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どうせ転生するなら空気になって百合カップルを見守りたい!  作者: 二橋 千手
第一章 メイドさんって……いいよね……。
4/7

4 美少女のお風呂シーン! ……だと思ったんだけど。



 ワイルドボアとの戦闘後。

 あたしたちは持てるだけの素材を持ち、森を出るため再び移動していた。


 ……もちろん、あたしが吹っ飛ばしたワイルドボアからは素材なんか採れやしなかったんだけど、ワイルドボアは1頭が大きいもんだから、レイが倒した分だけでも素材はそれなりにあった。

 聞くと、シルヴァリア様の趣味は魔術研究らしく、肉や毛皮は換金して研究資金に、魔石は研究自体に活用したりするらしい。

 だからあたしのことも興味深そうに観察してるんだなぁ、納得した。


 ……だからレイ、あたしをずっとジト目で見てくるのはやめてほしい……。

 お嬢さまとレイの仲を邪魔したりしないから! マジで!




 けっきょくその後は魔物に遭遇することもなく、無事に森から出ることができた。

 お嬢さまはそこで待たせていた馬車に乗り込む。この世界の主流の移動手段はいまだに馬車らしい。

 で、あたしとレイも当然、一緒に乗ることになる。

 いや、あたしはその気になれば自力でついていけるんだけどね? なんなら馬車より速く移動もできるけど!


「それでエリアは、精霊として意思を持ったのはいつからなの?」

『あ〜、実はごく最近で〜。まだ精霊としては若い? みたいな?』

「そうなのね……。自我を持つ前のことは覚えているの?」

『いやー、それがさっぱり? 気付けばこの姿で森の中にいた、っていうか〜……』


 ……お嬢さまの知的好奇心には勝てなかった。


 “高位精霊” というものはシルヴァリア様の研究者気質をいたく刺激したらしく、先ほどから質問攻めにされているのだ。

 いや、別にそれはいいんだよ? 最低限の知識はインストールされてるからなんとか受け答えはできるし。



 ……問題はメイドさんのほう。

 さっき力を見せてしまったからか、余計に警戒されている気が……。


 まあ、それもシルヴァリア様を愛するがゆえのことだと思えばめっちゃ萌えるけどね!

 ……けど、その殺し屋みたいな目付きはやめてほしい。




 でもなー、これだけ警戒するのには何か理由があるんじゃないかと思うんだよなー。


 だいたい、侯爵家のお嬢さまが、護衛のメイドと御者の2人だけを連れてこんなところに来るなんて……おかしくないか?

 「強くなる必要がある」という発言といい、ときおり見せる陰のある表情といい、お嬢さまがなんらかの厄介事を抱えているのは間違いなさそうだ。


 だからあの時、一切ためらうことなくあたしとの契約を望んだのだろう。代償に何を求められるかわからない、というリスクをおかしてまで、力が必要だというのは……。

 なんかなぁ……百合をさまたげるトラブルの臭いがする。



 ……まあいい。いざとなれば愚かな異世界人どもに、百合を邪魔した者がどうなるか教えてやろうではないか!!


 ――と、意気込んでいるうちに侯爵家にたどり着いた。






***






 いや〜、でっかい屋敷だね〜。

 正面からじゃ全体像が見えないよ、これ。

 ……まあいいか、あたし別に建築物オタクじゃないし。


 やたらと立派な門をくぐり、屋敷の敷地内へ。

 ……お嬢さまってガチの金持ちなんだなぁ……。

 屋敷の入り口まで徒歩で移動するのがおっくうなぐらい遠いのってどうなのよ?



 ――そんなことを思っているうちに、馬車は豪奢ごうしゃな扉の前で止まった。

 メイドであるレイが先に降り、シルヴァリア様をエスコートするべく手を差し出す。

 ……いいねえ、この、いかにも主従! っていうしぐさ! 萌える!



 ……と、お嬢さまがあたしの方に振り向いた。


「エリア?」

『はいはーい! なんでしょーかおじょーさま!』


 お嬢さまはなんだかやけに表情が固い。


「……これからすぐ、あなたの力を借りることになるかもしれません」

『……それで?』

「……いえ。本当にお力を貸していただけるのかと、不安になってしまって」



 ……こりゃ、相当な厄介事に巻き込まれてるっぽいな。

 見れば、レイも心配そうにシルヴァリア様を見つめている。

 誰かは知らんが許せんな……お嬢さまにこんな顔をさせるとは。

 美少女は笑顔こそが一番映えるのに……!


 

『だいじょーぶだいじょーぶ! ちゃんと契約も結んだっしょ? あたし、約束は必ず守る派よ? お嬢さまのめいとあらば、今すぐこの屋敷を吹き飛ばすことだって――』

「それはやめて! ……というか、冗談、よね?」

『………………』

「そこで黙らないで!」

『お嬢さまが笑顔になってくれてよかったです!』

「話をそらさないで! そこはきちんと否定しなさいよ……!」

『いや〜、あっはっはっは!』


 ……今はこのぐらいしかできないけれど。

 お嬢さまの顔をくもらせた下手人げしゅにんはこの手できっちり始末してみせましょうぞ!






 扉をくぐったその先。


「……お帰りなさいませ、お嬢様」

「ええ。出迎えご苦労様、ドノヴァン」


 一礼しながらお嬢さまを迎えたのは、執事っぽいおっさん。

 たぶん50代ぐらい?

 まあいいや、男はどうでもいい。


「シルヴァリア様。旦那様がお待ちでございます。ご準備が出来しだい――」

「……わかったわ。下がりなさい、ドノヴァン」


 それよりも気になるのは。

 “旦那様” とやらと、その名を聞いた瞬間に顔をこわばらせたシルヴァリア様の様子。

 これはひょっとして……。


「……レイ。湯浴みに行くわよ」

「は。かしこまりました」


 まあ、それも今はまだ(・・)いいか。

 それよりも……。




 美少女のお風呂タイムだ!!!






***






 真っ白な肌。

 そして、そこに溶けこむような銀髪。

 きゃしゃな肩から、身体のラインは大きなくびれを描いて、豊かなお尻へと――殺気!



 ……いけね、お嬢さまのお着替えシーンをついガン見してたら、レイからガチめの殺気が飛んできた……!

 っていうか、さっきワイルドボア相手にしてた時よりも怖いよ! どれだけあたしにお嬢さまの裸体らたいを見られたくないのさ!



 ……だいたい、そんなレイこそ、シルヴァリア様の身体が気になってるんじゃないの……?

 さっきからなんだかソワソワしてるし。

 不自然にお嬢さまの方を見ないようにして――また殺気!


 ……はい、妙なことは考えずにおとなしくしてます。



 シルヴァリア様の入浴は、専門のメイド達がお手伝いするらしい。

 レイは護衛として、脱衣所で着衣のまま待機するようだ。まあ、武器とかを身につけたままの方がいいだろうし?

 

 ……と、いうわけであたしはお風呂に突入!

 後ろからレイの突き刺すような視線を感じるような気がするけど、気にしない気にしなーい!




 ――ただ、お風呂はあたしの想像とちょっと違っていた。

 いや、やたらと広くて豪華ではあったし、お嬢さまのお身体は期待をはるかに上回るものであったよ?


 けど……。



「……お嬢様、次は足をお洗いいたします」

「……ええ、お願い」



 ……なんというか、お嬢さまの雰囲気が固い。

 また、湯浴み着を着たメイド達の方も、いかにも「お仕事です!」って感じで、あたしの期待したゆりゆりしい光景じゃなかった……。


 ……シルヴァリア様、意外と心を許せる相手が少ないのかもしれないな。

 まあ、これが身分差というものだ! と言われたら納得するしかないんだけど……。


 お嬢さま、案外と味方が少ないのかもしれない。




 ……と、珍しくそんなマジメなことを考えながら浴場を出たら、レイからまるで親のかたきかのように睨まれた……。

 やっぱりレイ、お嬢さまの身体に興味が――みたび殺気!


 ……はい、黙ってます。




 とりあえず、湯上がりのシルヴァリア様はさらに美人でした。

 ……けど、相変わらず表情は固いまま。

 なんだかなぁ……。






 それでは次回!

 『旦那様との謁見!』

 百合を邪魔する者には――オシオキよっ!






ノクターンの方に新作短編を投稿しました!

リンクは下です(いったん活動報告へ飛びます)。

18歳未満は見ちゃダメですよ?


そして、この『転生するなら空気』は明日も更新します!

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