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魔法で奏でる三重奏! ~無慈悲な世界は女神の箱庭~  作者: 雨宮鈴鹿
魔法で奏でる三重奏! 三章、知識の探究者
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知識の探究者 謁見

既存登場人物紹介(ネタバレ除く)


リリー(不死者、女性) 327歳(肉体年齢19歳)

『可能性持ち』の不死者。通称『風の魔女』で名の通り風属性の魔法が得意、島の発展に尽力し知識を求める探究者。身体年齢は19歳だが転生してから300年を生きる悠久の魔女。西之園の忠告やラファエル大公の訪問、王国の謁見に時代の移り変わりを感じると共に周辺国家に巻き込まれ多少なりの不快感を感じている。


ピープス・ウィズダム(不死者、男性) 年齢不明

見た目は20代半ばくらいの男性。『可能性持ち』の1人で通常は猫を被っているがその本性は歪で他人を揶揄う事を好む。また、自分に対して敵対行動を行ったものに一切の容赦がないが好意を持つものや同士には非常に協力的。時代の移り変わりに敏感故、柄にも無く感情を表に出す事が増えた。


ラファエル・リュック・オゾン(堕天使、男性) 年齢不明

ビール共和国の大公にして堕天使、白い髪に20代程度の容姿。名は彼の本名では無、病弱な本物の大公の意志を継ぎ名を襲名した。過去を悔やみ大胆に行動を起こしたが俗世の常識に馴染めず少し世間知らず、故に大事なところで食い違いやミスを犯しウィズダムを激怒させた。基本的には真面目で行動力がある。


アーロン・ディアス(人間、男性) 48歳

イーランド王国海軍総大将の提督で階級はそのまま大将、年齢は40代後半。物語の地のバンガルス大陸内には複数の国家がある為、陸を移動すれば良く海路は軽視され続けた。しかしリリーの登場で航路の効率の良さ、利便性に気付き諸国は船開発に力を入れている。故にどの国も海軍は発展途上。アーロンも名ばかりの提督で虎(国)の威を借る狐(王国航海士)に苦労している。また、仮にも王国海軍の総大将をドレイク諸島に派遣している訳でリリーの製造する大型船にはイーランド王国も一目置いている。

A.D.1528.12.3


~イーランド王国、首都アルローズ~


目を覚ますと知らない天井、ドレイク諸島の私の屋敷とは違う木目の天井。


「ああ、王国に来ていましたね」


思考が次第に覚醒してきました。今日は謁見当日、時刻は……外はまだうす暗いですね、6時前くらいでしょうか?


政務官さんが迎えに来るのは午前中、正確な時間は未定ですが早くて8時、遅くとも10時くらいでしょう。6時は流石に非常識だとは思います。


「さて、最後の準備をしましょう」


昨日では暗く出来なかった確認作業があります、それと最終確認と準備を。


まだ頭が上手く働きませんね、銀花さんから死守したチョコチップクッキーでも食べて着替えましょ……ん?


「昨日の夜、この部屋に確かにあったクッキーが1枚残らず消えていますね」


いえ、2枚しかありませんでしたが。うーん、これはしてやられました、諦めて飴玉でも舐めましょう。




~時刻9時過ぎ~


「失礼、リリー・ドレイク殿は居られるだろうか?」


ドアのノックと共に恐らく壮年男性の声、恐らく昨日ディアス大将が仰っていた総務官でしょう。


「はい、今開けますね」


再度、最後の身だしなみの確認。そして外開きのドアをゆっくりと開けるとそこには予想通り、髭と衣装が立派な総務官さんがいました。


「貴殿がドレイク殿で間違い無いですかな?」


「ええ、私がリリー・ドレイクですわ」


「では早速、準備が宜しければ王城へと向うとします。宜しいですかな?」


「はい、よろしくお願いします」


政務官さんの案内で後ろに控えていた馬車に乗り込みます。にしても政務官はとても上の役職だったかと記憶しています、それだけ良い待遇と受けとっていいのでしょうか? 確かに私がウィズダムさん、それにディエゴやクロエさん達と共に手塩にかけ発展させた諸島と技術は自慢できるものです。ラファエルさんは貴族で大公ですしディアスさんは軍人で大将、どちらも国の中枢に当たる人物が島に訪問されていますからね、とても鼻が高いです。


「……潮の匂いと心地良い揺れと風、少しだけ肌寒いですがそれも一興です」


季節は冬、それなのに雪はしっかり除雪され人々は活気にあふれ、道も石畳で馬車は大きくは揺れない。流石は将来の覇権国家候補の首都は整備が充実、街は綺麗で風情があります。


「風情とモダンの調和、流石は王国首都ですわね」


「お褒めにあずかり光栄です、この街は王国の象徴であると共に私達の誇りです」


口に出したつもりは無かったのですが思わず漏れてしまいました。ドレイク諸島、ノアボヤージュの発展に比べれば雲泥の差ですがそれは彼らが知る事ではありません。と、なれば彼らからすれば私は田舎の島の井の中の蛙程度でしょうに。


「交易で何度か訪れましたが……港だけで城下町には初めて来たものですから。素晴らしい眺望です」


前世のロンドンの様です、魔法なんて便利があるから少し違いますが。魔法使い用に入り口が建物の高い所に存在したりと。


「ん? 政務官さん、あの建物は?」


見えて来た王城、そこに隣接するように建築している大きな建物。間もなく完成といったところでしょうか? よく見るとフィールドを囲むように建物が建っていますね。教会もある様ですし何処かで見た事があります。この形状、いったい何処で……、


「夢見る尖塔の都市……オックスフォードに似ている。学校?」


「流石はドレイク殿、その慧眼御見それした。王が執着する理由が分かりました。現国王の命です、才あるのもを身分隔てなく教育し将来の王国を担わせる優秀な人材を無料で育成する、それが王の理想です」


恐ろしい程の先見の明です、勿論諸島でもしていますが島外では聞いた事がない。


「王国を担う人材、しかしそれでは貴族の反発を買いません?」


有能だろうが無能だろうが貴族は貴族、その政の場を庶民と入れ替えなどすれば反発するでしょう。


「ここだけの話、有能ならまだしも無能な貴族殿には王も嘆いておられる。王直属の領は素晴らしいが辺境伯の一部はその無能さ故に民が苦しんでいる、同時に無能も罪だ。人の上に立つ資格はないとの事です」


「少々過激ですが理に適った判断ですわね、素晴らしい予見力です。御見それします」


強硬的な政治です、しかし革新は痛みを伴うものと言います。私のやり方とは違いますが……後は本人と直接会ってみないと判断できませんね。


「ドレイク殿、そろそろ王城に付きます」


政務官さんに従いお城へ入り、大理石の階段を上り謁見の間の扉の前、


「ドレイク殿、規則ですので謁見前にはその武器は扉前の近衛兵にお預けください」


私が見せつけるように腰に携えているレイピア、軽く瞬発性に特化したこの武器は私の得意武器ではありません。ついでに言ってしまえば今日の朝、ついさっき購入したもので島製ですらありません。私の得意武器は銃や可能性持ちの腕力任せに振り回せる両手剣や大窯(デスサイズ)、手数で攻めるナイフ等です。あくまで()()()使()()()()の話で本命は魔法ですが。


「分かりましたわ、ではその通りに」


ですからこれは演技、武器を確かに預けたと言う。レイピアを使うくらいなら素手の方がまだ戦えるでしょう。万が一、ですが打てる手はすべて打ちます、ですので本命武器は服の中にしっかりと隠して謁見に臨みましょう。


「どうぞ」


鞘も無い銀貨3枚ほどの安物、返さなくても結構ですよ。


目の前の大きな内扉、近衛兵さんが2人掛かりで開けるこの先が謁見の間なのでしょう。


「総務官さん、私はこの国の挨拶の仕方を知りませんわ。何卒、温情を持ち暖かい目で見て頂ければ助かります」


「勿論です、王はとても寛大で事情も理解出来る方です」


「理解があり助かります」


最後に謁見したのは前世です、その作法なんてとっくに忘れました。うーん……私なりに緊張をごまかそうとしていますね、いつも以上に思考がどんどんと移り変わります。ただの謁見なら問題ないのでしょうが、恐らく私達の今世で最も大きな分岐点となるでしょうから。


大きな扉が開かれた先、そこは玉座の後ろに大きなステンドガラス。逆光に少し目が眩みましたが次第に馴れその全貌が見えてきました。玉座に座るエリゴール4世、そして周りには貴族と軍人が左右に分かれ並んでいますね。


にしても全体的に若い、


王は見た目年齢は50代前半、その一番近くに立つアーロン・ディアス王国海軍総大将も同じぐらいでしょう。それと私の横の立つ総務官さんも。しかしそれが上限で貴族は兎も角、軍人さん達はとても若く感じます。いえ、貴族さん達も若いですが。いくらワンマン体質なエリゴール4世も大衆を焚きつけないと民は後に続きませんし士気にも関わります。若く、特に愛国心が高いと焚き付け易い事でしょう。ああ、そう言えばディアス海軍大将が最近、海軍を開設したと仰っていました。


やる気満々ですね、戦争。


「さて、行きますか」


ドアが音を立て開いた事で全員の視線を浴びる中、私は横の総務官に促され赤い絨毯の上を歩き数段の段差の前に。そしてゆっくりと傅きます。


「ドレイク諸島総督リリー・ドレイク、お呼びに預かり馳せ参いさせて頂きました」


「うむごくろう。そなたは私の部下では無い、膝を付く必要も顔を伏せる必要も無い」


そう言いつつも上下関係を匂わせる発言はしますね、とりあえず言われた通りにしましょう。ゆっくりと立ち上がり姿勢を正し顔を下から前に。そこには、玉座には威厳の塊のような人物が腰かけていました。


「よく来てくれたドレイク殿、知っているとは思うが我はアルファー・イーランド。エリゴール4世の方が聞き馴染むかな?」


「はい、4代目エリゴールの名を知らぬものはこの大陸にはいないでしょう」


イーランド王国を建国した初代国王エリゴール・イーランド、その才は物語上の着色はあるでしょうが素晴らしいの一言に尽きます。そして長いイーランド王国の繁栄の中には特に才能に秀でた者たちがいます。その者は初代にあやかり成人時に国王、親にエリゴールの称号も貰うのだとか。要するには襲名ですね、ウィズダムさんの話ですから恐らく間違いないかと。


「そうか、では回りくどい話は抜きだ、本題に入らせて貰おう」


「同意です王よ、ですがその前にこれを」


再び跪き懐から取り出した一冊の書物、それはガレオン級木造大型船の製作図。私達からすれば3世紀以上前からの技術です、現にガレオン級以上の木造船、フリュート級やシップ級、それに戦列艦すらも過去となりつつあります。装甲艦の完成も秒読み段階ですから。


しかし王国からすればそうではありません、未だに完成させることが出来ていない帆船の大型木造船です。本当は渡す気はありませんでした、私からは過去でも彼らには未来の帆船、手の内の中の虎の子に変わりはありませんでした。しかし私達にとって予想外の事が起きてしまったのです。それは予想に反して王国の木造船技術の進歩が速い事、戦争前や戦争中は平時の何倍も技術進歩が速いとは言いますが、それにしても早すぎます。早く見積もって20年でしたがこのペースだと10年、ならばこの設計図の価値が暴落する前に切ってしまおうとウィズダムさんやディエゴと相談した結果の判断です。こちらから切り出してそれ以上の何かしらの譲渡はしないと言う意思表示。


「ふむ、これは?」


近衛兵の1人がそれを拾い上げ王の元へ。そして書物を捲るにつれ王の表情は変わるのは少しだけ見ていて愉悦ですね。


「木造型大型船、ガレオン級の設計図です」


ザワつく周りと少なからず驚いた表情の王、しかしその表情は一瞬で消え去ります。もう少し反応すると思いましたが、


「これはお主等の虎の子、そう簡単に渡してよいのか? それともお主達……」


「ええ、まごう事無き虎の子の巻です。故にこれは王への友好の証であると共に、とてもとても()()()()()()()()()()()()()()()()


「……成程な」


そう聞き察せない王ではないでしょう? ましては聡明な王の事です、分かる前提で話します。苦虫をつぶしたような顔を一瞬。分かってますね。


「あい分かった、ではこの話は終わりだ。重ねて礼を言おう、大義であった。アーロン、早速研究を始めよ」


「はっ!」


大義ですか。私は彼の臣下ではないのですがね、島の住民が聞いたら怒りますよ? 私は構いませんが。


「では話を戻そう、ドレイクよ。お主は島では総督と呼ばれてると聞いたが?」


もしかして昨日アーロンさんから聞きました? 私を総督と呼ぶのはウィズダムさんくらいですよ、皆リリー様と呼んでくれます、有難い事に。


「そう呼ぶ人も確かにいます。(おおよ)そ、その通りです」


広く定義すれば総督は集団や領域の統率者を意味します、特に軍としてのリーダーを。


厄介ですね、思えばウィズダムさんが私を総督と呼び始めたのはイーランド王国の戦争の噂が濃厚になった頃です。あの人は戦争反対派ですがそれ以上に自分の居場所や研究を邪魔されることを嫌います、なら今の研究場所のドレイク諸島を攻撃される事を嫌い先に仕掛けたのでしょう。総督の名であえて戦争に巻き込まれやすいように。


そしてそれは悲しきかな見事に成功、王国の使者として訪問されたアーロン大将は昨日の報告あたりで私が『総督』と呼ばれているのを知り、ありのままに王に報告。そんなところでしょう。


「お主がこの大陸の国々と貿易をしているのも周知している情報だ、では島を買い街を作るお主の目的は? 豊かな生活か、名声が欲しいのか」


「名声には興味ありません、それなら生活が安定した時点で周囲の国家に売り込みますし、そもそも島を買いませんから」


前世は愛国心故に国の為に身を扮して働き、その結果当時は上官のディエゴは男爵の爵位を持ってはいましたが、私は興味ありませんね。持つ事によりいろいろ動きやすくなる事には肯定的ですが……同じだけ縛られることも多いですから。


「生活が豊かになる事には賛成ですが、現状ではこれ以上を()()()()()()()()


戦争なんて大反対です、成り行きでならまだ仕方が無いのかも知れませんが、今回王国が起こそうとしている戦争は無意味に近い。


「成程。これは手厳しいな、取り付く島もない」


そう言いながらもくつくつと笑う王、嫌な予感がしますね。


「少々回りくどかったな、では単刀直入に、だ。お主、そして諸島ごと我が国、領土に入らぬか?」


「お断りします」


即答、その回答が周囲をざわつかせます。王は笑みを浮かべますがそれ以外は真逆。許されない罵詈雑言を滾らせ、それをあと一歩のところで留めているのでしょう。知りませんよそんな事、それにブチ切れたウィズダムさんのほうがよっぽど怖いです、いや本当に。


「そう慌てるでない、勿論タダでとは言わん。総督の名に相応しい爵位(しゃくい)侯爵(こうしゃく)はどうだ? それに伯爵に相応しい領土も用意している」


「爵位ですか……」


侯爵、王族を除き爵位の中では五爵の第2位、新参者が貰える爵位では無い事は重々承知です。ですが、


「破格の条件なのは重々承知です、侯爵の爵位とその領土も。ですが私は爵位に興味がありません、それに国に所属すると言うのは権利と共に義務が生じます、私はそれを好みません。ただ、今の生活が好きなのです」


一瞬、では無い確かな時間、王の眉間に皺が出来るのが分かりました。頭も切れ権力もありますから、思い通りにならない事なんて少なかったのでしょう。


「うむ、なら同盟はどうだろう? 我が国とをお主の諸島で。我が後ろ盾になりお主の諸島が建国する事も認めよう」


……この聡明な王がこの事の本質に気付いていない訳が有りません。あるいは私がその事に気付いていないとも? いえ、それは万に一つ。ならば、


「では恐れながら私から1つ条件を提示させて頂いても宜しいですか?」


「聞こうか」


「ありがとうございます。エリゴール4世、アルファー・イーランドが王の間は一切の戦争を起こさない。これが条件(お願い)です」


「ふむ……」


これは大前提です。私達の諸島はイーランド王国の仮想敵国のビール共和国の目と鼻の先、その距離実に100キロ程。船で数時間の距離ですから国家間で戦争が起きたらドレイク諸島は最前線になります、イーランド王国の基地にされる可能性も。


実際、エリゴール4世が戦争準備をしているのは大陸周知の事実。ならこれは王には呑めない条件です、私の判断が正しければですが。


「お主は我が戦争を起こすと?」


「可能性の話です。勿論、王国以外の国か仕掛けた場合は例外ですが……出来れば参戦はしたくありません。王が私に求める事をお教え頂いても?」


王国が戦争の準備をしているのは大陸周知の事実、とは言いましたがそれは王がそう定言したわけではありません。国のトップとしての発言の影響力は計り知れません、そんな事言ったら事実上の宣戦布告ですしね。


「それは国家秘密だ、同国どころか同盟国ですらも無いお主には言えぬな」


妥当ですね、戦争を起こす気なのですから。王が初めて眼力が強くなりましたが……何度でも言いましょう、ウィズダムさんの方が怖いです。


「そうですか、ではこれ以上話す事もありませんね。これにて失礼させて頂きます」


少し大げさに踵を返し、その時、


「お主、もしかして他の国と同盟を組む気か?」


……どうして、どうしてそこに話が飛躍します? 話の脈絡も無かったでしょうに。


……嘘をつくのは悪手ですね、どこかで齟齬が生まれるかもしれません。


「驚きですね。組むかは別としてビール共和国のラファエル大公にお話を頂いています」


緊張が支配していたこの謁見の間に再びの騒めき、少し考えれば理解出来ます、共和国の鼻の先のドレイク諸島、組むならどちらかを。


「まさか我の誘いを断りそちらに乗る事は無いな?」


「分かりません。ですが地の利は明らかです、私達は弱者ですから、なりふり構っていられない時が来るかもしれません」


要は貴方が戦争起こしたら地理的に共和国に付きます。


「……不快だな。我の前で」


不快?


「失礼ですが私は貴方の機嫌取りでこの場にいる訳ではありません、有全てはドレイク諸島の発展のため、有意義はお話が出来ると思いましたが……難しいようです。悲しきかな、己の利益を追い他者を見下すその態度、旧時代の産物です」


「貴様、我を愚弄するか!」


「私の目から見て妥当な評価かと」


その次の瞬間でした。王の近くに控えていた近衛兵数人が剣を抜き一斉にこちらに。私は直ぐに風の魔法を咄嗟に放とうとしましたが、


「! やはり……」


風の魔法、それで防げるはずの攻撃でした。しかしその魔法は不発に終わります。とっさに後ろに飛び魔法を放ったはずの左手を見つめ、炎の魔法を唱えましたが……出ませんね、火。


「魔法が封じられている? いえ、この部屋、場所で魔法が使えない様になっていると考えるのが 妥当ですか?」


違和感はありました、この部屋に入った途端私自身の魔力が抜け落ちまた、この部屋に魔力が無い事を。ならば王宮魔術師達ここでは魔法は使えない? 恐らくそうでしょう、そもそもいませんから。


「どうした? ドレイク殿?」


どうした? ではありませんよ。


「いえ、何故私は剣を向けていられるのか聞いても?」


「すまない、我の意と組み間違い暴走してしまったみたいだ。お主にもあるのではないか?」


確かにあります。信仰され崇拝され意志疎通出来ずに勘違いが生まれる。それでも、


「否定はしません。ですが島の皆は命無しに客人に剣を向けません、それに部下を律する事も出来ず剣を収める事もさせず……もしかして王様、慢心されています?」


魔法は1つの手段、切り札ではありません。ですからエリゴール王の目配せで切りかかってくる親衛隊の彼らを制する事は赤子の手を捻るようなものです。ですが、この後の予定の為に、


ゴンッ!


「ぐっ!!」


一撃だけ攻撃を受けます。剣の腹を頭で受け一瞬の眩暈、次第に私のブロンドヘアーは一部深紅に染まり顔に、目に垂れ視界を赤く染めます。あー、とても痛い。頭がガンガンします。


「それが答えですね、王」


「愚門だな」


そうですか。


「では王様、私からささやかな反撃を。魔法で焼かれるのと爆薬でこの場をぶっ飛ばすの、どちらが良いですか?」


「爆薬? 知らんがそうだな、折角だから『風の魔女』の魔法を見て見たいものだ」


「そうですか、魔法をご所望で」


アビリティか魔道具かは知りませんがこの部屋には絶対の対魔法阻害があるのでしょう。ですが、


「絶対なんてこの世にはありません、規格外は存在しますよ?」


勿論、私ではありません。そこまで己惚れてはいませんよ。


懐から取り出した6センチ程度のとあるお菓子。それは青いマカロン、このマカロンは()()()()()()()()()()なみの価値があります。


空中、自身の上に投げたそのマカロンは空中で消え、私の肩に確かな重みが。


「魔力装填、100パーセント。ウ、撃テマァス……」


魔力が枯渇したこの部屋で私の身に確かに魔力が籠ったのが分かりました。再び左手に魔力を込めると今度は確かに火が灯りました。


「なんだと!? 確かに魔道具の力で……!」


なるほど、魔道具の力でしたか。


「語るに落ちましたねエリゴール4世」


魔道具に魔力を吸われる反面、それ以上に供給されるのを感じます。流石は規格外、私には無い才能です。


「それでは私は帰らせて頂きますわね。ごきげんよう、王」


人を殺めない様に最大限手加減して目くらましの炎を、そして同時に天井に火力を高めた炎魔法。予備で仕掛けていた火薬に引火させ天井を破壊、そのまま飛行魔法で一気に脱出。血を流し過ぎましたか、ズキズキと痛み気持ち悪いです。


これで戦争の道は避けられませんね、負けはしないでしょうが……非常に面倒。これでビール共和国との同盟が濃厚となりました、これからする事は多そうです。ですが、


「頭が割れるように痛い……まずはデヴォン号に戻って休みましょう」


港に見える私の誇らしい大型木造船に、今はただ飛びましょう。

余談、補足。


夢見る尖塔の都市

オックスフォード大学がある大学都市、シティ・オブ・オックスフォードの別称。英国圏、世界最古の大学でその歴史は12世紀から始まった。リリーが見たイーランド王国の建設中の学校を見た時、かつての祖国イングランド、オックスフォード大学と雰囲気が似ていたのでこの言葉が出て来た。


銀貨3枚のレイピア

この世界の銀貨3枚を無理矢理、日本円に例えると約7000円強くらい。マジの安物。


アルファー・イーランド

イーランド王国、国王エリゴール4世の正式名称。エリゴールの名は初代国王の名で才能のある歴代の王だけエリゴールの名を襲名する。以降、正式名称で出るのは稀なので覚えつ必要はありません。


チョコチップクッキー程の価値のマカロン

そのままの意味。規格外を呼び出す為の儀式に必要。


誤字脱字があれば教えて頂ければ幸いです。

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