1.土の領地再び
部屋の外でこちらに向かって足音が聞こえる。
「大変なの!!」
「何が?」
「土の領地が!!」
黄色の髪をした大地の宝珠を護る岩龍、タニアがいきなりドアを開けてくる。
何が大変なのか分からないけど、早めの対応をしといた方が良いだろう。
「お、おう。落ち着け、深呼吸しろ」
一つ深呼吸をする。結構慌てっぽいのか?
「私の護衛をしていた竜人が、急にまた現れて私を探しているらしいの!!」
「タニア護衛隊……だっけ?」
「そう!!それ!!」
「メイデ達は?」
「もう現地に行ってくれた!!結構暴れているみたいで……」
俺は土の領地に繋がる出口を作る。
「よし分かった。とりあえずタニアは此処に居てくれ、その竜人達に確保されたら色々大変だもんな。まぁそうなったらそうなったらでこの空間に逃げ込めば良いんだけど」
俺はその出口に入り、土の領地に出る。
もうそこは半崩壊状態だった。
宝珠を失った領地は荒れ、次第に崩壊するのだが。特に宝珠は奪われていないはずだ……じゃあなぜこんなことになっているんだ?
俺は奴らのアジトと思われる場所を探すため、怪しまれない為に竜人の姿になる。
「久しぶり」
「うああああ!?あ、あぁ……なんだメイリか」
霊魂の宝珠を護る滅龍賊の霊龍。さすが霊龍と言うだけあって人の状態であっても透き通っている。
「なんだ、って、何?」
メイリがふわっと目の前を通り過ぎる。
「よぉ、元気にしてたか?」
「レクト!?何故ここに?」
金が無いのに仲間にクレープをせがまれたとき、可愛そうだからということで1万円を俺にくれた神にも等しいヒーローのような奴、それに俺と同じ転移者らしく、この異世界での夢は六属の宝刀をコンプリートすることなのだとか。自称、仲間思いのコレクター。
何故此処に居るんだ?
「ぷくぅ……私と、喋っていたのに」
「岩龍タニア様に助けを求められちまったからなぁ、女性の為なら頑張っちゃうぜ!!って訳よ」
「実にレクトらしいな」
「だろ?っていうか幽霊さん結構膨れちゃってるぞ?ちゃんと相手してやることだ。俺はこのまま竜人達にダメージを与えとくだけ与えとっから。んじゃ頑張れよ!!」
レクトは走って去っていく。
幽霊さん、って言うのはメイリのことか……って、え!?もはや風船並に膨らましているんだけど!?
「お、おーい?」
「やっと、気づいてくれた」
「すまんな」
頬に詰めた空気がプシューっと抜けていく。
メイリが森の方角を指差す。
「あの森、怪しい」
「そうか……とりあえず行ってみるか」
「うん。二人っきりだね」
「……」
……下手に対応して何かしら刺激したらブチ切れるから苦手なんだよ……。
「こほん。二人だけの時間申し訳ございません、私も居ますが?」
タニアが腕を引っ張る。助かった……って思ったけど怒ってる?って言うかなぜ?
「どうして来たんだ?」
「元はと言えば此処は土の領地。私が登場しなくってどうするのって訳よ!!」
危険を顧みないんだな……まぁ単独で賊に突っ込んだぐらい勇気がある人だし。
「この人は、私の、物。譲る気は……無い」
「あはは……んな訳ない」
もうなんか本当に面倒臭いなぁ。女って笑顔そのものが怖いもんなぁ。
「別にこんなハーレム野郎どうなったって良いけど」
「好きでハーレムになってるわけじゃない」
「どう、なっても、良いなら、私が」
メイリがスっと手を出してくる。
「ダメよ!!」
「どっちなんだよ……」
良かったりダメだったり。っつーか俺はお前らの道具でもなんでもねぇぞ。
「さっさとこの事件の事を調べよう。その後で喧嘩してくれりゃいいし」
まぁ出来ることなら喧嘩なんてしないでほしいんだけど。
「おっとお取り込み中すまんな。リベアさんにお前さんの監視を頼む。って言われちまったからなぁ、まぁ要するに、お前さんがああいう行為に至らないように監視しとけってことだわな」
「帰ってきたのか」
レクトが首を掻きながらまた来る。
「ま、なんかよく分かんないけど、改めてよろしく頼むわ」
こうして俺、タニア、メイリ、レクトでパーティを組んだ。
「ねぇ、お前」
「お前って俺?」
「それ以外、無い」
急にメイリがレクトを睨みだした。
「あの時、お前が居たから。彼と、ゆっくり、楽しい、お話が、出来なかった!!」
「はは、すまんすまん。って言うかあの大人数でよく言うな」
「え?誰か居たの?」
「お前の仲間じゃ無かったのか?」
「私一人で、来たと、思ってたけど」
レクトには見えたのか?その大人数って言うのが。
「もしかして、付いてきてたのかも。元ギルドメンバー達」
「……え?」
「私、殺したの。宝珠を、奪うのを、辞めるって、言った、リーダーに、歯向かった、ギルドメンバー達を、殺したの。殺した生き物を1週間実態を持たない私のような姿にする。その間は、何も出来ない。って言うのを、付与させる。そういう、能力を、持っているから、きっと、その仕業。そして、効果が切れると、その場で、蘇る」
そういえば殺しても俺達は何回かは蘇るって言ってたな。
「なるほどね。やっぱりあの時見えてたのはある意味本物の幽霊だったってわけか」
「でも、まさか、霊が見えるなんて。私はともかく、見えないように、設定されている霊達も、見えるなんてね。私でも、見えないのに」
自分がその幽霊だっていうのに見えないのか。それによくわかんない能力だな。殺した相手は危害を与えられない幽霊に一時的になるって感じか。そして一般人には見えないと。でも何故かレクトには見えた。って言う感じか。




