7.死龍の情報を
「……とりあえず受け取ってくれ」
レクトはその剣を差し出してくる。
竜人にしか扱えない幻の剣。竜人が探し求める剣……。
「俺は……奴を……」
「人間。いくらお前が強かろうがデットの攻撃で死亡したら終わりなんだぞ?」
「俺は強くは無いさ……刀が強いだけだ」
「それは!!」
レクトの手には以前手にしていた宝刀とは違う刀を持っていた。
「崩土の宝刀ガイアスラ。なんとか手に入れたのは良かったが……代償が大きすぎる。コイツであいつらの敵を打つ」
代償。つまり仲間の死、か……。
レクトはガイアスラを握りしめ、俯いて言う。
「……本当は、死んでなんか、居ない」
「!?」
「霊魂の領地の、集団墓地。デットによって、殺された、人の魂は、あそこで、さ迷ってるの」
集団墓地……おそらく無理矢理デートをさせられたあの薄気味悪い場所だろう。
「魂がさえあれば蘇生魔法で復活出来ないことは無い……」
メイデが久しぶりに頭を使っているな。
「な、ならあいつらは……俺の仲間は蘇れるのか!?」
「可能って話。私は……蘇生魔法も回復魔法も下手っぴだから別の人に頼んだ方が良いんだけど」
回復魔法が得意なやつか。確かストーリーロードっていうギルドのメンバーに居たな……確か名前はアルメリ。ストーリーロードのサブマスターを務める龍だ。少し語源が痛い奴だが。
ストーリーロードは確か情報を集めそれを売るギルドだったな。
「んじゃあストーリーロードの」
「うむぅ……アイツ嫌い」
メイデが頬を膨らます。どんなけ嫌いなんだよ……。
「会わなきゃいいじゃないか?」
「嫌」
嫌いすぎだろ……可哀想になってくる。
「別に蘇生程度ならコイツでもできるぞ」
アヴェルはアリファに指を指す。
アリファが少しムッとなっているのが分かる。
「アルメリ……あぁ、ストーリーロードの」
レクトが思い出したかのように言う。
「ストーリーロードが幻の武器が眠るダンジョンの場所、出現する魔物等を調べてくれて、それをどこのギルドよりも早く俺らのギルドにその情報を持ち込んでくれたあの」
「知り合いなんだな」
「知り合いっちゃ知り合いだな。ストーリーロードが情報を持ち込んで、古今夢走がその情報を実行する。収益は半々、ややこっちの方が上でやってたんだ。まぁ古今夢走は少数ギルドだから必要分の物だけもらって大半はストーリーロードに分けてたけどな。そのおかげで今までも様々な武器を手に入れることが出来たんだよな。つまり協力関係にあったわけだ」
ストーリーロードと古今夢走にそんな関係があったなんてな。そういうことならストーリーロードも協力してくれそうだな。
「じゃあこの竜人に話を聞くとしましょうかね?」
「特にデットの関係について洗いざらい教えてもらわなくちゃな。無論、事が終わるまではここに居てもらう、ただ、嘘の情報を流したら死なないようにある程度の調教をさせて貰おう。こちらに座っておられるこのアリファ様は嘘を見抜く能力がある、わかったな?」
嘘を見抜く力まであるのか……。
アリファはコクリと頷く。
「じゃあ早速教えて」
メイリが連れてきた竜人は青ざめた顔で話す。
「俺は……幹部の者だ、信じてくれ、嘘は言わない」
アリファがこくりと頷く。恐らく嘘はついていないと言っているんだろう。っていうか幹部を連れてきたのか……凄いな。
「竜人の王は、宝竜剣ウロボロス、そうそれだ、それを探していた」
俺が抱えている宝竜剣に指を指す。そうしてアリファがこくりとまた頷く。
「それで古今夢走のメンバーの誰かが宝竜剣を持っているという噂を聞いて王が死龍を雇ったんだ……それが俺の知る限りの死龍の情報だ……」
アリファがまたこくりと頷く。本当に嘘をつかなかったな。
まぁ嘘を見抜くやつがいるのなら嘘をつくわけにもいかないしな。
「確か王と死龍には前にも関係があったって聞いたことがあるんだがそれはについてはよくわからない……これでいいのか?」
「あぁ、それでいい。どうする?デットは暗殺者として名高い、対人戦ならあちらの方が有利だ」
古今夢走は魔物専門だからリンチ状態でも勝てなかったわけか。しかも相手は対人戦のスペシャリストってわけか。
「ならこっちもある程度対人戦に有利に立ち回れる奴で立ち向かわせた方が良いだろう……だがあいつの武器の奪魂鎌。あれの効果が厄介だな」
「どういうものなのだ?」
「半径5mの範囲内に居る生き物の数×物理攻撃力ってわけだ。要するに大勢の相手の方が奴にとって好都がいいってわけだ」
本当に厄介だな……大勢で叩きのめせないのか。




