◇2 紅嘘病の少女
エレナ達はある病室の前でたどり着くと、クロエは閉まっている病室の扉を数回叩く。
「オリビアちゃん、診察に来たから開けるね?」
「……………はい」
クロエは扉越しにそう述べ、少し経った後に少女の承諾の声が聞こえ扉を開ける。
扉が開かれ見える病室も白で統一され、その部屋の簡素なベッドにある大きな枕に背を預けている少女の姿があった。
その少女しか病室にはおらず、その子が先程クロエの述べた「オリビア」という名前の少女なのだと簡単に理解出来た。
「あ、あれ……? エレナちゃん……どうして………?」
オリビアは左右色が違う瞳──左目が桃色で右目が紫色のオッドアイの瞳を扉に向け、扉の前でクロエと共にいるエレナに驚き目を見開く。
「つまんないからせんせーと一緒にきたの!」
「へえ………あ、そのパジャマかわいい……」「でしょー?」
エレナはオリビアのベッドの上に座り込み、明るい笑みを浮かべながら答え、クロエは部屋の隅にある椅子をベッドの近くに持ってくると腰掛けた。
「……それじゃあオリビアちゃん。今からする先生の質問に嘘をつかないで答えてね?」
「はい…」
クロエは「嘘をつかない」の部分を強調し、オリビアはその言葉に小さく頷く。
何故その部分を強調するのかと言うと、彼女が患っている綺病は、「嘘をつくと紅い花を吐く」という症状だからだ。
この病気は後天性が多く、オリビアも後天性であり、嘘をつけばつく程に症状は悪化していき、段々身体に紅い花が咲いてゆく。
そして最終的に右目に紅い花が咲いてしまうと、その者は死に至ってしまうのだ。
故に、この病は「マラディ・グルナ」
別名、紅嘘病と名付けられており、具体的な治療方法はなく、嘘をつかなければ症状を抑える事は出来る。
だがそれは気休めでしかなく、現在は治療法を模索しているのである。
「────はい、質問は終わりだよ、お疲れ様。後で違う先生が採血しに来るから、それまでゆっくりしていてね」
「じゃあそれまで遊ぼ! せんせーも!」
クロエの質問に答えてる間、暇なエレナはベッドに広がるオリビアの薄い紫色の髪に触れ遊んでいたのだが、質問が終わると明るい表情でそう提案する。
その言葉にオリビアは小さく頷き、クロエも少し困った様に微笑みながらも頷くのであった。
「あっ! そういえばせんせー! あっちには何があるの?」
ふと、エレナはある事を思い出しベッドから降りると、窓に近付き閉まっていたカーテンを開け、窓の向こうを指差す。
暖かな陽の光が窓に入り、窓に映るのは、彼女達が今いる病棟と同じ造りの建物──恐らく、この病棟の反対側なのだが、その反対側は窓が一切無かった。
それがエレナには不思議で堪らなく、純粋な好奇心故に、尋ねられたクロエが困った様な表情を浮かべている事に気付かなかった。
「あっちは……んーと、なんて言ったらいいのかなあ………」
「私とおんなじびょーきの子、いる?」
何と答えればいいのか分からず、言葉を詰まらせるクロエを見、彼女は目を輝かせながら更に質問を述べる。
その質問を聞き、クロエはゆっくりと口を開いた。