あたりまえの終わり
A.D.1538.12.4
「どうするマギアちゃん、買い物を済ませてから先生のプレゼント買に行く?」
人見知りなセシリアも少なからず城下町に来てから心が躍っているように感じ取れる。この娘は修道院一、先生のことが好きだからきっと幸せになって欲しいのだろう。それは私だって同じだけどさ。
「それが妥当なんだろうけどさ、これ見る限りそこそこの荷物の量になるだろうから買うなら絶対にプレゼントからが良いよ。まだ午前中だし時間は沢山ある。ゆっくりといい物を選ぼうよっ」
いつもなら先生と一緒に買い物に毎年行くけど今年に限ってはアンジェラ先生が忙しくて来る事が出来ない。正確にはまだ目を離せない孤児がいるから。だから今回は私とセシリア2人で来たんだけどね。私達もまだ12歳と13歳と決して大きいとは言えないけどそれでも孤児院の中では比較的年長だから買い物を頼まれた。きっと先生から信頼されている。そう思うと嬉しく感じる。それにこの国は治安は良いから問題無いとの判断だったんだと思う。
「そうだね、じゃあ先にプレゼントを買っちゃおう。今日は時間は沢山あるしゆっくりと選べそうだね」
「うん、とびっきり喜んでもらおうね」
スキップになりそうな気持の高揚を押さえてしばらく街の中を歩くとそこはストリートに店を広げたリーマーケットがある。選り取り見取りな果物に自作であろうおしゃれなアクセサリー、それに怪しいお店と様々と並んでいる。
「先生どんなのが似合うかな?
そこはどんなのが好きじゃ無くてどんなのが似合うかなんだ。ならセシリアの頭の中では先生へのプレゼントは身に付ける物と決まっているのだろうな。ならアクセサリーのお店を重点的に回ってみよう。
「先生のことだからあんま派手なのは好まないでしょ、そうだね……この銀色のネックレスとかどう?」
アクセサリーのお店を周りを人ごみの中ジャンプしながら見渡したら安くて良さそうなお店を見つけた。孤児院のお小遣いなんて多いものじゃないし安くて良質なものがあるに越した事は無い。近くによって見るとガタイの良いおお店の兄さんが挨拶だけしてすぐにアクセサリー作りに戻った。すぐに商品に目を移すとやっぱりだけど銀色なだけで勿論、銀じゃない。多分だけどニッケルか何かのメッキだろなんだろう。何より安いし。でもお金なんかじゃない、そんなのは私もセシリアも勿論解っている。
セシリアは様々なアクセサリーにゆっくり目を通したあとその中の一つを指差した。その指先にいあるネックレスはチェーンの先に十字架が付いていて更にその真ん中には青い宝石のようなものが付いている。値段的にガラス玉だろう。セシリアの選んだ物だしセンスも良いがなんか少し面白げが無い。もっとこう……、
「お嬢ちゃん達、どんなのが欲しいんだい?」
ゆっくりと物色していた私達に販売のお兄さんは手を止めて声をかけて来てくれた。命名するなら筋肉ダルマ、良い体つきしてるな。
「えっと、その……」
はいはい知ってた解ってた。セシリアは人見知りだしこんな声が大きくてガタイのいいお兄さんに声をかけられたら委縮もするだろう、私の後ろに隠れるお姉さんは可愛かった。
「いつもお世話になっている人にプレゼントを買おうと思っていています。お金はあんまり無いのですが喜んでくれればって思って」
「へー、プレゼントか。良い心がけだなお嬢ちゃん達。で、そのプレゼント相手の性別とか歳とかは? それで送り物も変わってくるってもんだ」
確かに筋肉だるまさんの言う事も最もだった。
「えーっと……アンジェラ先生歳いくつだっけ?」
「確か今年で27歳だったと思うけど……違ったっけ?」
そんなに私の後ろに隠れなくてもいいのに。このお兄さん少し話して受けた印象は良い人みたいだし。勿論そんなに簡単に人は信じないけど。
「いい年だな。結婚はしているのかい、その先生は?」
「未婚ですね」
もしかしたら処zy……、
「そうかいそうかい。じゃあこんなのはどうだろうか?安くしとくよ」
そう言ってお兄さんが様々な商品の中から拾い上げたのは指輪だった。しかしその指輪は、
「見た事無い形の指輪ですね。それは何かの願掛け願いでも掛かっているのですか?」
ハートの王冠を両手で掴んでいる、なんとも特徴的なリング。面白い形だ。
「鋭いね銀髪の姉ちゃん。この指輪はクラダリングと言ってな、この指輪を未婚者が右手に逆に付けると恋人募集中って意味になるんだよ。どうだ、面白いだろ」
なにそれ……
「凄く面白いですねそれ。どうかなセシリア?」
「う、うん。先生もなんか危機感覚えてたし。凄く良いと思う」
幼少時代のアンジェラ先生の友達がよく野菜とか持って孤児院に遊びに来るけど結婚とかしたとかですんごく焦ってよく取り乱すのはいまや孤児院の名物にもなっている。おちょくるネタとしては面白いかな、今日の夜は楽しくなりそう。
「それにこの指輪は付ける場所でいろんな効果があるんだよ。もしその先生が結婚したら今度は左手に正しい向きで付けると既婚者って意味にもなる、薬指がお勧めだな」
同じ指輪に異なる意味。とても面白い、やっぱ城下町に来ると新しい発見と楽しさがあるねっ。
「セシリア、この指輪どうかな?」
「うんこれにしようよ。この指輪可愛いし」
「じゃあすいませんこれください。あ、それ指輪いくらですか?」
クラムリング?の下に置いてある値札に目を通す。うわ、そこそこするんだこれ。
「あげるよそのリング。君達の先生への愛情に感動したからね」
それはとても嬉しい。でもそんなのであげる理由になるのかな? 好意を無下にするのは悪いけど聞いてみよう。好奇心には勝てない。
「本心は?」
出来る限りの悪そうな目で物理的に上にいるお兄さんを見上げる。身長何センチなんだろう、首が痛くなりそう。
「ワハハハ、まいったな……半分は本心だよ。そうだな……残りの半分は」
「半分は?」
「銀髪の君、マギアちゃんだろ? 女神マギアの生まれ変わりとか現人神とか言われている」
「………………」
完全に隠せてなかった。私は髪を隠すように更に深くマリンハットをぐりぐりと頭に押し付ける。
昔からこの珍しく特徴のある髪の色のせいで周りからジロジロと見られて生きて来た。その中には笑い声が混じっていたりしていて非常に不快だったし嫌な思いもしてきた。だから孤児院以外では帽子を深くかぶっていたし目立たないようにもしてきた。勿論この髪の色は気に入っていたし先生やセシリアも好きだと言ってくれたから切らないで今日まで伸ばしてきたけど……今日みたいに孤児院以外の人に褒められたのは初めてだった。それはとても嬉しかったけどそれ以上に戸惑っているんだろう、私は。不思議と心臓がドキドキする。あ、恋じゃありません。
「その髪のせいできっと嫌な思いもしてきたかもしれない。でも少なくとも俺はその髪色は好きだ。だからもっと胸を張って生きても良いんだよ。知っているか? 俺は忠実な信者じゃ無いけどな、女神マギア・アモールは愛を象徴する女神だ。そしてもう一つは人を象徴しているとも言われている。君はこの先にある大聖堂にある女神像を見た事があるかい?」
筋肉だるまが指差す先にはお城の敷地内にある世界最大の大聖堂。先生曰くあまりに人が多いのでもう少し大きくなってから行く約束をしていた。
「……いいえ」
「その女神像は慈愛に満ちた笑みで胸を張って下界で暮らしている俺達を見守っていると言われている。君はその女神の生まれ変わりと言われているんだろう? 人を象徴する女神の生まれ変わりならきっと君は人間として一番完成しているんだから」
「でも女神マギアの髪は綺麗な黄金色の髪の色をしていたと言われています。私の髪は銀色ですよ?」
女神マギアの髪の色はセシリアの髪と同じ綺麗なブロンドだ。孤児院の食堂に飾ってある女神マギアの絵を毎日見ているから。
「だが君の目の色は女神マギアと同じ深い深い蒼色の目だ。まるで全てを見通すような。そして君の髪の色が銀色なのもきっと意味がある」
私はそんな凄い人間じゃ無い。でもその言葉は素直に心に響いたし嬉しかった。なんだかんだ言ってもこの綺麗な髪は自慢なんだから。
「だから君はもっと胸を張って生きて行くべきだ。勿論その髪も。あとプレゼントはあれだ、君の将来への祝いとそれと現人神と言われた君への出資だと思ってくれ。君は将来必ず大きな事をする人になるから。そしてそれ以前に子供は国の宝、お嬢ちゃん達みたいに立派な子だったらなお更な話だ」
その豪快な言葉に熱いものがこみ上がってきた。でもここはきっと泣くとこなんかじゃ無い。それに先生も言っていた、泣くより笑ってって。笑えば幸せが必ず来るって。だから私は、
「ありがとうお兄さん、なんだかとても元気になりました」
笑った。それもとびっきりの笑顔で。
あと私の中で筋肉だるまからお兄さんに昇格した。
「子供は笑顔が一番だ、じゃあこの指輪は袋に入れて置こう。はい、お嬢ちゃん」
「ありがとうございます優しいお兄さん」
体に似合わず丁寧にラッピングされた袋を受け取り鞄の中に入れた。
「先生、喜んでくれると良いな」
「絶対喜んでくれます。本当にありがとうございましたっ」
先生のプレゼントを選ぶだけのつもりだったのに思わぬ収穫があった。それはきっとこれからの価値観を変えてくれると思う、とってもいい経験。
「あぁ、それろあともう一つ」
お兄さんは横に置いていた大きなカバンから一枚の紙を取り出して渡してくれた。
「これはなんでしょうか?」
「そのクラダリングの他の付け方だ。俺は昔冒険が趣味でいろんな場所を回った事があるんだがその途中で遥か極東の国に行った事がある。その国には風水と言う考えがあってな、それも入れると更にその指輪の付け方のレパートリーも広がる。参考にしてみるとおもしろいだろう」
「何から何まで本当にありがとうございます。」
私は深々とお兄さんに頭を下げた。セシリアも私につられて頭を下げる。
「いいってことよ。それじゃあこれからも頑張れよ2人とも。あと金髪の君ももっと自信を持って良いんじゃないか? もっと胸を張って生きれば人生は良い方向に行く。そんなもんだ」
「……はい、頑張ってみます」
……私からしたらこれくらい臆病なほうが好きだけどいつかは治さなくてはいけない。寂しいけどいいタイミングかもしれない。これから大きくなったら城下町に来る機会も増えるだろうし。
「余計なおせっかいだったかな? じゃあ王都に来たらまた寄ってくれよな」
「はい、では失礼します」
もう一度感謝の意を込めて頭を下げてゆっくりと頭を下げそれからその場を後にした。
~暫くして~
「さてさて、女神マギアの生まれ変わりと言われている少女にも出会えたし今日は充実した一日になったな。そろそろいい時間だし今日は店じまいとすっかな」
そう言って男はのそのそと立ち上がって商品だろうアクセサリーを一つ一つ丁寧にカバンに入れ始めた。そんなところに、
「あ、いました。おーい」
その女性のものだろう、高い声に片付けをいったん中止して声のする方へ振り向く男。その方向には2人の女性と一人の男性の姿があった。
「フィリップさんまたこんなところでアクセサリーの販売? お金なら沢山持っているのに」
その中のうちの一人の女性、とんがり帽子に長い杖とマント。いかにも魔法使いといった風貌の身長低めの女性が溜息まじりに話した。
「おう、お前らか。まあな、これはアルケミスト(錬金術師)としての楽しみの一つで趣味だからな。好きにやらしてくれよ。それに今日はとても面白い事があったんだ」
「面白い事ってなんですか?」
とんがり帽子をひょうこひょこと揺らし若い女性が追及する。
「何年か前に近くの山が大火事になっただろう? その時ナターシャが王様に頼まれて雨乞いに行った時お前が雨乞いしても雨降らなかったのに女神マギアの名を継いだ少女が雨を降らしたじゃないか。確かフルネームはマギア・ドゥミナスだったかな?」
「ちょっと、その私が雨乞い失敗したみたいな言い方止めてくださいよ、ああいう事をするのは普通プリーストの仕事、ウィザードの私にやらせても成功率そんなに高くないんですから、全く」
口をぷーっとふくらましてとんがり帽子のナターシャと呼ばれた女性は拗ねた。
「いい年して頬を膨らませても痛いぞナターシャ。それでその女の子がどうしたんだフィリップ」
「私はまだ21ですっ!!」
表情豊かに怒るナターシャを横目に今度は喜怒哀楽の薄そうな茶髪の青年が追及した。
「その女の子が今日俺のとこに偶然ながら買い物に来たんだよ。とても礼儀正しくて幼いながら綺麗に育っていたよ、あれは将来絶対美人になるだろうな」
「フィリップ、お前ロリコンか?」
「ロリコン?なんだそれ」
カバンに再び商品を詰めだしたフィリップは軽く笑いながら話半分で流した。
「それでどうだった? その少女はお前が見た感じ」
「まだ使いこなせないのだろう。だがあれは魔力だけで言ったら魔王を軽く超えている。悪いがナターシャ、お前以上だ」
「えー、私仮にも世界救ってるんですけど……」
「だがそれは本当の話かいフィリップ? ナターシャの魔力は2年前ではともかく今では魔王より上なんだぞ。それにナターシャは人間の中でもトップクラスだぞ?」
ナターシャと別の長身で赤い髪、それに少し耳のとがった女性が今度は話始める。
「トップ争いとは言っても隣国の連合国の大魔導師、ラファエルとは大きく魔力、実力共に離されているって話だけどな」
「あんな魔法に取りつかれた変態魔導師と一緒にしないでください、それに彼は私より3つも年上なんですよ」
「ふーん、でも3年であいつに追いつけるとは思えないけどね」
「な……フリーダさん、貴方ラファエル、あの変態の味方なんですか!? フリーダさんなんて魔法は全く使えないくせに!」
フリーダと呼ばれた長身の女性は笑いながら、
「私は生粋のハンター(狩人)だからね、確かにこの中で唯一魔力は持っていないがそんなものには頼らないさ、無いものねだりはしない主義だからさ。でさフィリップ、その女の子とナターシャは兎も角ラファエとはどっちが純粋な魔力が上だと思う?私は魔法が使えないから感知にも疎いからね」
「純粋な魔力ならほぼ互角……いや、もしかしたらマギアのほうが上かもしれない。そこに経験と実力が加わればラファエルが圧倒的に上だろうけど。そもそもラファエル、あの男には一度しか会ったことがない。恐ろしい奴だとは思ったが」
「あれ?マギアって子、今何歳なんだ?」
「山火事の時が9歳で3年前だから今年では12歳になるはずだよ。見た目もそれぐらいだったしな」
「その歳であの大魔導師ラファエルの上を行く……言葉通り化け物だな」
「そんな言い方するなよ、とても綺麗で可愛らしい女の子だったぞ?」
「私はあの変態魔導師に負けたとは思ってませんからね!」
文句垂れ流しのナターシャを横目にフィリップは商品をカバンに詰め終わったらそのカバンを背負って、
「彼女は女神に選ばれなにかの宿命を背負った子なんだ。俺達に出来ることは彼女が悪い道に進まないように見守ることなんだよきっと。だからそんな怖い顔するなってノエル。そんな顔で睨まれたら無条件で悪の道に進みそうだ」
「五月蠅い、元からこんな顔だ」
「ハッハッハ、それは悪かった。それで今更だがなんの用だお前ら? 3人揃いも揃って」
そのフィリップの質問に答えたのは怖い顔のノエル、
「国王からの召集がかかった。北地区の魔物が狂暴化したから早急に駆除だそうだ」
「そんなことにわざわざ俺達全員に召集かけたのか? そんなのお前一人で充分だろ」
「俺もそう思ったが、おいナターシャ」
「はい、ここからは私が説明します。狂暴化した魔物はまるで統率能力の高い何者かが統治していると思われます。2年前の魔王ほどでは無いと思いますが十分用心しての王様の判断でしょう」
「国王も用心深い事で。でも大丈夫か? 俺達全員がこの町を離れても。4年前ほどでは無いとはいえ、この町の近くに魔物は住んでいるんだ」
「この国の兵士も無能じゃないだろうし3日くらいあけたところで大丈夫だろうさ。どうしたフィリップ? らしくなもない」
「ちょっと胸騒ぎがしただけだの軍人のカンだよ。うん……そうだな。さっさと終わらせてさっさと帰って来よう。出発はいつだ?」
「今から出る。王が馬車を出してくれるそうだ。眠いなら馬車で寝ろ」
「特別眠くは無いがそうしようかな、じゃあ準備するからいったん家に帰る。10分後に北門で集合でいいか?」
「問題無い」
「分かりましたっ!」
「オーケー」
「それにしても久しぶりですね、このメンバーで旅なんて。2年前の魔王討伐の頃の旅を思い出しますっ」
歳相応の興奮に思わず思いっきりの笑顔になるナターシャ。だけどその幸せは、
「そうだっけ? ああそうか、あれから何回か旅したけどナターシャだけ誘って無かったな」
「え、それ本当ですかっ!?」
「冗談」
「そんな冗談いりませんっ!!!」
その日、平和な王都に優秀な魔法使いの悲鳴が響いたそうだ。
~市場のはずれ~
「さっきのお兄さん凄く良い人だったねセシリア」
笑顔も態度も素敵な人だと思った。それなのになんでセシリアはこんなにあのお兄さんを怖がるのだろうか。お兄さんから離れても私の後ろを歩くセシリア。本当にどうしたの?
「どうしたのセシリア? 知らない人と長話して疲れた?」
「ううん、それもあるけど……あのお兄さん……凄い魔力を感じたんだ。マギアちゃんは何も感じなかった?」
………………、
「特に何も。え、あのお兄さんが?まさか」
「うん。うまく言葉で表せないけど……魔力が抑えきれていないって言うのかな……魔力を持つ人はたまにいるけどあの人は今まで感じたこと無いくらいに……とにかくそれが怖かった」
それは大きすぎる魔力が怖すぎるわけでお兄さん自体が怖いわけでは無いのだと思う、たぶん。
「強い魔力かー、じゃあなに? あの人やばい人? 凄い人?」
でもいい人だったよね、あのお兄さん。
セシリアはこの世に魔力を授かって生まれた5パーセントの中の人間、しかもセシリアは才能がきっとあるんだろう、この歳で他人の魔力を感じる事が出来るみたいだし小さい炎ぐらいなら起こす事が出来る。世間は私を神の使いとか現人神とか勝手に言うけど才能はセシリアの方がよっぽど魔法に愛され恵まれている。私はそう思う。
「大丈夫だよ。セシリアが感じたのはお兄さんの魔力でしょ? 私はあのお兄さんは良い人だよ。私が保証する」
今日あったばかりの私に保証なんかされてもあのお兄さんも迷惑だろうけどね。人を見る目があると信じたい。
「それにもう別れたんだからいつまで怖がってもしかたの無い事だよ。ほら、もうすぐ日も暮れるから早く買い物済まそうよ。あと何が残ってる?」
少しばかり怯えていたセシリアは少し持ち直して先生のメモを一つ一つ声に出しながら確認していた。
「えっと……後はろうそくだけだよ。ろうそくは何処に売っているかなわかるマギアちゃん?」
朝と共に起きて日没と共に寝る。孤児院ではなくてもろうそくは高級品。折らないように大切に持って帰らないと。
「確かろうそくはもう少し市場の奥の方だよ。もう少し歩くけど大丈夫?」
今日一日歩き回って知らない人と話してセシリアが疲れ果てているのは見て分かる、彼女はきっと隠しているつもりなんだろうけどもうずっと一緒に暮らしているんだから。だけどそんなセシリアは、
「大丈夫だよ、私はマギアちゃんよりお姉さんなんだから。マギアちゃんこそ大丈夫?」
そんななんとも微笑ましい光景に私は、
「大丈夫だよ。じゃあ行こうか」
思わず微笑んでしまった。仕方がない。
「なんでマギアちゃん笑っているの?」
どうしよう、顔が元に戻らない。思わず両手で顔を抑える。駄目だ、戻らない。
「な、なんでもない。さ、行こうか」
私達が蝋燭を手に入れた頃には夕陽が沈もうとしていた。この季節は日が沈むのが早い、だけど少し急ぐ事にはなるけどなんとか日が沈むまでには帰りつくかな。時間計算に問題なはい、はず。
「久しぶりの城下町、楽しかったねマギアちゃん。次はいつ来れるかな?」
「きっと冬が過ぎて春が来てからかな。今度は先生もつれて一緒にいこうね城下町」
両手に沢山の荷物を持って私たちはフラフラと、それでも満足な気持に溢れて来た道を戻っていた。もうすぐで朝に入ってきた大きな門だ。それをくぐって30分も歩けば孤児院に帰り着くでしょう。随分と遅くなっちゃったし先生に怒られちゃうかも。
「うん、今度は絶対に3人で行こうね」
「えへへ、今から楽しみだよ私」
そしてもうすぐ城下町の門をくぐろうと言う時だった。次回の城下町への期待を膨らませていた、次の角を曲がれば門が見える、まさにそんな時だった。
「……なんか人が多いねマギアちゃん。一体どうしたんだろう?」
セシリアの言うとおり門の周りには不自然な人数の人が集まって……一体どうしたんだろう?でも、
とても嫌な予感がした。
私たちは小さい体を利用して大人の足の間を潜り抜けて門へと近づく。なんだろう……大人の人たちが話している言葉が耳に突き刺さる。
「火事らしいぜ」
「あの森の方向って確か……」
「ああ、孤児院がある方向だ」
「っ!!!」
後頭部を鉄の棒で思いっきり殴られたような衝撃、それほど恐怖し頭が一瞬、真っ白になる。。冬なのに嫌な汗は止まらないしさっきまで確かに感じていた足の痛みなんてもうどこかに吹き飛んでいた。それでも私はセシリアの手をぎゅっと握って決して離さない様に足の間を掛けていた。怖くて恐ろしくて……出来る事なら早く確認して安心したい。その目で見て……
「………………なんで、どうしてっ!」
絶句したってまさにこんな時に使うんだと思う。足が震えるけどこれは疲れからのものじゃ無い、意味を成す言葉は出て来なくて血の気が引きめまい、気をしっかり持たないと倒れそう。
私達の孤児院のある森は広範囲にわたって山火事を起こしていた。
「どうしてのマギアちゃ……」
セシリアの言葉で辛うじて我に返った。そうだ、こんな事している時間なんて無いんだっ!
「セシリアっ、行くよっ!!」
「な、んで……」
「はやく、急いでっ!!!!!」
まさか疲れ果てていた私にこんな大きな声が出せるとは思わなかった。周囲の大人の人たちが私を見ているけど私から言わせてもらうならそんなのは目に入らなかった。
「走るよっ!」
「う、うん……!」
私達は重い荷物を捨てて孤児院に向かい走り出した。
余談、考察
女神は金髪、マギアは銀髪
現人神と呼ばれていますが違いも多い。
売店のお兄さん。
豪快でイケメンのお兄さん、良い人。アクセサリーの趣味はとても良いアルケミストでロリコン疑惑あり(ないです)
魔王討伐
二年前のお話、勇者ご一行は四人みたいです。
魔法に取りつかれた変態魔導士
そのうち出ます、変態です。
山火事
怖いですね。