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縁者

九郎は、庭へ降りると一本の木の下に立った。そこはゆきのかと出会った場所である。そして、朝の文により、そこで待つようにと指示された場所であった。

 九郎はまたゆきのかが上から降ってくるような気がしてそっと木を見上げた。

 途端、

「九郎殿」

背後から声がかかった。九郎は少し驚いたが、それを隠し何事も無かったかのように振り向いた。

「ゆきのか殿。文を拝見いたしました」

ゆきのかは頷いた。

「大天狗様より、託宣がござりました。本日、縁の者が参ります」

「どのような御方にござりましょう」

「それは、ご本人をご覧になるのがよろしいかと」

「ゆきのか殿は、いつもそれですね」

「と、申されますと?」

「大天狗様の時も」

九郎がそういうと、ゆきのかは悪戯っぽく笑った。

 あの大天狗との邂逅から、全てのものが柔らかくなった気がする。それは、九郎自身の心も、そうであるように思えた。ゆきのかの態度もまた、柔らかく感じる。それは、奥州の要となる大天狗に認められたから、ということなのだろうか。

「私が言葉で伝えたとて、それは私の目から見たことに過ぎませぬ。それに捕らわれてしまうより、ご自身の、そのままの眼でご覧になった方が良いと思いまする」

「然り。それで、私は何を」

「まずは、待つことを。身構えている必要はありませぬ。いつも通りになされませ。時が満ちれば、向こうからやって参ります故」

「承知、」

九郎はそう言って頭を下げた。

 そして、上げた時にはもうゆきのかの姿は無かった。

 九郎は、一瞬で誰もいなくなった空間を見て、小さくため息を吐いた。

(もうこの程度では驚かぬな)

慣れたものよと、胸の内で笑った。



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