21.記憶の欠陥
何故俺が無幻という役を担ったのか。どうして俺が龍に好かれやすいのか。この世界は俺に何をするよう仕向けたのか。結局考えてみても人智を超えすぎていて全く理解が追いつかない。それどころか知れば知るほど混乱していく。第一世界、第二世界があったこと。この第三世界はゲームを主題として作られたこと。俺の少量の記憶の欠陥。何故俺の転移特典をそうしたのか。考えても分からないものは分からないなら仕方が無いと割り切るのも良いが俺はどうしても答えが知りたい。
冷たい風を斬りながら白い羽根に包まれたまるで天使の様な神々しささえある龍と、それと対照的に真っ黒で初対面ならまず言葉を失うだろうその容姿からは、悪魔のような邪神のような禍々しささえある龍が並行して空を飛ぶ。
「主、緊張してる?」
「緊張はして無いな。それよりもメイデはどうなんだよ」
「うーん。私も変身したいなぁって思って」
変身したいって……確か聖龍は妖人。どんな容姿になるのか分からないがどっちにしろ相当強そうだな。妖怪的な存在になるのか?それとも妖精?エルフ的なそういうのになるのか?創作物の世界じゃ耳が尖っていて、スタイルが良くて。羽が生えてたりして。妖美で。
「シルフィも変身したい!!シルフィは兎人らしいから、シルフィにはピッタリだよね!!うさ耳生えるのかな?モコモコしてるのかな?」
シルフィはシルフィで何故か期待を膨らませているようだ。実際今から行う行動はその原因である解迷の疑龍サイヴを倒すことなのだが。
「まぁ別になるならないはどうでもいいが、今何しに行っているのか分かっているのか?」
俺は二人に一度本来の目的を問うことにした。そうでもしないと不安で仕方がない。
「えっと。サイヴっていう龍を倒してどうして変身できるようにさせたのか。とかを聞き出すんだっけ?」
「まぁ、そうだな」
その他にも。っと付け足して目的を説明してきた。
意外にも二人はちゃんと分かっていたのか。疑ってすまないと心の中では謝っておこう。
「そういえば君の名前は永遠に名無しなのか?」
タニアがどうしても知りたくなったのか質問をしてきた。
正直に言うと俺が前の世界にいた時にはちゃんと名前はあったしあだ名だってあった。だがそれが思い出せなく、そのまま名前が空白のまま過ぎているだけなのだが。まぁ俺もこのままなのかは分からないが、俺は名前は欲しいと思っている。その方が色々と便利だし。何処かから名前を取ってくるか?この世界の有名人的な偉人的な人から。
「……まぁ今のところはいらないかな」
俺はそうタニアや他の仲間に告げた。
「そう……少し寂しいな」
「そうか?ギルド名も名無しのギルドなんだし別にいいんじゃないのか?」
「よし!!この騒動が終わったら主に名前を付けよう!!」
名前を付けるって……ペットじゃねぇか。
「うむ。吾輩も賛成だ」
今までずっとベタっと横になっていたレイルが起き上がりそう言った。
結局俺はこの騒動が終わった後、名前を付けられるらしい。勝手にしてくれと言わんばかりの対応をする。




