不安を誘う 後編
既存登場人物紹介(ネタバレ除く)
アレス・ドレイク(不死者、女性) 335歳(肉体年齢19最)
『可能性持ち』の不死者。通称『風の魔女』で名の通り風属性の魔法が得意、島の発展に尽力し知識を求める探究者。身体年齢は19歳だが転生してから300年を生きる悠久の魔女。イーランド王国の宣戦布告を機に動き出した。
ディエゴ・ホーキンス(不死者、男性) 338歳(肉体年齢26歳)
ドレイク諸島副総督兼、海軍総司令。アレスの部下にして最大の理解者。海の漢で筋肉隆々でドレイク諸島の航海士や水夫から絶大な信頼を受けている。イーランド王国の宣戦布告を受け艦隊を率い戦場へ出る。
エフィ・フローネ(人間、女性) 8歳
アレス・ドレイクを支える侍女の家系フローネ家の20代目の少女。年齢は8歳だがアレス提督を支える家系故の英才教育を受けており、あとは経験を積ませたいとフローネ家の先代にしてエフィの母親、19代目のアシュリー・フローネによってアレスの旅に同行させられる。まだ幼い故にドレイク諸島、島民のアレス信仰に染まりきっておらず、アレスが何とかそれを防ごうとしている。名の由来はエフィシェンシー(efficiency)から来ていてその意味は効率、有効性。母親のアシュリーからアレスに奉仕できる人間になるようにと思いを込めたらしい、重い。
ピープス・ウィズダム(不死者、男性) 年齢不明
見た目は20代半ばくらいの男性。『可能性持ち』の1人で通常は猫を被っているがその本性は歪で他人を揶揄う事を好む。しかし非常に聡明で努力家、リリーや大陸を超越する智者でその恩恵はドレイク諸島にとって計り知れない。
アレイス・ミーデン(妖精、女性) 年齢不明
アレスに寄り添う妖精。長く伸ばした群青色の髪で顔は良く見えないがアレス曰くとても可愛らしい顔。人づきあいが苦手で藍色の猫耳パーカーで顔を隠し、信頼できる相手以外との会話を酷く嫌う。歴代妖精の中で1位の規格外の実力持ちで、かつてはエーナの二つ名を持っていたが、その規格外の実力で歴代最強と謳われ特別な称号、ミーデンを授かった。得意魔法は全般、その中でも氷系魔法は絶対の威力を誇る。大好物がマカロンで長期的に摂取できない状況が続くと壊れる。
銀花・エーナ(妖精、女性) 年齢不明
ウィズダムに寄り添う妖精、桃色と紫色の袴に黒い紋付を羽織りその姿は大正浪漫溢れる撫子だがその性格は好戦的で口も悪い。現世を生きる妖精の中ではアレイスを除き最強だが、アレイスが規格外故に2位に甘んじている。好きなお菓子はチョコチップクッキー。最近は戦争に当てられて何かと好戦的、アレイスがビビり散らしている。
AD.1536.1.6
〜シャムリャ湾・東部〜
「大砲・よく狙い……撃ち方初めっ!!」
轟音と共に40門ものカノン砲が火を噴き60ポンドの砲弾が敵の船に吸い込まれて行く。この轟音、そして硝煙と潮の匂い、前世ぶりの海戦です。
「ドレイク総督、報告しますっ! イーランド王国艦隊壊滅! この海域に敵艦隊の存在は確認出来ません」
「そうですか」
妙ですね、王国に渡したのはガレオン級の設計図。それなのにこの海域……いや、シャムリャ湾自体に大型木造船が存在しません。
「敵艦隊は軽ガレオン級とナオ級、中型船でした。確かにあの設計図があれば軽ガレオンに応用は効きます」
エリゴール4世、流石は賢いですね。軽ガレオンのコストはガレオンの3分の1程度。大人数を低コストで動かすならこの方法が良いでしょう。
「ですが報告では確かにガレオン船の存在を確認出来ていました」
ですがまあ、私がイーランド王国の海軍総提督なら伝家の宝刀、ガレオンを無駄に沈める事はしないでしょう。
「イーランド王国がメリック国に宣戦布告して3日、そしてイーランド王国の同盟国、ミナカンタ王国が便乗し宣戦布告無しにステン民国に侵略を始めたのが昨日。ミーデン、いますか?」
早朝の時間、それでも決まり切っていた勝ち戦でもここまで常勝すれば士気も上がります。そんな中、彼女の声は、
「流石ニ五月蠅イカト思イマスゥ。ケケヶヶヶヶヶケケ」
壊れていました。
「……大丈夫ですか?」
「毎日五月蠅クノイローゼニナリソウデス。ウヘヘ、愉シクナッテ来マシタ」
船に乗って3日、マカロンを摂取してませんから。島に帰った際には沢山のマカロンを約束しましたが。
「えっと……ミーデンさん、ミナカンタ王国の方はどうなっているでしょうか?」
「アアハイソウデシタ。ミナカンタ王国周辺ノ地方艦隊ハミナカンタ王国艦隊ヲ一掃、哨戒ヲ継続スルミタイデスヨォ……」
「分かりました、ディエゴにそのまま哨戒を続けるよう伝えてください。はぁ、本当に面倒です」
メリック国の無能貴族の暴走はあのエリゴール4世でさえ予想できなかったようでおのおの勝手に戦争を始め、結果としビール共和国はメリック国奪還の名目で無能貴族、そしてその後ろにいるイーランド王国と結果的には戦争状態に陥っています。
それでも早急に手を打ち後手に回らなかった事で意外と戦況は拮抗しています、過小評価していたつもりは無いのですが、エルフリーデさんの指揮能力と魔導師としての才能は『可能性持ち』と言われても違和感ありません。エルフはその血統で魔力が変わると聞き及んでいます、流石はハイエルフとでも言いましょうか。それに彼女は王宮魔導士で軍人でそして、星占い師です。彼女の進軍はまるで相手の行動を知っていたかの様に常勝しています。
「一騎打ちならまだしも軍としては戦いたくない相手です、そして今回の戦争、思ったほど不利な戦況にはなっていません。『可能性持ち』、又はそれに類する者と当たらなければまずは負けませんでしょう。将としても良く戦っています」
あれほどの人材を隠していたとは。ビール共和国のビール王も優秀ですが……ここまで規格外とは嬉しい誤算。後はイーランド王国かミナカンタ王国に『可能性持ち』がいない事を祈りましょう。
「アレス様、どうかされました?」
私の胸の高さかあの声、思考から戻り目を向けるとそこには少し不安そうなエフィさんの顔。
「なんでもありませんエフィさん。さて、王国に潜入している間諜の情報ですとシャムリャ湾の王国海軍は王都に引き上げこの海域の敵軍は今ので最後だったようです。食料、水は兎も角、砲弾の補給は必要です」
砲弾の素材の鋳鉄も安くは無いですから、海戦を早々に諦めて頂きたいですが……、
「しかし諸島の刀鍛冶も嘆いていました、アレス様の戦いの役に立てないと」
……、
「そうですね」
白兵戦は見るに絶えません。手足を切られ内蔵を晒し動かなくなる人だったモノ、甲板は血肉で滑り海を朱に染める。平和に長年過ごした人が耐えられる光景ではありません、お肉が喉を通らなくなりますよ?
「総督、戦後の処理が終わりました、只今からドレイク諸島へ戻ります」
「はい、戻り次第私はメリック国の前線へビール共和国から陸路で向かいます。精鋭を百人ほど選んでください。最前線は文字通りこの世の地獄です、覚悟のあるものを」
すっかりとたくましく海の漢になった船長のマイルさん。いつもは自信家の彼は今、とても嫌そうな顔をしています。
「それは受け入れられません、前線は組織のトップが向かう場所ではありませんから。島の皆も反対でしょうね」
「ですから精鋭を選びなさいと言っています。なにも最前戦に出るわけではありません、ラファエル大公やその部下のシスター達はそちらに居るでしょうから」
エルフリーデさんは兎も角、ピアさんは怪しいですけど、あの忠誠心は護衛として使えるでしょうね。
「共和国との盟約はシャムリャ湾に置いてイーランド王国海軍を牽制、撃退だと記憶しています。そしてそれだけでは無くイーランドの同盟国のミナカンタ王国もホーキンス副総督が牽制しているのですよ?」
「そうですね」
「ならばっ!!」
「マイル提督、若くしてドレイク諸島第2艦隊の艦長に就任した貴方が分からないはずがありませんよね?」
「ですが私達ドレイク諸島海軍はその責務は十二分に果たしています、そしてドレイク諸島艦隊が強いのは艦隊戦だからこそです、陸での戦いは被害が出ます」
はい、ドレイク艦隊がここまで死人どころか怪我人も出していないのは船での戦いだと言うところが大きいでしょう、敵の射程圏内から一方的に砲弾を叩き込む、それは絶対的な暴力になります。
「ドレイク諸島はイーランドとミナカンタに敵対しました、あちら側から見れば私達もビール共和国と変わりません。ならばビール共和国に負けて貰っては困るのです、得意では無い場所でも戦いますよ」
第一、船乗りが甲板の上でのみ戦う訳ないでしょうに。
「ではせめて、最寄りの港まで船で護衛を!」
その忠誠心は見上げたものです。ですがその妄信は必要ない。
「マイル船長、貴方が守るのは私ではありません、貴方が守るのは島であり民です。努努間違えない様に。ノアボヤージュへ大至急戻ってください」
「了解しました……同行する人選はこちらで選ばせて貰います」
「勿論です」
A.D.1536.1.9
〜ドレイク諸島・ノアボヤージュ〜
「マイル船長、これが同行する100名ですか?」
「はい、本当はもっと装備を充実させたかったのです。せめて人数を増やしましょう、それが良いと考えます」
「いえ、やり過ぎです……」
カーキ色のミスリルを編み込んだ戦闘服を纏いその手には半自動小銃を携え腰にはサバイバルナイフ。背中には巨大なバックパックを背負いその筋肉隆々の体はそれだけで圧倒しそうです。
「え、これドレイク諸島がウィズダムさんの知識等を借り製作した装備ですよ?」
7年前に開発が終わり量産が始まった薬莢付きの銃弾、そして3年前に開発した半自動小銃。戦闘服は斬撃、魔法対策にミスリルを編み込んだカモフラージュ色の戦闘服。防水で丈夫なバックパック。過剰では?
「前線には向かいますが最前線に出るわけでは無いのです、慢心ではありませんが、この装備はまだ世界に見せたくは無いのですが……」
木造船からこの装備の軍人が下りてきたら敵はもはや軍人だとも思わないでしょうね、違和感が凄い。
「総督のその気持ちは御尤もです、この装備はアレス総督を始めディエゴ様、ウィズダム様の知恵のもとドレイク諸島の職人が命を削り製作したものです。しかし総督、この戦闘服、銃、ナイフ、バックパックを完成させたのは今日この日の為では無いのですか? 彼らを見てください」
その指差す方向に見えるのは服の上からも分かる隆々な筋肉と研ぎ澄まされた精神を感じます。
「彼らが厳しい訓練を行い体を、精神を鍛えて来たのは来たる戦争から総督を守りたい一心で今日まで歩んできたのです。私だって……いや、この島の皆がその一心で来ました。その気持ちを、汲んではくれないでしょうか?」
ですがイーランド王国もまだ本気でせめてもいない状況で虎の子を世界に晒しても良いのでしょうか?
「いいんじゃないですか総督?」
「ウィズダムさん」
後ろから足音が聞こえたかと思えばそこには不敵に笑うウィズダムさん。何を考えていますかこの男は?
「あれは最新鋭の装備ですが今は更なる装備を開発中ですから。それに見ただけで真似出来るものではありません。何世代も銃の歴史を重ね出来た半自動小銃なんて仕組みなんて絶対に理解出来ません、そんなもんは魔法と変わんねえ」
それはウィズダムさんから開発プランの提案があった数種類の銃。マスケット銃をベースに薬莢を完成させ拳銃、機関銃とそれに類する銃です。今開発を行っているのは狙撃銃、散弾銃、擲弾銃。そして最終的にはシステムウェポンです。システムウェポンは理想の銃ですが、いかんせん時間とコストがとんでもないですから、どうしたものでしょうか……、
「総督、学者気質故の長考を今行わないで下さい」
おっとそうでした。
「ウィズダムさんはこの装備は過剰とは思いませんか?」
「それの何がいけないのでしょうか? この装備は高威力故にコストは大きくなりますがその恩恵はあるじゃないですか。例えば、圧倒的な力で相手の心を挫くとかでしょうか? イーランド王国相手には難しいでしょうが、その腰巾着のミナカンタ王国には効くでしょう。すでにあの国はディエゴが率いる戦列艦の攻撃で虫の息ですから」
加えて隠れた『可能性持ち』のあぶり出しも可能かもしれません。可能かもしれませんが!
「で、本音は?」
「徹底的に、丁寧に念入りに周到に敵を殲滅しましょう」
「任セロ、派手ニブッ放スゾ」
「そんな事だと思いました」
ウィズダムさんはぶれませんね、いっそ清々しいです。そして何処から出て来ました銀花さん、ミーデンさんが怯えていますのでその黒光りするハンドガンを机においてください。
「分かりました。今回はウィズダムさんとマイル船長の言う通りにしましょう。それでは準備が出来次第メリック国の王都ウランメリックに向います、船は目立たない様に小型船……を使用したいですがそれでは100人乗れませんね。軽ガレオン船の出港準備を」
「すでに終了しています!」
え、今戻って来たのだから少しは休んでください。私もそのつもりでした。
「アレス様、館からアレス様の荷をお持ちしました!」
「それ私のスーツケース……もしかしてエフィさんも着いて来る感じですか?」
「当然ですっ!」
「ハハハハ、行ってらっしゃい総督。島の守りは任せて下さいよ」
「はぁ。私も島に籠り研究をしたいものです、島をお願いしますねウィズダムさん」
「では向かいましょうアレス様っ!」
続々と軽ガレオンに乗り込む戦闘服筋肉マン達を目の前に私も自分の荷を持ち乗船しようとしたら、頑なに私の荷を離さず乗り込むエフィさん。ため息をつく時間も惜しい、このくだらない戦争を終わらせて島での安寧を。
「アレス様、ノアボヤージュを出港しました。現在13ノットで航海中。予定ですと2日でメリック国に到着予定です、何か御用があればお呼びください、失礼しますっ!」
ドレイク諸島ノアボヤージュを出港して暫く、諸島が見えなくなった頃航海士からの連絡。この2日間をどう過ごすか考えていました。エフィさんと同室ですから死神の魔導書を読むわけには行きませんし。
「アレス様、お時間宜しいでしょうか?」
「はい、どうしました?」
声の方には勿論エフィさん、しかし彼女は一瞬だけ私と目を合わしてすぐに視線を別の方に。その視線の先には縦長のアタッシュケースと木の大箱、私も気になっていたんですよね、それ。
「このアタッシュケースと木箱はウィズダム様からです、出航してからアレス様に開けて欲しいと」
「これを私にですか?」
ウィズダムさんからですか。ならば、
「武器でしょうか?」
ウィズダムさんの知識は大変有用で為になりますので最も発展したドレイク諸島、ノアボヤージュから近い有人島にラボを建て研究資金をお渡ししていました。それがウィズダムさんがドレイク諸島に移住する条件の1つでしたので。因みに他の条件は銀花さんへのチョコチップクッキーだったり。
兎に角、ケースと木箱を開けてみましょう。
まずはケースの方、これは凡その予想が付いていました。
「アレス様、これは銃でしょうか?」
「その様ですね」
形はハンドガンとも半自動小銃とも違います、マスケット銃含めてドレイク諸島で生産しているどの銃とも違う。ウィズダムさんが作成した新規の銃でしょうか? 形で認識するのであれば死神の魔導書で見たバトルライフル成るものに近いようですが、
「知らない銃です、木箱にこれが分かる何かがあれば良いのですが」
『可能性持ち』の私が重いと感じる程度には重いその木箱。釘で打ちつけられたその蓋を開ければさらに紙の箱が複数、それを開けると、
「マガジン……銃の弾ですね。しかし種類が多い」
島の半自動小銃に使用しているホローポイント弾にライフル弾、それにスラッグ弾やグレネード弾もあります。ホローポイント弾以外の銃弾は知識でしか知りませんが。ですが銃は一挺しかありません、なぜ弾だけ数種類も?
「アレス様、この筒状の物は?」
木箱に入っていた小型のアタッシュケース、エフィさんが開けたその中には確かに彼女が言った通り数本の筒状の物が、
「これはバレルですね」
しかし形の違うバレルです。予備では無さそうですが、
「それに見た事無い部品もありますね。いえ、待って下さい」
形状は様々です。そして他にもう1つのアタッシュケース、そちらにはグリップにパットプレート。
「バレル……弾の違うマガジン……」
「アレス様?」
まさか……いや、でも流石にそれは……、
木箱の中のウィズダムさんの手書きであろう説明書通りにマガジンとバレルを取り換えようとすると、少々複雑ではありますが綺麗にはまります。そして少し複雑ですがスコープを取り付けると、
「スナイパーライフルですかね、これ」
死神の魔導書やウィズダムさんの知識でしか知らない銃、実物を知りませんので恐らく、の領域を出ませんがこれは、
「『システム・ウェポン』、でしょうね」
ウィズダムさん、まさか完成させていたとは思いませんでした。
「アレス様、この長い銃はいったい? ドレイク諸島で生産されている半自動小銃と違うのでしょうか」
半自動小銃はドレイク諸島の技術の結晶。ですがこれはドレイク諸島の全ての銃火器技術を過去の遺物にしかねません。もっとも、流石に量産の目途はたっていないでしょう。
「ウィズダムさんの説明書にそう記されているわけではありませんので断言は出来ません。しかしこの銃の特徴を見るにおそらく『システム・ウェポン』と呼ばれる銃に違いありません」
「『システム・ウェポン』、ですか。この長い銃がそうなのですか?」
「はい。『システム・ウェポン』はパーツの組み換えを行う事で様々な銃へ変貌します。この形態はスナイパーライフルでしょう」
書物でしか見た事ありませんし、恐らくとしか言えませんが。勿論曖昧な使い方しか分かりません。そもそも持ったまま狙撃は出来るのでしょうか?
「銃弾の形態で凡その効果は分かります。ショットシェルとスラッグショットがありますからショットガンにも成るでしょうしグレネード弾もありますからグレネードランチャーとしても使えるのでしょう」
弾の種類からこれに加えマシンガンと、アサルトライフルも使用可能のようです。バトルライフルの機能ももしかしたらあるかもしれません。
「今はスナイパーライフルとして組み立てていますが部品を変えれば他の機能の銃にもなります。素晴らしい銃ですよ、これは」
目を輝かす私の様子を見てエフィさんもこの銃がどれほどのものなのかを理解したのでしょう、
「凄いです、さすがウィズダム様! このようなものを作られてしまうとは! いつもながらアレス様はじめディエゴ様やウィズダム様の知識には感服するしかありません。この銃の量産体制が整えばドレイク諸島にもはや敵なしでしょう」
少なくとも一般人なら敵にならないでしょうし、ですが魔法使いやごく一部の規格外は存在します。ですがエフィさんの言う通り戦力的に見たら他の国を大きく引き離し絶対的な優位に立てるでしょうね。
ですがこれほどの銃、問題点もきっと多いと思います。
「触った感想ですがこの銃は最初のプロトタイプででしょう。ならドレイク諸島にはまだ1丁、もしくはウィズダムさんが持っていたとして2丁ほどしか無いでしょう。これをベースに増産すると言ってもドレイク諸島既存の半自動小銃とは必要とされる技術、生産コストは比較になりません。時間、コスト全てが桁違いでしょう」
これ1丁で半自動小銃や大砲がいくつ作れるか検討も出来ません。
そしてこのウィズダムさんがこのタイミングでこれを渡してきた、その意味することは、
実戦投入で撃ち殺し、銃のテストを行えとの事でしょうね。
「まぁ、接近戦でグロを見るよりは今回が対人間初実戦の皆さんからしたら精神的負荷がすくないでしょうから、辛うじて良しとしましょう」
戦争を仕掛けてきたのはあちら側、ドレイク諸島の民に何かあるよりは何百倍もマシです。
「申し訳ありませんアレス様、私の耳が愚かゆえに聞き取ることが出来ませんでした。よろしければもう一度お話しいただけないでしょうか?」
「ああ、ただの独り言です。ですからそんなに卑屈にならないでください。コホン、話を戻しましょう。この銃は1つの完成形なのです、ですがハイスペック故に使いこなすのは難しいでしょう。なので将来的にシステム・ウェポンがある程度の量産体制に入っても使用を認められるのは極一部のエース・オブ・エース、もしくは暗殺もしくは狙撃手等の単独行動をメインとする者への配属になるでしょうね。」
この銃はあくまでプロトタイプですから今後ウィズダムさんがどの様な追加ウェポンを開発するかで使用用途は変わるとは思いますけどね。
「では私は早速このシステムウェポンの組換の練習としましょう。通常の組み立て、分解と違い戦場での臨機応変な組換が必要とされる銃です」
この2日間での習得はむずかしいでしょう、ですが少しでも形にする必要があります。
しかしこの2日間でやらないといけない事が出来たのは良い事でしょう。この戦争、今出来る最善を尽くすのであれば戦場となっているメリック国の全線まで魔法で飛ぶのがよろしいのでしょう、しかし島民達が単独行動を許してくれる訳がありませんので船旅に甘んじているわけです。
「考えるだけ無駄ですね。今出来ることをしましょう」




