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10.鍛治職人

「さて、錆を落とすか?」


ウロボロスは再び腕に飛び移るとそう言った。

錆か、まぁ落とさないとどうしようもないなら俺は落とすかな?でもなんかやっぱり落とすにはそれ用の道具とかやっぱりあるんじゃないのだろうか?


「まぁそうだな、とりあえず落とさないとどうしようもないし」


「なら決定だな」


「でも道具とかはどうするんだ?それに俺は錆を落とした事なんて無いぞ?」


「それならレイルが詳しいはずだろう」


何故レイルが?特にそんな様子じゃ無かったような。

コンコン。っとノックをする音が聞こえる。


「あ、えっと……」


ドアを開けるとその先にはレイルが居た。


「その剣の錆、落とさせてはくれないか?」


「別に良いけど」


レイルがすたすたと歩いてテーブルに置いてあるその錆びた剣を手に持つ。


「吾輩、こう見えても鍛治職人だからな。困ってるなら手を貸さないとな。それにこの事は皆には内緒にしていてくれ、タニアは知っているが」


詳しいというのはそういうことだったんだな。それに地味に隠していたんだな。


「言った通りだろう?」


「あぁ、そうだな」


「ウロボロスは気づいていたんだな」


「真夜中に微かに鉄を打つ音が聴こえたからなんとなく」


「バレてたか……」


確かこの空間内の部屋は完全防音だったはずだけどウロボロスには聞こえていたんだな。


「そうだ、吾輩の部屋に来るか?」


「ちょっと気になるな」


「では着いてきてくれ」


レイルは錆びた剣を白い布で包み、歩き出した。そしてその後ろを俺が歩いている。

すぐ隣がレイルの部屋だ。


「お邪魔します」


「汚い部屋だが上がってきてくれ」


汚い部屋……では無かった。

結構綺麗にされており、壁一面に自作の武器だと思われる物が綺麗にずらりと並んでいた。


「タニア以外に見せるのは初めてでな。こちらが鍛冶場だ、で、こちらが吾輩の就寝部屋だ、因みにトイレと風呂は此処だ」


レイルがパパっと自分の部屋の紹介を済ませると鍛冶場のドアを開けた。


「ささ、入って来てくれ。君に見せたいものがあるんだ」


俺は言われるままドアの先に入った。そのあとレイルは後ろから入る。

様々な道具が壁に掛けてあったり魔法で制御されているような溶解炉などがあったりした。


「主、見てくれ……」


俺は振り向くとレイルのその身体に言葉すら出なくなっていた。

レイルの身体は禍々しい何かに取り憑かれているような、言うなればそれは悪魔にでも取り憑かれているような混沌とした翼が生えたその姿で俺の目にうつった。


「吾輩の魔人化状態の時の姿だ。一度は君には見せなければならないと思ってな。ちょっとエッチな事を期待したか?」


「魔人の力は制御できているのか?」


「……期待してたのかしてないのかを先に答えてくれ」


してない……なんて言ったら失礼だもんな……だと言ってもそんなこと思ってやがったのかこの変態。と思われても嫌だしな。

ウロボロスは同情の眼差しを俺に向けてくる。実際にそれが同情の眼差しなのかは知らないが。


「まぁ良い。期待してたということにしておこう。魔人の力はうまく制御できているよ。じゃあこれ、預からせてもらうね」


レイルは錆を落とす作業を始め出した。

俺は迷惑になるとあれだから、とレイルの部屋を出て、自分の部屋のソファにまた寝転がった。

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