29.疾龍と炎龍
赤髪の少女と比べれば背の低い薄緑色をした髪の少女が横に並んで少しばかりしか灯されていない広い道を歩く。
私とシルフィちゃんが共に行動することになったんだけど黙っていてもつまらないからなぁ。それにシルフィちゃんは元気で何時も喋りたいみたいな性格だと思ってた故に驚いちゃうなぁ。
そうだ!!ここは私が話を持ちかけよう!!
「シルフィはあの主……?のことどう思っているの?」
「竜人君だね!!うーん。面白い事に巻き込んでくれる人かな?」
「す、好きだとかいう感情は……?」
「無いかなぁ。イフは?」
「わ、私ですか!?無いですよ!?う、うん!!絶対!!」
聞いたら聞き返してくるなんて。
「じゃあじゃあイフはシルフィのことどう思っているの?」
そ、そう来たか!!
「えっと。可愛くって……元気で……素直で……って言わなきゃダメ!?」
言おうと思えばいくらでも出てきそうなものなんだけどいざ本人の前でとなると緊張しちゃうなぁ。
「えへへ……シルフィ嬉しいなぁ」
「じゃあ私の事はどう思っているの?」
聞き返してきたなら私も聞き返しちゃえ!!
「え!?イフはえっと。胸がでかい!!とってもお姉ちゃんっぽい!!あ、でも竜人君の前じゃ気を抜きすぎている感じがするなぁ。そうそう、可愛い!!あと引っ込み思案かなぁ?」
「凄い言ってくるね」
「もっと言えるよ!!」
「うぅん。これぐらいでもう満足だよ。ありがとう」
意外と観察しているんだな。シルフィも。
それに竜人君の前じゃ気を抜きすぎている感じがする……かぁ。そっか、確かにそうかもしれないなぁ。あと引っ込み思案……こればっかりは直せそうに無いなぁ。
「よおし!!イフの胸を揉みしだいちゃうよ!!」
「えぇ!?やめてくださいぃ!!」
「やめないもーん!!」
なんでこうなっちゃうの!?と、とりあえず逃げよう!!あ、でもシルフィちゃんは疾龍だしすぐ追いつかれちゃうから。
「うわ!?」
「揉んじゃうよ〜!!」
やっぱり足速いなぁ。もう追い抜かされた上に通せんぼされちゃったよ。
……あれ?おかしい。私達以外の足音が聞こえる?止まった……とても嫌な気がする。
「シルフィ!!危ない!!」
「え!?」
咄嗟にシルフィを押し倒す。
「イフ!!」
胸の中心から臓器、骨を貫通して黒い何かが私の中を通って……。
「う……」
「凄い危機察知能力じゃないか。だがもう立ち上がれないだろう?死ぬ前に早くサイヴの元へ持っていかなきゃな」
暖かい血が体全体を伝って行く。それにおかしい。立ち上がれない……なんで?
「ようし。次はシルフィだ。君なら俺を知っているだろう?なぁ?」
「……奴隷商売人リムグレフ」
「覚えていてくれてたんだな?」
「記憶から消える訳が無い……あの日の厄災を忘れるわけが無い!!」
奴隷商売人リムグレフ?過去に若い女性を転移魔法による大量拉致をし、奴隷売買を行ったと言われる罪人。そして犯罪行為を行う組織の幹部。それがなんでこんなところに。
「そうだよなぁ。まぁいい。それにお前らは良く出来た外見だ。すぐに買い手が見つかるだろうよ」
……させない。絶対に。
「おぉ……立ち上がるとはなぁ。噂通り猫人と来た。こりゃあ高く売れるなぁ!!」




