8.武器に心
「デット自身も強いからなぁ。あ、走る速度はそこまでないから逃げ切れりゃそこまで怖くはないんだよな。逃げようとしたら手前の魔法スキルをうってくるから要注意だな」
「なるほど。それじゃあ……行かせてくれ」
「いいや、無理だ。転送させるのに膨大な魔力を使ってしまったようだからな。魔力の回復で、最低でも4日はかかる」
アリファは椅子から地面に落る。それと同時にモニターがプツリと消える。
そしてそのまま寝出す。
「流石に条件不適合の者を転送させるのは魔力の消費が激しすぎるのか……」
長居するわけにもいかないだろうしなぁ。とりあえず自分の部屋に戻るか?
「じゃあ俺は自分の部屋に戻って休憩するけど……」
「わかった。んじゃあ俺はアリファの見守りと竜人共の監視でもするとしようかね」
「なにか情報を手に入れたら教えてちょうだい」
タニアはそう言って部屋へと繋がる空間の狭間を作り中に入る。
アヴェルはアリファが座っていた椅子にどっしりと座る。
「じゃあ、私は、この人の、部屋に行って、一夜を過ごす」
「私が一緒に一夜を過ごすからダメ!!」
コイツら本当に何考えているんだか。
「じゃあ……一旦解散だな」
「人間。ちょっと待ってくれ、今お前が外に出るのはリスクが高すぎる。今夜は此処に泊まっていってくれ。空き部屋がある」
「面目ないな……本当にすまない」
レクトは暗い顔でそう言う。仲間を蘇らせられる可能性はあってもやはり滅入るものなんだな。
俺は自分の空間へと繋がる狭間を作り中に入る。同じようにしてメイデらも入った。
それにしてもデットっていうやつ……恐ろしいな……戦うことになったら……いいや……あまり考えたくないものだ。
だが今宝竜剣を所持しているのは俺。狙われてもおかしくないのは俺だからな……もちろんあいつらはあいつらで竜人のギルドに所属しているからそれで宝竜剣の持ち主が入れ替わった。っと連絡すれば俺が狙われるのは時間の問題だよな。
アリファの魔力が全て戻る4日以上の間。俺はこの空間から外に出ることは出来ないんだな。
「この剣の何処にそんな狙われるような力があるのやら」
俺は宝竜剣ウロボロスをストレージから取り出し色んな角度から眺める。少し魔力を込めると上下で分離した、それはまるで龍が口を開けたかのような形になっていた。
もしかしてこの状態で相手に噛みつき攻撃……みたいな感じなのかな。
ちょっと考えたのち武器説明を見る。
特殊……ウェポンスキル……?特殊ウェポンスキル?なんだそれ?えぇっと……ドラゴエレメント?
効果は一定時間自身の属性値を極限まで上げ、自身に竜属性を付与。
発動条件は自身の肉体の一部を飲み込ませる。と書いてある。
そんなことしたら千切れちゃうんじゃ無いのか……?
そんなことを思いながらも俺は竜人化した左腕を飲み込ませようと開いた口に腕を入れる。腕は空いた口にスッポリと入る。外の鱗の刃以外にも、牙も鋭い刃になっている。これだったら普通に柔らかい肉なら引き裂けるぞ。
「此処に、来るの、久しぶり……って、何やってるの」
「あ、いや別に……?特にないんだけどスッポリ入りそうだなー、なんて思ってさ」
メイリが普通に空間の狭間を作りそこから入ってくる。
「主〜疲れたよ〜……ってメイリ!?」
次はメイデがノックもしずにドアを開けて来る。
そういえばあまり気にしなかったけどメイデとメイリって名前が似ているよな……特には関係なさそうだけど。
「悪いね、彼は、私が貰った」
「ダメだよ!!私の主なんだから!!」
俺はこの場から逃げる為にウロボロスに左腕をくわえさせた状態で部屋から出た。
イフがちょうど同じタイミングで部屋から出る
「あっ……か、帰ってきてたんですね……ってどうしたんです!?その剣に……左腕……」
「あ、そういえばあそこにいた人しか知らないよな。これは宝竜剣ウロボロス」
「ま、まぁそれはわかるんですが……なんでくわえさせているのです?」
イフが不思議そうに頭を傾げる。ウロボロスに驚いているのではなく俺の左腕に驚いている様子だ。
まぁ無理もない。
「ウロボロスのウェポンスキルって言うやつがこうすると発動するみたいで」
「は、はぁ……そうですか。し、尻尾に噛ませないといけないのでは?」
「尻尾?なんで」
「う、ウロボロスは尾を噛むもの。を意味しているって聞いたことが有るからです」
尾を噛むもの……そういえば全身を竜人化させた時、尻尾がうねうねしてたな。
とりあえず尻尾だけつくるか。
「あ、試すならあの場所で」
イフが指さしたのは、イフとスケイルが。俺とアヴェルが、戦った大きな空間の扉だった。
「わ、私も観たいです!!」
「あ、うん。じゃあ行こうか」
イフと大きな空間へと繋がる扉の先に入る。
「じゃあやってみてください!!」
俺は尻尾を作り出し、ウロボロスに噛ませる。
痛い……な……裏の方は肉質が柔らかいから刃がくい込んでいるのが分かる。
血が垂れている。
「と、特に変化はないんだけど!?っていうか痛い!!」
俺はすぐに尻尾を消す。するとウロボロスはもちろん支えるものが無くなったから落ちる。っと思いきや俺の左腕に噛み付いてきた。
「不思議ですね……この武器、人のような心を持っていますよ」
「心……?」
引き離そうとするが中々引き離せない。
「まるで一緒に居たい!!って言っているみたいですね」
「武器がそんなこと思うわけないだろう……」
「それもそうですね」
それにしても最初とは違って引き剥がせないし、噛む力も大きくなっている。これじゃあ鱗が破れちゃうような気がする……。




