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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十二章

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第316話 デーモンミラー


「慶介くんっ!」


 シャドウナイトに向けて放った【アイシクルランス】は、そのまま向きを逆向きに変えて慶介へと襲いかかる。


「えっ……わぁ!?」


 鬼気迫るメアリーの声を聞いて、魔法が跳ね返って来るのを認識した慶介は、咄嗟に右手で体を庇うような体勢に移行する。

 同時に左方へと回避の動きもとったが、流石に完全に回避することはかなわなかった。

 

 慶介の翳していた右手に当たり、微かに軌道がずれた氷の槍は、慶介の右肩部分へと突き刺さっていく。


「うあああああっ!」


 思わず声を上げる慶介だが、幸いと言うべきか、慶介は"氷耐性"スキルに"氷の友"のスキルも持っている。

 どちらも氷属性の攻撃のダメージを減らすことができるので、見た目的にやばそうな氷の槍の直撃でも、大きなダメージは受けていない。

 これら耐性スキルがなければ、中級魔法の【アイシクルランス】をまともに食らえば、肩を貫通して穿たれる位の威力はあっただろう。


「気を付けろぉ! あの新種の鏡は、魔法をそのまま反射するスキルを使うぞぉ!」


 すでに慶介が身をもって体験していたが、他の仲間にも聞こえるように大きな声で北条が叫ぶ。

 それからオークジェネラルをほぼ倒し、残る敵前衛はシャドウナイトだけとなったことを確認し、一気に敵後衛の鏡の方へと攻め入る。


 〈サラマンダル〉を操り、ふわふわと宙に浮かんでいるイービルミラー達を、次々に割っていく北条。

 これでも全力を出していないのだが、それでも鏡はあっという間に割られていき、最後に残った新種の鏡と対峙する。


「……!?」


 とそこに、予め発動準備を整えていた、新種の鏡が構築していた魔法が効果を現す。

 その魔法の効果によって、北条の立つ位置を中心に真っ暗な闇で出来た柱が発生し、床から天井へと突き抜けていく。

 柱自体は直径数メートル程なので、他の仲間に当たることはなかったが、北条に関しては魔法の中心地だったので、まともに喰らうことになる。


「ふんっ!!」


 しかし北条は魔法の効果が完全に終わる前に、闇の柱から飛び出していって、新種の鏡へ〈サラマンダル〉による攻撃を加える。

 それもただの攻撃ではなく、"螺旋点穴穿"という回転の力を大きく加えながら放つ、槍系の闘技秘技スキルだ。

 斧槍(ハルバード)専用の闘技スキルではないが、斧槍(ハルバード)は斧系と槍系の闘技スキルを、ある程度扱うことが出来る。


 ピシッ……。


 北条のこの大技によって、新種の鏡は表面にひびが入っていき、続く北条の怒涛の追撃によって完全に鏡は割れ、やがて光の粒子となって消えていく。


「ふぅっ」


 その頃には残っていたシャドウナイトの掃討も完了していたようで、安堵のため息が幾つか漏れる。


「慶介、大丈夫かぁ?」


 北条が魔法の反射をもろに喰らっていた慶介の下まで行くと、既に近くにはメアリーが控えていて"回復魔法"による治癒がなされた後だった。


「はい、メアリーさんがもう治してくれましたし、"氷魔法"だったせいかそこまで深手でもなかったので、大丈夫です」


「んむ、そうかぁ」


「なぁ、オッサン。あの魔法の反射ってあのでかい鏡の奴がやったのか?」


 龍之介もドロップの回収は後回しにしたのか、前線だった場所から一旦慶介たちの下へと集っていた。

 龍之介のいう"でかい鏡"というのは新種の鏡の魔物のことで、これまでのスプーキーミラーやイーブルミラーと比べると、一回り大きかった。


「あぁ。解析するのが遅くなったがぁ、奴は"マジックリフレクション"というスキルを持っているようだぁ」


「"マジックリフレクション"……、そのままの意味で魔法を反射するということですね」


「その通り。"ソーンマジック"なら魔物に当ててダメージを与えることはできたがぁ、"マジックリフレクション"は魔物に当たる前に壁のようなもので反射されてしまう」


「壁……。確かにあの時、魔力で作られた壁のようなものがあったわね」


「あ、それ僕も魔法を撃った後に気づきました」


 "魔力感知"のスキルを持つカタリナと慶介は、不自然な魔力の動きを感知出来ていたらしい。


「ああ、それが"マジックリフレクション"の効果だなぁ。一応その壁部分を避けるように魔法を発動、もしくは誘導させてやればぁ、反射されずに当てることもできるだろう」


「それはちょっと難しそうね。ただでさえ、イーブルミラーが時折ふらふら移動していて注意力を割かれてるのに」


「それに僕が魔法を撃とうとする直前まで、あの不自然な魔力の壁はありませんでした。たまたまスキル使用のタイミングが被ったのかもしれないですけど……」


 一般的に、魔法は上位のものほど構築するのに時間がかかる。

 それらの魔法は確かに威力などで見れば優れているのだが、発動の速さでいえば、一般的なスキルの発動には敵わない。


「まぁ、なんにせよ、ここは引き返した方がいい」


「そうですね。もう一週間以上は潜っていますし」


「あ、いやぁ。ダンジョンを脱出するのもそうだがぁ、この階層はまだ早いことが分かったぁ。これは次からは探索するとしたら、いっこ前の三十六層までだなぁ」


「そんなにヤバイのか、オッサン?」


「そりゃーヤバイでしょ。今までは魔法のダメージを一部喰らう程度だったけど、今度の鏡は全反射してくるのよ?」


 いまいち実感のない龍之介に、説明を加えるカタリナ。

 カタリナの使う"精霊魔法"は、自分が直接魔法を使うのではなく、あくまで精霊が代わりに魔法的な効果のある攻撃なり、支援魔法なりを使用する。


 そうして放たれた魔法攻撃は、"マジックソーン"を持つイーブルミラーに当てた場合、イーブルミラーが負ったダメージの何パーセントかが、精霊自身にも跳ね返っていく。

 精霊にもHPは設定されているので、それがゼロになると姿を保っていられなくなって消えてしまう。


 契約してある精霊ならば、本体は精霊石などに宿らせておけるので、消えてしまっても再召喚は可能だ。だがその場合、数時間以上は間を空けて精霊の回復を待たないといけない。



 "マジックリフレクション"だと魔法そのものを反射する壁が生み出される。

 先ほどの【アイシクルランス】の挙動からして、魔力の壁の反対方向へと跳ね返すようだ。

 つまり壁の設置する位置や角度によっては、あの【アイシクルランス】を他の人へと反射することも可能だということだ。

 これまでは"ソーンマジック"を警戒しつつも、敵の前衛には魔法攻撃も使って対処してきたが、あの新種の鏡が混じるとそうもいかなくなる。


「う、それは確かにキツそうだな……」


「それになぁ。そもそもあの新種の鏡――デーモンミラーというらしいんだがぁ、ありゃあBランクの魔物だぞぉ」


「Bランクっ!?」


 北条の解説に反応した声が幾つも重なる。


「あぁ。さっき最後にデーモンミラーが使ってきた【ダークネスピラー】も、上級の"闇魔法"だしなぁ。他にも奴は"光魔法"も上級レベルだったし、"暗黒魔法"も中級レベルで使ってくるぞぉ」


「上級って……。まともに喰らったのにピンピンしてるから、そんな大層な魔法だとは思わなかったわ」


「気を付けろよぉ? 多分あれをお前たちがまともにくらったら、大分HPを持ってかれるぞぉ」


「うへぇ、そりゃあきちぃなあ」


「あの……。これ、拾って、きました……」


 北条らが先ほどの戦闘について話している間にも、楓はしっかりとドロップを拾い集めていたようで、北条の下までもっていく。

 

「おお、スマンなぁ」


「い、いえ。これくらい全然……」


 拾い集めたドロップを渡す楓は満足げな表情を浮かべる。

 楓が手渡したのは、魔物たちが落とした魔石と、鏡系の魔物がドロップした鏡の破片。

 シャドウナイトのドロップした墨液に、オークジェネラルドロップの肉や牙などだ。


 それらのアイテムを受け取った北条は、"アイテムボックス"へと突っ込んでいく。

 それから辺りを見渡すようにしてキョロキョロ顔を横に振る。


「さっきの分岐を探索させていたアーシアも、行き止まりにぶつかって今こちらに向かってきてる所みたいだぁ。合流したら、さっさと三十三層まで戻ってダンジョンを脱出しよう」


「おう!」


「分かったわ」


 厄介な敵が出てくることが判明したので、その後の『サムライトラベラーズ』の行動は迅速だった。

 それにはまず、別行動をしているアーシアと合流する必要があった。


 これは最近になって試験的に始めた探索方法で、ある程度地図を埋めていくと、構造的にこの分岐の先は広くないだろうな、と推測できる箇所が出てくる。


 ただそうした分岐であっても、奥の行き止まりに宝箱が設置されているかもしれないし、下へと続く階段があるかもしれない。

 そういった分岐先を探索するのに、アーシアを用いるようになったのだ。


 "召喚魔法"で他にも適切な魔物を召喚し、そいつらをアーシアに率いさせて分岐先を探索させる。

 魔物だけでうろつくことになるので、他の冒険者に見つかったら攻撃される危険性があるため、他に人がいない階層でないとこの運用方法は難しい。


 それでも探索時間の削減にはなるので、これまで何度かテスト運用をしていた。

 罠に関してはこのミラーエリアにも存在しているのだが、アーシアが先頭になって、全ての罠を食らいながら強引に突き進むことで、罠問題はどうにかしている。

 これも数々の耐性スキルとタフさがあってこその、ゴリ押し戦法だ。



「お、あれじゃねーか?」


 龍之介の指さす方向には、先ほどアーシアと別れたT字路があり、そこには魔物たちを率いたアーシアの姿があった。



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