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魔法で奏でる三重奏! ~無慈悲な世界は女神の箱庭~  作者: 雨宮鈴鹿
魔法で奏でる三重奏! 三章、知識の探究者
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知識の探究者 不穏な足音 後編

既存登場人物紹介(ネタバレ除く)


リリー

『可能性持ち』の不死者。通称『風の魔女』で名の通り風属性の魔法が得意。島の発展に尽力し知識を求める探究者の少女。身体年齢は19歳だが転生してから300年は生きている。研究の邪魔をされる事を酷く嫌う。


ディエゴ・ホーキンス

リリーの忠臣。筋肉隆々の高身長マッチョで体を鍛えるのが生きがい。身体年齢は26歳だがリリー共に転生してから300年を生きている。頭まで筋肉なので知能は高くはない(低い訳でもない)。


ピープス・ウィズダム

見た目は20代半ばくらいの男性。『可能性持ち』の1人で通常は猫を被っているがその本性は歪で他人を揶揄う事を好む。また、自分に対して敵対行動を行ったものに一切の容赦がない。


銀花

綺麗な白髪に赤のメッシュのサイドテールを持つ妖精。紫と桃のハイカラな袴に紋付を羽織り、チョコチップクッキー依存症。口が非常に悪く、良くも悪くも非常識。


ニーナ・エルフリーデ・オゾン

ラファエルの腹心で右腕。兄妹の契りを結んでおり義妹の1人。ピアとも血が繋がっていないが彼女からしたら姉にあたる。見た目20代半ばで優秀な軍人。階級は准将、服をきっちりと着こなしている。


フレイヤ・ピア・オゾン

ラファエルの腹心で右腕。兄妹の契りを結んでおり義妹の1人。エルフリーデの血の繋がらない妹でラファエル信仰者。おしゃまで自由人。『可能性持ち』かと思われたがリリーたちは違うと判断した。ホットパンツにセーターを前で結ぶと露出が高く、動きやすい服装を好む。また、ぶかぶかなキャスケット帽をかぶり猫耳を隠している獣人。見た目は10代半ば。

A.D.1528.11.26


~ドレイク諸島、ノアボヤージュ~


「あれは、堕天使ですっ……!」


後ろからはウィズダムさんのツバを飲み込む音が鮮明に、そして目の前には苦笑いをする堕天使、ラファエル・リュック・オゾンさん。


「堕天使ですか、驚天動地も良いとこですよ」


私の前世では魔法は非常識で否定される立場で、対してこの世界では魔法は常識です。しかし非常識は存在します。お伽話の中で英雄が魔王を倒しお姫様を助け出し世界を救って……そのお伽話の中には神様が出て、妖精が出て、天使が出て来て。それらの方々は常識では存在しないと言われています。いえ、神様も妖精さんにも会いましたが、まさか今度は天使に会うとは思いもしませんでした。それも堕天使に。


理由は分かりませんが堕天使の『堕』に良いイメージは沸きませんし、彼? の妹のピアさんのように話が通じない『駄』天使で無ければ良いのですが。


「フム、魔力は間違いなく抑えられていると思いましたが。私もまだまだ鍛錬が足らずだろうか」


高い声、ですが男性でしょうね。黒い革のコートと黒いマント。髪は白く肌も病的に白い。体は細く話さなければ性別も分かりません、堕天使がこのような容姿なのか、ラファエルさん個人としての特徴なのか。


「少し驚きましてね、堕天使さんに会うのは初めてなものでして」


魔力は特別大きく感じませんが、銀花さんが話すなら間違いないかと。


「初めて見るとは思えない程に落ち着いている様に見える、流石は何百年も生きる『風の魔女』殿だ。ああ、こんな可能性もあるかな、『堕天使』は初めてでも他の特殊な存在には会った事があるとか? 例えば、『神』や『妖精』とか?」


「『堕天使』の貴方が言うのであれば『神』も『妖精』も居るのでしょう、見た事は有りませんが」


顔には出していない、心拍数も上がっていません。カマを掛けたのか分かりませんが大丈夫でしょう。


因みに気配皆無ですが私の後ろに居ますよ、妖精さん。たぶん。


「おや、そうなのか。すまない、早とちりが過ぎた様だ」


変わらず笑みをこぼすウィズダムさん、表情は変わりませんから隠し通せたと思いますが……ウィズダムさんの次の言葉には驚きを隠せませんでした。


「『可能性持ち』は神に会い不死に成ると風の噂で聞いたものだからね、勘違いだったようだ」


ヒクッ……と、表情筋が動くのが分かりました。それは僅かな反応、しかしラファエルさん相手にそれを隠し通すのは不可能でしょう。何故なら後ろから、


「ヌワァ、何故それを!?」


と、筋肉質な低い声が聞こえてきましたから。ディエゴは取引事に絶望的に向いていませんね。


「クク、プププッ。ギャハハハハハ!」


そしてディエゴの反応を見て笑いを堪えられなかったのでしょう、爆笑しています。耳に響くその声は非常に不快ですね。


「ウィズダムさん」


「ククク、承知しました。ディエゴさん、あっちに行きましょうか」


「ぬあ? どうしてだ?」


「言わなければ分かりませんか? 馬鹿ですね。邪魔だからです。はい、行きますよ」


「おい、馬鹿とはいったい……」


「早く行くぞ、筋肉バカ」


「おおおい!」


後ろからの遠ざかる声を確認して深呼吸を1つ、下を向いていた顔を上げて再びラファエルさんと視線を合わせます。


「ふぅ……、確かに私は『可能性持ち』と呼ばれる存在です。ですが貴方の言う神や妖精とは会った事は有りませんよ、堕天使だって初めてお会いしたのですから」


勿論、嘘ですが。


ラファエル大公と少し話した感触ですが、どうやら『可能性持ち』の存在こそ知っていますが詳しくは無いと見ました。であるなら此方から話を広げる事はせず相手の情報量を伺っていきましょう。


「長話をするつもりは無かったのですが……仕方ありませんから。どうぞ私の家に来てくださいな、それと敬語も必要ありませんよ、私の総督は名ばかりで大公様と違い爵位でもありませんわ」


「それは有難い、では遠慮なくお邪魔させて貰おう」


ついでに言ってしまうなら、その芝居がかった話し方も止めて欲しいですが、今は私も変わりませんね。





~ノアボヤージュ、リリーの館~


島の住民に勝手に何度も増築、改築を繰り返し館250年。からもはや城に近い構造になってしまいました。城塞と言っても過言ではないその館は、初めての方には迷子になる程度には複雑で広大です。


「これはこれは、あえてシンメトリーの調和を崩した美か。素晴らしい城だ。名はなんと?」


「名は特に在りませんし城でもありません事よ、ただの館ですわ」


「……ごちゃごちゃしてるだけじゃん」


ピアさん、同意ですがせめて私に聞こえない様に言えませんか?


「フレイア、思ったことをすぐに口に出すのは止めなさい。良い事は何1つありません」


「分かりました、ラファエル様!」


「……ラファエル大公、何故彼女を先行してこの島に送ったのでして? 役不足とまでは言いませんが人選を間違っていましてよ」


彼女は精神が若い、というより幼いでのしょう。とても外交に向いているとは思えません。


「これは手厳しい。だが彼女は戦闘能力が高く逃げるのも得意なものだからね、此方も最悪の状態を想定していたのだ」


「そうでしたの、確かに最悪は避けられたようで何よりです」


「はは、お手柔らかに頼むよ」


苦笑いのラファエルさん達を10人ほど専用の小会議室に招き3人が座るのを確認し、私は机を挟んで反対に座ります。と、そんな時、


「失礼しますよ。リリーさん、同席しても?」


ドアから顔を覗かせたのはウィズダムさん、彼は立場上は部外者ですが……もう諸島で100年も暮らしておいて今さらですね。それに戦力要員のディエゴと違い彼は頭脳要員です、先程のピアさんとの対面も考えれば私に不利な情報を流すとも思えませんし彼の知恵は是非借りたいですね。


「どうぞ、お入りくださいな」


「ありがとうございます、失礼しますよ」


大股で歩き私の隣の席に座ると私の隣の椅子に足を組んで座りました。その多少なりに横暴な立ち振る舞いは私含め全員の視線を集めます、ブレませんね。


「男性の方よ、先程は挨拶が出来ずに申し訳ない。私はラファエル・リュック・オゾンだ。名を聞いても宜しいか?」


「うん? ああ、私はピープス・ウィズダムです」


顎を少し上に上げてラファエルさんを見下ろしています、その横に居座るピアさんが鬼の形相で睨んでいますがお構いなしですね。


「ピープス殿、私が言うのもなんだが少し態度が横暴ではないだろうか? 足を組むのも失礼だと思うが?」


もっともです。


「それはすみませんね。そこのお嬢さん、あんたの妹さんにいきなり切り込まれて。それを避ける為に無理に足を動かしたら捻挫しまして、こうしていないと足が痛くてたまりません」


嘘つけこら。


「なに? ニーナ、詳しく話なさい」


「はっ、確かにピアが先に仕掛けピープス殿と戦闘に発展しました。その後リリー殿が仲裁に入りその場は落ち着きました」


貴方が止めても良かったのですよ? エルフリーデさん。


「フレイア、私は何度もこちらから手を出すなと話したはずだ。何故約束を守れないのだろうか? 理由があるなら聞こう、私納得できる理由があるかい?」


「……頭に血が上り、つい手が出てしまいました。申し訳ありません!」


「つまり完全に此方が悪いと、ふむ……フレイヤ、非常に失望したよ。君は暫く私の姓、オゾンを名乗るのを禁ずる。本当に失望したよ」


その言葉にピアさんの体に電流が走ったのでしょうか、体がピーンと伸びた後、涙目に。何百年も前の話ですがクロエさんがまだ10代の頃、理由は忘れましたが心を鬼にして叱った事がありました。その時のクロエさんはまさに今のピアさんと酷似しています。私が言うのもなんですが相当に信仰していますね、ピアさん。怖い、フローネ家の一族を彷彿させます。


「すいませんがそちらのごたごたは帰ってからしてください。うちの総督様も暇じゃないんですよ」


ギャングですか貴方は、楽しそうで何よりです。それと様付けはどこか不気味なので止めて頂きたい。


「ああすまない、貴重な時間を奪うようなことをして。時にリリー殿、疑問なのだが、この諸島の総督殿が『リリー』殿なのは知っていたがフルネームが『リリー・ドレイク』とは知らなかったものでな。どちらで呼べば良いだろうか?」


はー、今日まで『ドレイク』姓は名乗っていませんでしたから。名の『リリー』呼びに違和感は有りませんでした。しかしここは外交の場、さてどうしましょう。


「考えた事も無かったわね、島の住民は家族みたいなものですし……『ドレイク』姓は私には荷が重いですからどうぞ『リリー』で呼んで下さいな」


父さんと同じ姓に慣れるのはまだ時間が掛かりそうです。


「そうか、では遠慮なくリリー殿と呼ばせて貰おう。ではリリー殿、本題に入らせて貰って構わないかな?」


「構いませんわ、早く終わらせてお帰り頂ければ」


「手厳しいね、しかしこれは人類の存続をかけた戦いになるかも知れないからな」


「なんですかそれ、この技術レベルの低い大陸で核戦争でも始まると仰って?」


『死神の魔導書』で気になった核、ウィズダムさんに詳しく聞こうとしたら……彼らしからぬ焦ったような怒ったような……複雑な表情を見て研究、開発を禁止しました。曰く、核兵器とやらは世界を人類を、文明を滅ぼすと。


「『核』は知らないが危険な事には変わりないのだろう、今のイーランド国王、エリゴール4世は他の国との絶対的な覇権を渇望しているからね」


「それは国の話でしょ? 私は客ですがこの諸島は国ではありません。仮にその話に乗っておっぱじめるのは戦争ですよね。その島の総督様は島の住民が傷つく事と時間を奪われる事は酷く嫌いますがここはもっと実のある話をしましょう、戦争に加担してメリットがあるのでしょうか?」


「戦争にメリットなんて無いよ。権力者の利益で巻き込まれるのは弱者、数えるのも億劫な数の人命が消え苦しむ、しかし君達はもう目を付けられているからね。この場合はメリットでは無くデメリットの防止が正しいと考える」


「デメリットの防止ですか……リスクマネジメントは確かに大事ですね。リリーさん、確認ですが貴方の()()()()()()()()()?」


ああ、なるほど。頭が回りますね。


「私はイーランド王国ですわ、ウィズダムさんはミナカンタ王国でして?」


「ええ、よく覚えてましたね」


『可能性持ち』は同じ国に数人被らないように配慮されています。理由は2つ、早い段階で可能性持ち同士が潰しあわない様に、もう1つは『可能性持ち』が国に加担した時に戦力が偏らない様に。です。つまりここでウィズダムさんが私に言いたい事はイーランド王国に現在『可能性持ち』が居ない可能性が高い。イーランド出身の『可能性持ち』は私ですから。


この大陸は現在6つの国家があります、それは私がこの世界に転生した時と同じ国家数と同じ。でしたらこの大陸の『可能性持ち』の可能性は最低2人で最大6人となります。ですが大きな活動は聞きませんから居ない可能性、もしくは表舞台に出たくは無いのでしょう。そして残りの脅威は現人神と謳われている『マギア・ドゥミナス』さん。しかし彼女はまだ幼子。ならば今現在、この諸島への脅威は現在認められませんね。


加えてここまでは私達『可能性持ち』の話です。あくまで転生先の話であって、ビール共和国の皆さんにこの話は私がイーランド王国出身、ウィズダムさんがミナカンタ王国と捉えられるでしょう。祖国に牙を剥けとは流石に言い難いはずです。


「なるほど、君達にとって私達の仮想敵国は祖国に当たるのか。それで、リリー殿とピープス殿は祖国愛があるのかい?」


「いえ、むしろ何度ぶっ潰してやろうかと」


「……島発展の資金調達でお世話になりましたわ」


つまり祖国愛はありません、私の祖国はイングランドですし今はドレイク諸島が第二の故郷です。それにしてもウィズダムさんの速攻の返しで思わず私も本心を伝えてしまいました。しかしラファエル大公は察していたようですね、お相手さんも交渉がお上手みたいですし……ここで粘るのも時間の無駄と考えましたか?


「なら話を続けるよ。エリゴール4世の侵略が始まったらまず間違い無くイーランド王国の仮想敵国で唯一陸続きの国、メリック国を攻め落とすだろう、しかしその間には標高2000メートルを超える山脈がある。これを敵の攻撃を受けながら越えなければならない」


標高の高い山を越えての進軍。あまり現実味の無いな話です、昔ハンニバルとか言う天才が居ましたが。


「ですがそれでは士気を下げ兵を疲弊させ、気温等の環境で命を落とす人もいますわね。その恐怖は感染して負の連鎖、それを援護する為に海からの支援と?」


イーランド王国とメリック国は陸続きですが同時に海も接しています。どちらも海洋国家ですが……海軍のパワーバランスが問題です。イーランド王国は国家機密で随分と前から中型船、大型船の開発に取り掛かっていました。


そのきっかけは私がまだ島に移住する前に、この大陸初の大型船にしてガレオン級の『アークロイヤル号』を……よりにもよってイーランド王国の首都アルローズで船大工のノアさん筆頭に造船所の総力で1年かけて作った事でしょうね、間違いなく。それまで既存の船は中型船が最大で帆船も無く、人力で漕ぐガレー船でした。ガレー船を馬鹿にするわけではありませんが……ガレー船はオールを通す為に船に穴を開けます。故に耐久力は下がりますし人力ですから水夫を帆船に比べて沢山載せますから、燃費が悪いんですよね。


『アークロイヤル』号は首都アルローズで造船しましたから当時の国王に見られているでしょう。しかしその後、島の移住に当たって造船に関わった全ての設計士と船大工が家族ごと全員島に移住しちゃいましたからね。イーランド王国からしたらたまったものでで無いでしょう、大型船は未だに他の国でも成功を聞きませんし。大型は大型の造船所が必要ですし中型船とはまた訳が違いますから。


と、長く脱線しましたが私達の影響でどの国も造船技術に力を入れています。ですから数は兎も角、技術に違いは無いでしょう。


「エリゴール4世の船への執着は異常だよ、この大陸は中央南に巨大な湾、『シャム・ダルリャル巨大湾』がある。この通称シャムリャ湾に近接している国はビール共和国、イーランド王国、メリック国だ。ならもし戦争……世界大戦が勃発したらシャムリャ湾は戦場となるだろうな。分かるだろ?」


このドレイク諸島はシャムリャ湾の外れにあります。『可能性持ち』の存在を知らないエリゴール4世はこの諸島を襲ってでも船の知識や設計図を手に入れようと躍起になるかもしれませんね……これは慎重にならねばいけませんね。


「私達ビール共和国は私、ラファエル・リュック・オゾン大公の名において『ドレイク諸島』には手を出さない。倫理的な話でもあるし、戦争が始まったら敵に回す余裕は無いからね。いえ、それ以前に君達を敵に回す方が骨が折れそうだよ」


「それでしたら私達への勧誘は必要ないのでは無くて?」


「いやいや、そんな事は無いよ。万が一、君達がイーランド王国側に付いたら大変に厄介だ。それなら仲間に引き入れた方が良い、勿論メリットも用意している」


「聞きましょう」


「味方陣営に参加してくれたらそれ相応の報酬を支払うつもりだよ、そして君達がビール共和国に帰属しても構わないなら領地と子爵の地位を授けよう。この意味は分かるよね」


女性の爵位持ち、これはこの大陸では王族を除いて前例がありません。それに爵位と来ましたか。


「……ウィズダムさん、一考の価値はありますかね?」


「揺るぐだけの価値はありますね。問題はリリーさんの中でその価値が諸島、そしてその住民と天秤で測りどちらが価値があるかです。簡単な話ではありません、慎重な判断が必要ですが……悠長に長考している時間は無いかと。決めるのは貴方ですよ」


考えは同じですね。


「君達に対してメリット、デメリット共に話したつもりだ。これはお願いであって強要では無いよ、だが早く決めないと取り返しのつかない事になる」


取り返しのつかない事ですか……そう言えば、


「1つ質問しても宜しくて?」


「構わないよ。しかし君達『可能性持ち』に秘密があるように私にも答えられない事がある」


「それもそうですわね、では遠慮なく質問させて貰いますわ。何故『堕天使』が一国に肩入れをしてまして?」


「すまないがそれこそ答えられない、君達が味方陣営で本当に信頼がおけたなら初めて話せる事だよ。だがこれだけは言っておこう、イーランド王国での現人神の話は聞いているかな?」


「ええ。確か『マギア・ドゥミナス』でしたか? 2歳の女の子と聞いていますが」


「その通りだ。彼女がこの世界に生まれた事で1500年前と同じように神話の戦争が始まる可能世があるのだよ、人と神の存続をかけた戦争が。この話は決して他言無用でお願いするよ、そしてこれ以上この話は踏み込まない方が良い。そうすれば苦しまず穏やかな終末を迎える事は可能だ」


「……そうですか」


『堕天使』の存在、そして私達『可能性持ち』。そしてその目で神や妖精を見て来たから眉唾では片づけられませんね。前世はともかくこの世界では魔法が存在し信仰されている神の名も違う。そして『懐中神苑』で会った神はまた違う名の冥界の神、死神でした。おかしい、戦争の陣営の話が人類の存亡の話に飛躍しましたね。これは後で『死神の魔導書』で調べるべきでしょうか……いや、調べたところでどうしようもない事柄なのでしょうが。


「おや、信憑性の無い話だが否定しないのだね?」


「否定するのも肯定するのにも情報が足りませんわね。それに……」


最初は気が乗らない話でしたが気になる情報は多いですね、そして更に探りを入れようとしたその時でした。


コンコン、とドアを2回ノックする音。


「リリー様!」


この声はディエゴですね。


「どうぞお入りなさい、ディエゴ」


ドアを吹き飛ばすような勢いで部屋に入って来たディエゴは珍しく急いでいるようでした。


「どうしました、ディエゴ?」


「ガレー級の船が5隻寄港されました、イーランド王国海軍です! リリー様にお会いしたいとの事ですぜ」


えぇ……、


「本当に今日はお客様が多いですね、憂鬱になりそうです」

余談、補足。


ラファエル・リュック・オゾン

ビール共和国の大公で堕天使、故にその精神に性別は無いが体は男性。髪は白いが見た目は20代前半程で少し童顔。物腰が柔らかく敵でもない限り相手で対応は変わらないが、信念はしっかりと持つ。彼の様な堕天使がなぜビール共和国に肩入れしてるかは不明。


天使と妖精

全く別の存在で天使は自身を創成した神に仕え、妖精は自由と自身の意志で付き従う者を選ぶ。天使の方が利口で頭も回るが、妖精の方が魔法の実力は高い。もし一対一の戦闘になったら遠距離戦の場合、まず天使は妖精に勝てない。しかし天使は武防具を使用するので接近戦となると妖精の分が悪い。総合的には妖精優位。だが妖精は非常に気まぐれ。


『可能性持ち』を言い当てられて驚くディエゴ

彼は頭まで筋肉なので戦闘や戦闘指揮能力は非常に高いが反面、交渉やカマかけに非常に弱い。


リリーの館

リリーを尊敬し崇拝するリリーの為に時代の住民たちが大きく壮大にと増改築を繰り返した結果、大きく館自体は城塞の様になった。イメージはモン・サン・ミッシェル。


ハンニバル

フルネームはハンニバル・バルカ。紀元前の人間で当時、絶大な戦力と天才的なドクトリンを所有したローマ帝国と戦うに当たって敵の隙を突く為にアルプスを越え進軍。結果、その後のトレビアの戦いで奇襲に成功。当時世界最強のローマを以てしてローマ史上最強の敵と言われた。その後、カンナエでの戦いで精鋭8万6千に対しハンニバルは5万。しかしその5万は複数民族の混成兵。だが前代未聞の完全包囲戦を繰り出しローマは6万人の死者に1万の捕虜を出す。しかしその完璧な戦法故に後のザマの戦いではローマのスキピオによって逆に完全包囲戦を強いられ大敗することになった。作者は歴史が大好きですがこの中でもハンニバルは特に好きな偉人の一人です。YOU TUBEで解説している方もいらっしゃいますので宜しければ調べてみてください。



誤字脱字があれば教えて頂ければ幸いです。

次回の投稿は5月15日(土)を予定しています。

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