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4.異世界に来て初めての借金

「良く寝たなぁ」


「快眠を誘うよう、その液を注入しましたから」


「そんなことも出来るのか……」


「万能ですから。それと、寝起き時の頭痛を和らげる回復液は流しました」


本当に万能だな……なんか凄い。凄いを通り越して怖い。

ともあれ今はすこぶる体調が良い。時間は午前9時か。


「外に出てみます?」


「良いな。それ」


一旦久しぶりに陽を浴びることになったので、とりあえず……火の領地まで行くか。


俺とウロボロスは開けた空間から外に出る。

緑に溢れ、陽のあたりが良い場所に出た。草原、っと言ったところか。そしてすぐ近くには少し上を見上げると、過去にイフが閉じこもっていた塔と奥の方には城があった。もう完全に修復できていたのか。少し前まであんなに荒れてたのに。


「あ、貴方は!!」


「……?」


「火炎の宝珠を取り戻してくれたあの!?」


「あー。おはようございます」


「ありがとうございます!!おかげでこの通り、人で賑わう城下町を再興出来ました!!」


イフの居る場所を信用して教えてくれた男の人だ。


「思う存分この国を楽しんでいってくださいませ!!」


「あはは……」


俺は小さく礼をして散歩をするように賑わう街を歩く。


「主、先程の人間は」


ウロボロスが頭を上げて訪ねてくる。


「親切な人。としか言いようがないかな?」


「ほう、なるほどな」


納得したら頭を下げた。


「ま、待って下さいぃ」


聞いたことのある声だな。


「マスターさん!!」


「イ……!?」


ダメだダメだダメだ……火の領地にイフが居るなんてバレたら散歩どころじゃない!!


「はぁ、はぁ。お出かけするなら私に一声かけて下さいよ……」


イフが目の前で大きく呼吸をする。


「ただの散歩のつもりだったんだが」


「いやぁ随分と崩壊する前より良くなってますね」


イフはパッと自分の身体全体を猫人化させて見せた。


「ど、どうです?私、やっとコツを掴んできたんですよ!!見てください!!この愛らしい肉球!!この猫耳!!この尻尾!!」


もう全身を猫人化できるなんてな。まぁ時間的には普通に経っているし、慣れて出来るようになるものなんだな。


「これならバレませんね」


バレるだろ……流石に。でもまぁ別に良いか。


「懐かしいというか全く別のものと言いますか」


「まぁ崩壊してた時の面影がまるで無いからな」


俺達は過去にイフが閉じこもっていた塔のところまで来た。


「懐かしいです!!今は宿屋として機能しているみたいですね」


「そうみたいだな。まぁなんか温泉とかあったし色々便利なんだろう」


俺達は塔に入ることなく、また散歩を開始した。


「……綺麗だなぁ」


そういうのに興味あるんだ。買ってあげれるなら買ってあげたいけど生憎イフも俺も金は無い。

見るだけ見るか。冷やかしみたいになっちゃうけど。


俺は深くフード被った男性が売っている宝石のブレスレットをイフの少し後ろから見た。


「赤い宝石のブレスレット?」


「そうそう、これですよ!!火属性の力をひしひしと感じます」


「お客さん、これはメテオルビーと言いまして、持つだけで火属性値が格段に上がり、持つものには不思議な力を与えるパワーストーンと呼ばれています。如何です?」


何処かで聞いたことのある声だな……。

商人は続けてその隣にある黄色い綺麗な宝石を使ったブレスレットをさす。


「こちらはドラゴトパーズと言いまして、龍属性値が上がる物となっております」


今は普通の人の状態だぞ……それを知っているのは限りなく少数……商人をやっている。確か前にレクトに幽霊が見えるようになる目薬を売ったのはリビュドだった。もしかすると。


「リビュドか!?」


「正解!!流石だね、どうしてわかったんだい?」


「なんとなく。というか前はありがとう」


「礼なんていらないよ、僕は商人。君から一生のお願いを買っただけだからね」


なんかよく分からないこと言い出したんだけど……まぁつまりそういうことなんだな、よくわからん。


「まさかとは思うけど冷やかしに来たんじゃ無いだろうね?」


「あ、そ、そういうつもりじゃ……」


イフがあたふたしだす。


「彼氏さん?どうするんです?」


「か、彼氏だなんて……マスターさんは……か、彼氏じゃないですよ……」


「あ、そう?結構良い雰囲気出てたよ?」


リビュドがニヤっと笑うのを確認する。


「因みにおいくらで?」


「お?メテオルビーが4万。ドラゴトパーズも4万。安すぎるぐらいなんだよ?」


「ほう、確かに本物、効果もちゃんと期待できる。この安さは異常だ。これだと逆に疑ってしまう……この調子だと数分で完売するだろう」


「へぇ、そちらの蛇さんはお目が高いね。生憎だけど蛇さん用のアクセサリーは無いんだ、ごめんね?」


ウロボロスが言うほど凄い物なのか……買わねば損ってレベルか。

イフは少し赤らめる。


「じゃあ交渉成立だね」


「何も成立してないよ!?」


「メテオルビーとドラゴトパーズは君とイフさんのものだ!!これは借金として扱うからよろしくね〜。あ、そうそうフレンドリクエスト送信しといたから、そこから借金返済よろしく。現金は確か直接会ってからしか渡せないから、珍しい魔物の素材で良いよ。っていうか僕からしたらそっちの方がありがたいしね。それじゃ、借金返済頑張れ〜」


リビュドはイフにメテオルビー、俺にドラゴトパーズを送ってくると、いつの間にか居なくなっていた。


「あの人が時間を戻してくれたあの?」


「そうだよ……」


俺はドラゴトパーズのブレスレットをみて溜息をつく。確かパワーストーンは利き腕じゃないほうに付けるんだったっけ。放出するのが利き腕で、利き腕じゃない方は吸収、って聞いたことあるし。

俺は左腕に付けた。イフも同じように左腕に付ける。


俺は遂に異世界に来て借金を背負うことになってしまったようです。

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