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26.幽霊と肉体

一言も交わさずにただただ前へ歩き続けていた時だった。


「……ねぇ」


「は、はい!?」


ヤバい、挙動不審になってしまった。いきなり話しかけられると此処まで恐ろしく感じるんだな。


「少し、驚くかも」


先の見えない暗い道の先に何かの人影が見える。この場合じゃほぼほぼの確率で死体で合っているのだろうけど驚くってなんだ?

この先に待ち構えているそれがメイリの言うものなのか。


「……!?」


足を止めることなくその驚く物とやらに近づく。戦えるように、忍び足で。


「……メイリか?」


一瞬、目を丸くしたあと、目を擦りもう一度見る。

目に映ったのは不透明じゃなく、実態を持ったメイリの死体だった。確かに驚きはした。


「私の、身体……」


今、俺の後ろについてきているメイリは幽霊の状態のメイリで、目の前にいるメイリはその器になるものか。


「メイデ、とりあえず……!!」


クソ……頼み事判定か!?喋れない!!


「うん。そうだね、傷付けずに保護するんだね!!」


「なんで分かったのか……」


「私と主はいついかなる時も一心同体、運命共同体!!主が私に要求したいことがあるなら次からは撫でても良いんだよ!!なんでもしちゃうから!!」


何考えているのか全くわからんがそれでも理解してくれたのは有難い。

とりあえずこの肉体がある方のメイリをアリファに転送してもらうか。今あの死体に乗り移るとなれば腐敗も進んでいるし肉体自体を修復した方が良さそうだな。死体だと回復は出来なかったりするのだろうか?


「あ……あ……あぁ……」


「どうした!?……!!」


頼み事か、下がれ。と言いたかったがどうも時と場所も選ばず俺を拒んでくるみたいだ。


そして音もなく倒れる。一体何が何だか分からないが一先ず俺達で転送させれるばっかにしなければな。


「私……の……身体だ……」


すっと起き上がるとその死体目掛けて飛び掛る。そして中に吸い込まれるようにして一体化する。


「動きにくい。にくい……憎い。私を、殺して、操った、そいつが、憎い」


腐敗したその身体を操り、両腕を使い頭を掻きむしりながら言う。それに、声までが掠れていて普通に恐ろしい。


「動けるのか?」


「驚かせて、ごめん、ね?でも、身体は……まだ操られているみたい。ごめんね……」


そう言い、一体化したメイリは俺に襲いかかると同時に俺は後ろへ下がる。

回避は成功した。だが、降りかかった右腕はすっぽりと床に突き刺さりヒビが入る。威力が段違い。そう思わされた。


「どうやら、命令に、侵入者の駆除と、もう一つ、体内に入ったものを出さない。があるみたい。本当に……憎たらしい」


そう掠れた声で言うが、攻撃の手は一切緩むことなく襲い掛かる。そして既に床や壁が既にボロボロになっている。無論、メイデも俺も避けるだけで精一杯だ。それでも命令が続く限り永遠に続く。あちらが体力という上限が無い死体だ。まともにやり合ったところで既に勝機は無い。それに此処じゃ暴れようにも狭すぎて暴れきれない。


「主をこの戦いが終わるまで、蛇としていさせてくれ。そして、噛ませてくれ」


……そうだ。俺はメイリを止めればいい。四肢、胴体、臓器、頭。それはウロボロスが齎してくれる再生の範囲内。瞬きをしている間に生え変わっているのだ。なら、恐れる心配は無い。


「懐かしい感覚だな」


鋭く尖った牙が腕を噛みちぎるが如く掴んで巻き付く。そして傷口から血管へ血流を通して体全体に再生させるための液を流し込んでくれているのが分かる。

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