者がこれこれこういう人材を求めているという相談をギルドにして、その内容からギルド側が依頼相手を見繕うケースがあるようだ。


「それからCランクになりますと、クランを結成することができます。Cランク以上の代表者と、代表者を含めて十名以上のメンバー。それから登録時に金貨一枚をお支払いいただくことで、クランを結成することができます」


「ああ、その辺の話は聞いている。仕事を回してもらったり、冒険者を紹介してくれたりするんだったなぁ」


「ええ。他にもギルドの保有する情報を提供されることもあります。大きなメリットという程のものはありませんが、年会費などはかからないので、大人数で活動するなら作っておいた方が良いかと思います」


「ああ、分かったぁ。検討しておこう」


 最後にそう言ってカウンターから離れる北条。

 一緒についてきた他のメンバーも、ギルドに特に用事はないのでそのまま北条と一緒にギルドの建物を後にした。





▽△▽




「それにしてもCランクかあ……」


「なんかついこないだまでFランクとかだった気がするっす」


「Cランクになったのはまだ北条さんだけだよ~、由里香ちゃん」


「いや、それにしても早いわよ。ホージョーはともかく、アンタ達だって登録してから一年も経たずにDランクなのよね?」


「ヘヘン、まあ俺様にかかればトーゼンよ」


「ぐ……。何か言い返してやりたいけど、事実は事実だから何も言い返せないわね」


 ギルドでの用事を済ませダンジョンに向かう道中、信也達は世間話に花を咲かせていた。


「Dランクまでは実力次第ではサクッと上がる人は時折いるッスけど、Cランクへの早期昇格は少し異例な事ッスね」


「そうね。Cランク昇格には人柄とかギルドへの貢献度も考慮されるから、そう簡単には昇格できないハズなんだけどね」


 この人事の裏には、《ジャガー町》冒険者ギルドマスター、ナイルズの思惑が絡んでいた。

 北条の実力はすでにCランクで収まるレベルではなく、村長救出や悪魔討伐など、実績もある。


 冒険者の数は日に日に増えてはいるが、他所からきた高ランク冒険者より、身近で接してきた北条の方が、ナイルズとしてもまだ使いやすい。

 だというのに肝心のその相手がDランクのままでは、ギルドから指名依頼を出すことも出来ないのだ。

 そのため、少々強引に北条のCランク昇格を決めたという経緯があった。


「まあオッサンがCランクになったのはいーけど、指名依頼ってなんかめんどくさそーじゃね?」


「何言ってるのよ。受付の人も言ってたけど、商人や上手くいけば貴族なんかとも縁が持てる可能性があるのよ?」


「えー? でも、貴族っていうならすでにここの領主のオッサンと、その娘とは繋がりはあるだろ?」


「う、そ、それもそうね……」


 そもそもここはダンジョンが近くにあるので、商人などと関係を深めなくても、ダンジョンに潜るだけで生活費を稼ぐことは可能だ。

 まあとはいえ、少しでもそういった人脈を築くことは、悪いことではないだろう。


「俺ぁ指名依頼のことよりも、クランのことの方が気になるなぁ」


 Cランク昇格による特典として、受付嬢が口にしていたクランに関する話。

 どうやら北条はそちらの方が気になるようで、話題はクラン関連へとシフトしていった。


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