1.第一世界の六属宝護龍は
「なぁ、主?」
「どうした?」
ウロボロスが左腕に移動しながら言う。
「主は、自分の能力のことをどう思っている?」
あれから数日。あの異変から数日経った今、俺はソファで寝転がりながら、ウロボロスの話を聞いている。
未だ、イフだけにしか猫人化の異変は起こっておらず、タニア、レイルには異変は起きていない。
「主は竜人。イフは猫人。タニアとレイルは判明していない。能力としてなら主のみ」
「まぁ、そうだな」
「主は好きな時に竜人化できるが、何故なのだろうか?」
「それはわからないなぁ……でも俺のは女神によるものだし、イフらのは別物だし……あぁよくわからん」
ちょっと考えてみようと思ったが寝転がり過ぎたせいで頭が痛い。それに結局何もわからなかった。
「じゃあ何故宝珠を護る龍を実験対象にしたのだろうか?普通の人間でも良いだろうに。むしろその方が戦力になるだろうに」
「宝珠を護る龍が適していたから?」
「……それで合っている。この異世界の最初の世界、第一世界だった時には、邪龍は鬼人。聖龍は妖人。炎龍は猫人。岩龍は鋼人。疾龍は兎人。蒼龍は魔人。っとして伝えられてきている。第二世界以降、この噂は知る人のみ知る古話となってしまったがな」
この世界は計3回、崩壊し、新たな創造神が新たな世界を作り、出来上がった異世界。
どうやらこの世界はゲームをテーマとして作られているらしい。その為か、視界の右上にはHPバーがあったりする。
VRMMORPGとかではなく、ちゃんとした異世界として機能しているという。
「今は人間の姿になれるが、元は、人間になる代わりに鬼人だったり、猫人だったりするからな。もしかしたら元の姿に戻させようとする奴らが少なからず居たのだろう。それか何か企みがあるのかもしれないな」
「何かしらあるよな……今知れているイフが猫人だし、タニアは鋼人でレイルは魔人ってことになるんだろ?」
どうしてそもそもここまで知っているんだ?
「マスターさん!!助けてください!!」
「!?」
俺は跳ぶように寝転がっているその体を起こし、座る。
イフか……ん?半分どころか……もはや猫人になってないか?
「身体に魂が馴染むのが早すぎたらしいな……」
肉球有り、両の猫耳あり、尻尾あり。これが猫人か。
「ど、どうしましょう!?私死んじゃうかも!?」
「お、お、落ち着け。死んでも残機があれば生き返れるだろ?お、落ち着け。まずは深呼吸だ」
俺とイフは深く深呼吸をした。
「いつからなってた?」
「起きたらもう猫人に……」
「えーっとじゃあ、人間の頃の姿を思い浮かべてみてくれ」
「……あ、戻りました」
猫耳や尻尾等は無くなり、よく見るあの人間の姿へと変わった。
「まるで主の竜人化みたいだな」
「大丈夫だったのなら別に良いけど、いやぁ……不思議だな。何故イフに猫人化をできるようにしたんだろうな?」
炎龍は猫人……か。
「猫人って何かいい所があるのかな……?」
「さぁ?可愛いとか?」
「猫人はとにかく身体能力が高いと聞くぞ?後はそうだな、その可愛さから売春組織に起用されやすいとかだろうな?」
「身体能力が高いのっていうのとか、可愛いのは……嬉しいですけど……売春はしませんよ!?そもそもマスターさんが働いてくれればいい話じゃ無いですか!!」
「俺だって働き口ぐらい探そうと思っているよ……っていうかリメルから資金貰っちゃったしな……」
滅龍賊だって古今夢走だって魔物討伐でかなり稼いでいるしな。
魔物を一度も討伐したことがない俺は果たして討伐できるのか?
「主、入って良い?」
「ん?あぁ、どうぞ?」
扉が開くと、そこにはメイデとシルフィがタニアを運んできた。
胸部分には大きな魔法陣が。
「タニアがずっとこうなの!!」
鋼人化の兆しか。
二人に運ばれているタニアは苦しそうに胸部を押さえる。
「死ぬことは無い……っと思うが、俺も専門家じゃないからな」
「マスターさん、きっとこれって」
「まぁそうだな」
「主が言っていた人体実験みたいな奴?」
俺は頷いた。
俺はすぐにソファから離れ、タニアをソファに寝転がらせる。
「痛……い」
「これって確か時間経過で収まるんだったよな?」
「う、うん。そのはず。私の時もそうだったし」
はっきり言ってどういう条件で落ち着くのか、全く分からないのだがとりあえず見守ろうか。
「そういえば鋼人ってなんなんだ?」
「確か、皮膚が鉄のように硬い人種で、その硬さは何を持ってしても貫くことはできないとされている、絶滅した古の人種だ。鉄のような美しい光沢をもつとも言い伝えられているな」
絶滅した古の人種。鋼人……。
それが今、タニアの中に?
「苦しい……」




