6.宝竜剣ウロボロス
「二つ目は。種族竜人のみ、しか、扱えない。幻の、宝竜剣ウロボロス」
「宝竜剣ウロボロス……か。僕の聞く限りじゃ、噂だけ存在する片手剣だね。武器マニアの強い人達が血眼になって探している逸品だ。情報だけでも高値で売れる」
「そういやあのレクトって言うやつ、三本もその類の刀持ってなかったか?ありゃ人間のなせる技じゃねぇぞ?いくら武器が強いったって、仲間が強いったって」
ミトラス。ツクヨミ。カワセミの三本か。
そして崩土の宝刀ガイアスラを今。
「確かにそうだ。ダンジョン内でも世界に一本しか存在しない武器が眠っているダンジョンは、手練100人以上の大人数でさえ全滅したぐらい……それに対し古今夢走のメンバーはレクトを合わせて6人。三回以上はその類のダンジョンを攻略している。今思えば化け物としか思えないな……」
少しレクト達が気になるな。
「レクト達は映せるか?」
モニターの画面が切り替わる。
そこにはレクトと、その仲間と思われる人がダンジョン内と思われる朽ちた廊下を走っている。何かから逃げるように。それに様子が明らかに数がおかしい。レクトを含めて4人だぞ……?
1人が何かの攻撃を受け、光となって消えた。死んだのか?そして3人だけになってしまった。
「……ありゃ死戦の宝珠を護る死龍デットの仕業だな」
「死龍……?」
「元滅龍賊のメンバーだ。能力はデットの攻撃で殺された人は、残機に影響しず、死ぬ。つまり何回か死んでよかったものが、あいつの攻撃で死んだら、そこで終了ってこった」
なんだその能力……しかも元滅龍賊のメンバーなのか。
「デットさん!?」
メイリが連れてきた竜人が声を漏らす。
それを見てタニアがキツく睨む。
「どういうこと?」
「あ、いや……その」
「知っているんだよね?あの死龍ってやつのこと」
「い、いえ……は、はい」
気迫が強すぎて押し負けたな、これで更なる情報が見込めそうだ。
アリファの周りにかなりの数の魔法陣が展開され始める。あの赤みを帯びた黒い転送用魔法陣だ。
「早く!!これじゃ殺されちゃう!!」
魔法陣の回転が速くなり、魔力が更に放出される。
もう一人、そしてもう一人殺される。そしてレクトだけになってしまった。
「転送開始!!」
アリファが大きな声でそう言い、モニターの画面と部屋の角が光ると、部屋の角にレクトが現れた。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「あいつら……は……?」
汗だくになって周りを見渡す。
「お前らの仲間は死んだ。蘇らない」
アヴェルがハッキリと言う。
「……は?」
「お前らのギルド古今夢走は現在お前一人ってことだ」
理解できるわけがない。いきなりこの場所に飛ばされては、仲間の死亡を告げられるなんてな。
「奴は死龍デット。奴に殺された相手は残機に関係なく死ぬ……おそらく何処かしらの異世界に転生か転移されていることだろうよ……」
「あいつらは……死んだのか……?」
気の抜けた声で話す。
「そういうことだ」
レクトの目には涙が浮かんでいた。
「そう……か。俺だけ生き残ったって訳か」
レクトは立ち上がり、宝刀を自分の首に差し込もうとする。
「やめろ!!それだけはするな!!」
アヴェルが、レクトの刀を掴んで刺さないようにとする。
「……ほっといてくれ……宝竜剣なんぞ手に入れなけりゃよかったんだ」
レクトの口から宝竜剣の言葉が出る。おそらくデットは竜人側の龍。そして古今夢走の誰かが宝竜剣を持っていたと……そしてデット一人に壊滅させられた訳か。
「今、宝竜剣……っと言ったな?」
「……あぁ……そうだ。宝竜剣ウロボロスは俺が持っている……会った時から早くお前さんに渡していれば良かったのかも知れない……だが竜人の矛先をお前さんに向けるような事はしたく無かったんだ……」
レクトがその宝竜剣ウロボロスをストレージから取り出した。
「俺とあいつらで最初に獲得した……宝武具だ……いつか信頼出来る竜人に渡そう。っとあいつらで決めた剣なんだ」
レクトがそう言うと俺に宝竜剣を向けた。
「何故俺は此処でのこのこと息をしているのか……分からないが……この剣は奴らに渡したらいけないことは確かだ。だから、お前さんが持っていてくれないか……?」
俺は受け取るかどうか悩む。
「俺がお前さんの話をした時……あいつらは喜んで賛成してたさ……でも、もしこの剣を渡したとして竜人の矛先がお前さんに向き、お前さんが全残機分死んだとあれば……俺は罪悪感に押し潰され立っていられないだろう。勿論お前さんは宝珠を護る龍でもある。一度でも死ねば宝珠を奪われる事にも繋がり、剣も失う。それどころか六属珠護龍も殺されかねない。だから、何かが起こるまで、お前さんに渡さず、俺らで管理することにしたんだ。もし、渡してたのなら、死んでいたのは俺らじゃなく、名無しのギルドだったのかもしれない」
俺や宝珠を護る龍の事も考慮し、渡せなかったと言うことか……もしかしたら早めにアリファに早めにモニターを切り替えるよう伝えていたら……少ない犠牲で……いや、全員救われていたのかもしれない。
それを思うと心臓が握りつぶされるような気分になる。




