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切ない別れ6

「卒業式を始めます。」

 まだ桜も咲いていないが、卒業シーズンがやってきた。俺の学生生活が終わろうとしていた。俺だけじゃない。大学生活を送った者たちが大学と別れる。残るものは、思い出というものだけだろうか? それは分からない。なぜなら、人生に答えはないから。

「卒業式を終わります。」

 式などは形だけのもので、学長だか、校長だかの長いスピーチの独り言。聞いている生徒も教師も、欠伸をして眠たそうに退屈しているだけである。これだけは何度、卒業式をしても変わらなかった。

「いや~実に長かった。」

「お前寝てただろう。」

「バレたか。」

 俺と洋は卒業式に出席した。千和はお腹が大きくなってきたため、人目に晒されて話題にされることを嫌がり卒業式にはでなかった。

「はあ、これから学生様生活が終わり、自己責任の社会人か、楽しくないな。」

「そだね。仕事なんか誰もしたい奴なんかいないだろう。」

「なんで人間は働くのかな?」

「知るか。金のため、生活のため、家族のため、人間は死ぬまで働き続けるんだ。生まれながらの奴隷だ。」

 さすがに20年以上も生きると、人間の生活ということが分かってくる。お金が無ければ生きていけず、お金が無ければ死ぬ。お金、お金、お金。お金があれば貧乏なものが買える。それが結婚である。幸せや愛は、お金の前に意味をもたない。愛を求めても、一時的なものであり、次第にお金に支配される。

「俺たちって、友達だよな。」

「そうだな。友達だったんだな。」

「俺たちは大学を卒業してからも会うだろうか?」

「会うではなくて、会えるか、どうかだろうな。きっと社会人になったら残業ばっかりなんだろうな。」

「早出なんてのもあるぞ。全部、サービスで残業代なんかでないんだろうな。」

「はあ~、生きるのが嫌になってきた。」

「早く年金暮らしがしたいな。」

「まったくだ。」

 生きているのか、死んでいるのか分からない。あるのは休日1日スマホの生活だけ。結婚もできず、子供ももてない。今時の若者は全て理解している。分かっているから彼氏彼女も作らないで、1日スマホをいじっているだけなのだ。他人に迷惑をかけてくないという、思いやりの気持ちである。

「奈良、俺たち月に1回は会う日を決めるか?」

「やめとくよ。どうなるか分からないから。断りのメッセージを送るのが面倒臭い。それに会社で新しい出会いが待っているかもしれない。」

「おお、言うね。」

 俺の本音は違った。千和と付き合った男を、千和を遊んで捨てた男を、千和を自暴自棄にさせバカ女にした男を、千和がお金で男を選ぶような女にした男と、会いたいと思わなかっただけである。

「またな。」

 友達とは、大学で一人でいて、周りから寂しい奴と思われたくないから、仕方がなく集団でいる者のことをいうのかもしれない。

 つづく。

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