2.第一世界から生きていれば
タニアの胸部に展開されていた魔方陣は消え、一部のみだが鋼人のものと思われる銀色に光る鋼の皮膚が現れた。まるで一部だけだが機械みたいだ。
「……引いてきた?」
「そっか。良かった良かった」
「とはいえこの鋼鉄のような身体じゃ……流石に。何が来ても驚かないと決意していたのに……流石に驚いちゃうよこれは」
タニアは自分の鋼人化した部分を触る。
その後、左腕に力を入れているようだ。
「うーん……上手くいかないなぁ」
「マスターさんはどうやって竜人化してるんですか!?」
「え!?俺は力を加えているだけだけど……まぁ俺のは能力としてだし」
「そ、そうだよね……」
俺は左腕を竜人化さて見せた。
「もう一回良いか?」
「え?あ、わかった」
また、人間の腕に戻し、左腕を竜人化させた。
するとタニアがまじまじと左腕を見つめる。
「おぉ、なるほど」
タニアがもう一度左腕に力を入れると、胸部の鋼人化が解け、左腕が鋼人化しだした。
見ただけで出来るようになったのか?
「結構軽いが大丈夫なのかな……これ?」
「竜人の鱗より遥かに硬い皮膚だ、なんなら主を叩いてもらっても構わないと思うが……」
「ちょ!?ウロボロス!?」
「じゃあ行くよー!!」
「え!?ちょっと待って!!」
俺は咄嗟に両腕を竜人化させて上から振り下ろされる左腕を防ぐ。
鱗の奥の奥まで振動が伝わり、途端に痺れだす。若干痛い。
「おぉ!!」
タニアは鋼人化を解き、同じようにまた上から左腕を振り下ろす。そして痺れる腕でまた防ぐ。
「痛いぃ!!」
タニアはさっきまでの余裕そうな雰囲気とは裏腹に床でゴロゴロしだした。
「だ、大丈夫か……かなり強く振り下ろしたんだな」
あざが出来てるし……でもまぁコツを掴めたらしいし恐ろしい学習能力?だな。
「わ、私も上手くコントロール出来るようになりますかね?」
「どうだろうか……?」
「私も出来るようになるかな!?」
メイデがしがみつくように、羨ましがるように聞いてくる。
「シルフィも出来る!?」
同じようにシルフィも問い出す。
「い、いや……どうだろう?イフ達はなんか手を加えられて出来るようになってるけど」
そういえばレイルがまだ出ていないな。ウロボロスが言う限りじゃ確か蒼龍は魔人だったよな。
「わらわが覚えている中じゃ確か、魂を解放させ、それを宿らせる事が重要だった……っと言うのは覚えているが、恐らくイフやタニア、レイルは半場無理矢理解放させられたのだろう。副作用が出るのは予想がつく」
「ひ、ひぃぃ……」
イフとタニアが思いっきり怯える。
「そういえばどうしてそこまで詳しいんだ?」
「それは第一世界から無幻の宝珠を護る竜人に従ってきたから多少は知っているが」
第一世界の頃から居たのか……そりゃあかなりの知識を持っていても納得できるな。
それに無幻は竜人って言うのは結局昔も同じなのか。
「やり方は忘れたがな」
「忘れたんかい」
「しょうがないだろう……何千、何万とも生きていれば忘れっぽいのも仕方が無いだろう?」
「長生きだな」
「わらわは不老不死だからな」
ウロボロスはそう言うと左腕に噛みつき、血を吸い出した。
「主!!私もイフやタニアみたいに何々化したい!!」
「シルフィも!!」
メイデとシルフィは再びしがみついてきた。
「っと言われましても……ウロボロスに聞くしか」
「わらわは覚えておらぬ、それよりも今は血が欲しい」
「あ!!で、出来ました!!全体猫人化!!」
さっきまで静かだったイフが急に喋り出したかと思えば、全体が猫人化していた。
何度見ても猫のコスプレをした人だな。
「私もよく分かりませんができるようになりました!!」
だがすぐに猫人化は解かれた。
まぁ維持するのが大変っということもあるし、俺だって特に重要じゃなければ全身竜人化はしないようにしているしな。
振り返ってみると一度暴発して、土の領地内で全体竜人化したことがあったな。
「主、わらわは満足だ」
「そっか」
ウロボロスが満足するまで血を吸い終える。
「眠くなってきたな……それじゃあ後で何かあったら無理矢理起こしてきてもいいから眠らせてくれ」
どうも血を吸われたあとは急激な眠気に襲われるからな。
「了解!!」
メイデ達が話しながら、部屋から出ていく。
そして俺は再び静かになった部屋のソファで眠り出した。




