28.二人だけに
「あ、そうだ」
唐突すぎるな、なんか珍しいな?
「どうしたんだ?」
「私は主が好きですが主は私のこと好きなのかな〜って」
「本当に唐突だな」
それに赤面しながら言っているしここら辺は本当に咄嗟に思いついたとこを呟いただけなんだなと思わせる。
「ど、どうなんです?」
一途に選んだりはしないが唐突すぎると何も出て来ないものだな。全員好きなんて洒落た事も言おうとは思わないしそうは言っても皆良い奴だし優劣は付けれないなぁ。
「勿論……」
「勿論!?」
「あ、これがその装置か」
話を逸らせる為に俺はその属性魔力によって作動する装置の話題へと切り替える。
「へぇ。ここに属性魔力をね」
「どうなんですか?ねぇどうなんですか!?ねぇってば主!!」
「それじゃあ戻ろうか。みんな待っているかもしれないしな」
「酷いです!!」
俺は早歩きで入口へと戻ろうとする。
するとメイデは両腕を広げ通さんとばかりに俺をじっと見つめる。
そして腕の隙間からくぐり抜け、変わらぬ足取りで入口へ向かう。だがメイデもメイデ、負けじと服の端を掴んで離そうとしない。
「せ、折角二人になれたから……その……気になっていること根こそぎ聞こうかなって。ダメですか?」
正確には俺とメイデ、そして俺の腕に絡みつくウロボロスの二人と一匹が居る訳だが。
「別にダメって訳じゃないんだが、質問を簡単にしてくれないか?」
「簡単に……簡単にかぁ」
俺とメイデはその場で止まる。
ただのお喋りなら戻った先でもできるが、メイデが求めているのはこの条件で話したいからだろう。ならそれに応えてあげたいのだが難しいのはやめてくれと言ったところで言う気がするんだよな。
そして俺らはゆっくりと歩き出す。
「じゃあ私の事嫌い?」
そんな訳ないだろ。でなければ俺は話したりもしないし目を一度たりとも合わせようとはしない。嫌いな奴は嫌いだしそれ以外なら普通に接するだけだからな。結局そこはこの先ずっと変わらないんだろうな。わかりやすいというかなんというか。
「まぁ普通……」
「じゃあ主は胸のサイズはリベアみたいなぺったんこか私ぐらいかイフぐらいのどっちが好き?」
つまり貧乳か普通か巨乳かを聞いていると。実際どっちでもいい。スタイルとかでは決めないもんなぁ。それにそこまで発情するとかそういう気持ちが湧いてこないし。
「胸とかでは決めないよ。序にいえば背でも決めないかな……でも肥満気味な人はちょっと苦手かも」
「私って肥満気味!?」
「お前はもうちょっと食え!!それ以上痩せたら何も残らなくなるぞ!?」
「そうかなぁ……でも痩せているってことだよね?じゃあこの姿をキープしよっと!!」
「いや、少しは体重を増やした方がいいんじゃないのか?」
「乙女に向かってそれは無いよ?私美味しいものとか食べるといっぱい食べちゃうから。だからタニアにも美味しいもの作るのは嬉しいけど量を少なくしてって伝えてあるぐらいだから」
まぁそれならそれでいいのだが。あと関係は無いが確かにタニアの作る飯は美味い。
「じゃあ主?」
「あ、おう。どうした」
「この際だから言うね?」
「あぁ。いい場が奇跡的に設けれたからな。答えられる範囲なら答えるよ。と言っても答えられない範囲なんて無いだろうし俺や皆とは、特にメイデとリベアと常に行動していたような俺だ。大体なら直感で分かるんじゃないのか?しかも心を読み取るという謎の技術まで身につけているわけだし」
今思えば転移してきたその時から、風呂、便所、寝る時以外は常に共にあるな。
「そうなんだけど。えっとね?私がもしなんらかの、例えば操られたりして主を傷つけるようなことがあったら私と戦って。そして躊躇わず殺してほしいなって思っちゃって……。どう考えても可笑しいよね、私、主と一緒にい過ぎて頭が混乱してきちゃったのかな?……この話は終わり!!もうすぐ入口に戻るよ!!」
メイデは光の射す方に指を向ける。
かなりメイデにしては意味あり気な言葉だったがそれがメイデの望みなら叶えてあげたいなと思ってしまう自分がいることに驚いている。そんなことが有り得てしまうと言えばあの夢が正夢にならない限る時ぐらいだろう。
そして出口に着くとそこにはリベアとぐったりとしているイフとシルフィが居た。どうやら二番乗りのようだがミイラの子と浮翼のリメルの姿が見えない。
「主〜!!大丈夫だったか心配だっただよ!!良かった……でも主とメイデちにはメイリが付いているってアリファから聞いたんだけど」
「メイリは身体を取り戻して滅龍賊へ帰還させたよ。っていうかそうするしかなかったって感じか?で、イフとシルフィは大丈夫なのか?」
両者汗ダクでシルフィは最早胸に申し訳程度に巻いてある大きめのタオルとズボンしか無いからな。とんでもない激戦を繰り広げたんだろうと予想が容易にできる。




