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第263話 職業レベル


 一般に職業レベルという存在は知られていないが、感覚的には職業には段階があるということは、実感と共に知られている。

 そしてこれが一定以上の段階まで上がらないと、別の職に転職することができないということもまた常識だった。


 そして高度な鑑定の魔導具では、その職業をどれくらい習熟しているのかというのが、ぼんやりと分かるらしい。

 それによると、転職可能となる習熟度は全体のおよそ中間地点辺りであることが判明している。


「……といったのが一般的な解釈だがぁ、俺の"解析"スキルではより正確に数値で知ることができる」


「レベルみたいな感じってことね」


「そうだぁ。職業レベルは一から十まであって、五になると転職が可能になる。和泉達はすでに十になっていて、芽衣もあと少しで十に届く」


「それってつまり、レベルの数字だけじゃなくて、必要な経験値みたいなのも分かるってことね?」


「うむ。こちらは俺でも正確な数値としてではなく、ぼんやりとした……ゲージのような感じで把握できる」


「それは便利ッスね」


 この世界で生まれ育ったロベルトらからすれば、それは重要なことに感じられた。

 職業レベルというのは、魔物を倒していっても上がることが知られているが、やはりその職業に関する作業などをした方が上がりやすい。

 とはいえ、どういった作業をすればより経験が積めるのかというのは、感覚的にしか判断できない。

 それを事細かに知ることができるのなら、より効率的な育成方法も確立できるだろう。


「あの~、他の人はいつごろレベル十になったんですか~?」


 どうやら芽衣は、一人だけレベルが十に達していないことが気にかかるようだ。


「あー、それはもうちょい前だなぁ。芽衣の職業『ランダ・ヌイ』はレベルが上がりにくいんだろう。どうも特殊な職業や、上位の職業ほどレベルが上げにくいみたいだぁ」


「なるほど~」


「芽衣ちゃんの職業レベル? があがったら、みんなで転職だね!」


「うぉっし! 次は何になるかな!?」


 スキルと違って直接的には影響を感じにくい、普段の生業とは別のシステムにおける『職業』。

 剣士などの『職業』に就くことで、剣に関するスキルの習得にプラス補正がかかったり、レベルアップの際に筋力や敏捷などの数値が伸びやすくなったりする効果がある。

 そのため『職業』の選択というのは結構重要なことだ。


「あの、ちなみに僕の職業レベルはどんな感じッスか?」


「んー、お前はレベル七の三分の一って所だぁ。転職そのものは出来る筈だぞぉ」


「あー、それは知ってるんッスけど、まだ"マスター"には遠いッスね」


 ロベルトの言う"マスター"とは、その職業を最大まで極めることを意味する。

 北条の言うように、職業レベルが五まで上がれば他の職に転職できるが、そうなると元の職業に関することが、前と同じようにこなせなくなってしまう。

 これは特にまったく別の職種に就いた場合、特に顕著だ。


 しかしこれは職業レベルを上げるほど、その影響を軽減することが出来る。

 職業を"マスター"、つまりレベル十まで上げ切ると、他の職業に転職しても前職の職業ボーナスが、百パーセントとはいかないがある程度残る。

 この場合の職業ボーナスというのは、筋力などのステータス補正や、その職業に関する作業への補正などだ。


「まぁ、焦るこたぁない。中途半端なレベルで転職するより、じっくり最大まで上げてったほうがいいだろう」


 そして北条は職業レベルを十まで上げる利点を話し始める。

 この一般の間では、感覚的なことしか知られていない『職業』に関する知識は、"解析"スキルによって得られた情報だ。

 "解析"スキルで表示された情報……例えば『レベル』だとか、『筋力』だとか、そういった部分を更にクローズアップして"解析"を使用することで、そのキーワードに関する詳細検索をすることが出来るのだ。

 なお"鑑定"スキルでは、このような詳細検索をすることはできない。


 

 一頻り北条が『職業』に関しての話を終えると、最初話していた予定通り、次の山岳エリアに移動して、探索がてらに芽衣の職業レベルをマックスまで上げることになった。

 だが、その前に……、


「っとお、じゃあ俺ぁ獲物(・・)を運んでくるわ」


 そう言って、北条がストーンサークルの外側まで駆けていく。

 そしてしばし石柱の外側で何かしていたかと思うと、再び魔法陣のある所まで戻ってきた。

 それも一人ではなく、召喚しなおしたオーガ達と一緒だ。

 オーガ達はみんな手に大きな皮の袋を持っている。


「……やっぱそれも持ってくのね」


「もちろんだぁ」


 当然だ、というように答える北条に、なんとも言えない視線を送る陽子。

 袋の中には水がたくさん詰まっていて、レイドエリアの川にいた魚が何匹も泳いでいる。

 拠点内に流れる小川に放流しようと、北条が取ってきた魚たちだ。

 別に食糧として養殖しようというのではなく、観賞用というか雰囲気づくりのための魚の放流であり、そこまで拘る北条に陽子はあまり理解を示せないでいた。


「まぁ、別に好きにすればいいと思うけど」


 結局陽子は我関せずといった返事をし、準備が整っていた一行はそのまま次のエリアへと転移する。

 すると、北条はすぐに迷宮碑(ガルストーン)の傍に"土魔法"で簡易的な生け簀を作り、一旦そこに魚を移し始める。

 急激な環境変化に元気のない魚もいたが、わざわざ北条は"回復魔法"を使ってまでして、一匹一匹を念入りに治療していた。


「よおし、じゃあちょっくら探索してくるか!」


 こうして山岳エリアの、迷宮碑(ガルストーン)周辺の探索兼、芽衣の熟練度上げが行われ、さっくりと目標を達するや否や即座に帰還。

 悪魔との戦闘の際に、芽衣の"召喚魔法"についてはすでに冒険者たちに知られてしまっていたため、芽衣が召喚したオーガという体で、大きな皮袋を持ったオーガ数体を連れダンジョンを脱出。


 転移部屋やダンジョン入り口ではちょっとした騒ぎになったが、無事今回の探索でも拠点への帰還を果たした。





▽△▽△▽





「フフフン、健やかに育てよ?」


 拠点へと帰還した信也達は、ひとまずここで休息などを取りつつ、好き勝手に行動をしていた。

 そんな中、北条は拠点内の小川を数か所周り、ダンジョンから持ち帰った魚を小川に放流している。

 その表情は実に楽しそうだった。


「よし、あとはこれも入れて……」


 魚を放流した後に、同じくレイドエリア内の川から採取した水草なども取り出し、小川へと投入する。

 そして、


「あまりやりすぎないように調整をして……。【グロウプラント】」


 続けて北条が使用した"植物魔法"の【グロウプラント】によって、投入した水草が尋常じゃない速度で成長を始める。

 この植物を急成長させる魔法は、使用する際に込めた魔力が多いほど、その土地の養分を奪わなくて済むようになる。


 北条も別に日本でアクアリウムを嗜んでいた訳ではないので、これでうまく魚が生きていけるのか不安はあったが、今後ちょくちょく様子を見て調整していくつもりだ。

 とりあえず今の所、水温に関しては気になったので、これに関しては後で調整するつもりだ。




 そうして北条は分散して魚を放流していく。

 今は夏真っ盛りなせいか、辺りには雑草がそこかしこで強かに葉を揺らしていて、その周りには小さな虫などの姿も見える。

 これなら魚も無事育ってくれるかなと北条が考えていると、視界の端にこちらへと駆けてくる由里香の姿が映った。

 このクソ暑い中を元気いっぱいな様子で駆けてくる由里香は、どこかしら楽しそうだ。


「ハァ、ハァ、北条さん。そろそろみんなでギルドに行くっすよ」


「ああ、もうそんな時間かぁ。分かったぁ、一緒にいこう」


 信也達が拠点へと帰還した際に、少し休憩を挟んでからギルドへ行くことが決定していた。

 そこで今回の常設依頼の報酬やドロップ買取り。それからダンジョン内で故意に魔物を押し付けられたことも報告するつもりだ。

 一回程度ならギルドも厳罰を下すことはないが、今後何度も同じようなことをすれば、最悪除名処分になることもある。


 そしてギルドでの用事を済ませた後、ロベルト兄妹以外の面々は《ジリマドーナ神殿》で転職をする予定だ。


 魚の放流作業に一区切りついていた北条は、迎えに来た由里香と共に西門へと向かう。

 すでにそこでは他の面子が待っていたようで、「すまん、待たせたみたいだなぁ」と言いつつ北条も合流を果たし、全員で《ジャガー町》の東地区へと移動を開始した。



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