26.対決の時
やはりこの時間帯でもここの場所は暗いな……。
下は森ばかりだ。お?あの建物がその霊魂の廃墟ってところか?あ、レクトから来た。えっと……少しこっちの用で行けなくなった。すまぬ。……そうか、来れないのか。
「レクトは用が出来てしまったらしく来れないみたいだ」
「そうか……よし、ついた。此処が霊魂の廃墟だ」
「レ、レイル?どうしたの?」
「おばけいるおばけいるおばけいる」
あ、そういえば夜のトイレくっそ怖がっていたな。
「そんな非科学的なやつ……」
そういえば一名居たな、敵の方に。
「大丈夫!!おばけなんていないいなーい!!」
「シルフィ探検したい!!」
どんなに暗い場所でも馬鹿みたいに明るいな、メイデとシルフィは。
「うーらーめーしーやー」
!?
「ぎゃああああああ!!助けてぇぇぇぇ!!」
レイルが泣きながらしがみついてくる。くっそ痛い。
「お、おい、ちゃんと見ろ!?メイリだメイリ……メイリ?」
「随分と、早いね、あと8分も、残っている」
本当だ。っていうかあの数時間の間でメイデ達は全員の防具を揃えたわけか。
「お、戦う気満々だな?」
アヴェル……それに後ろの方にはバラバラの白骨……。少し奥の方に立っているメテウス。それと初めて見るミイラのような包帯を巻いた人。少し見渡すと階段の上の方に足をパタパタさせてこっちを見ている人が。
「あの骨……」
「ん?知り合いなのか?」
「わ、私の宝珠を奪った奴です……」
そうか……きっとこれは
「君が無幻の?」
そして更に奥の方から一人。女の人が来る。
「なるほど……」
「お前はなんなんだ……?」
「私は滅龍賊のマスター。浮翼の宝珠を護る翼龍、リメルっと申しますの……こほん。この度は謝罪をしに来たのです」
滅龍族の……マスター……?うっそだろ。それに謝罪って……。しかもすっごい頭下げているし。
「この度のアップデートで、私が望んでいた世界の全てを追加されたので宝珠を奪い、世界を再構築する必要が無くなったのです……きっと世界を再構築させるのを嫌った創造主が行ったことなのでしょう」
「ど、どういうこと……?」
「つまりはもう宝珠を狙って襲う必要は無いし、今まで怖い思いをさせてしまって申し訳ない。ってところだろう?」
「その通りです。許されないことをしたのは事実……ですがどうかお許しいただきたいんですの……」
「許さない!!」
イフ……まぁそうだよな。そう都合良く許すわけには行かないわな……話を聞いている限りじゃ、一度その骨のやつに殺されているし。大事な領地を破滅に導かれた訳だし。
そのままイフは次元の狭間から炎龍からのドロップアイテムだと思われる短剣を取り出す。
「そこの骸骨!!私と戦え!!」
いつものイフじゃ無い……いつもは見せない怒りが爆発してしまっているな。
そうして骨はカタカタと動き出す。どういう原理で繋がっているのか、全くわからない人骨の奴が出来上がる。
「……リョウ……カイ」
「とりあえず別の場所……被害がそこまで出ない場所に……」
「そうだ!!主!!あるじゃないか。部屋を消すことが出来るなら増やすことだってできるはず、じゃあ特大サイズの部屋を作ってそこで戦わせればいいんじゃないのか?」
「そうだな。少しそこで待っててくれ」
俺は一旦あの空間に戻り、廊下へ出る。えっとここら辺でいいよな……とりあえず部屋増築、っと。よし、じゃあ次はこの中の広さだな。とりあえず……俺が生きていた頃あった体育館ぐらい。でいいかな?あんまり広さ覚えてないけどこれぐらいの広さがあれば充分だろう。
俺は開けっ放しの狭間からメイデ達と滅龍賊の奴らを呼ぶ。
「本当に申し訳ございませんですの」
「あ、えぇっと。なんで世界を再構築させようと?」
「……一言で言うと自由ではあるにはあるのですけど。次第につまらなくなってきて、世界再構築してやるー!!ってなっちゃって次第に大きくなったわけですの……まぁこっちに居た世界再構築組の人達はそれを知るや否やに別のそういったことを考えている方のギルドに行ってしまわれましたが……今思えば世界を再構築しても、自分がその世界に居られる訳じゃないから意味無いんですけどね……あはは」
なるほど……まぁ今は修正で作れるようになったらしいから目的は果たしたのと同等ってわけか。それに今になってそのことに気づいたのか……相当お馬鹿だな。ちょっと間が抜けているんだろうな。
「とりあえずこの場所で戦ってくれ、ここなら被害も出ない。とりあえず観客席たるものもあるからこちらに……」
「……カンシャ……スル」
とりあえず滅龍賊側の観客席と、名無しのギルド側の観客席で分けてあるからまぁいい感じだわな。
俺達はイフの戦いを見届ける為、席に座った。
「そういやイフってかなり怒りっぽいのか?」
「うぅん……いつも引っ込み思案だったとしか言いようが無いけど……あの目、怒りの龍の眼なんだ。完全に煮えたぎっているね。よっぽど憎んでいたんだろう」
「そういえばレイルはムカついたりとか……」
「吾輩はあいつら、滅龍賊がこれ以上の争いをしないというなら反撃しなくても良いと思っている。甘過ぎるか……?」
「……いや、良いと思う。考え方は人それぞれ。滅龍賊の奴らも考え方はそれぞれ違う。人の考えはどうこう言って変わるもんじゃないしな、それが強い思いであれば尚更」
なんかカッコイイこと言えたな。
「……大人になったか?」
「そうか?」
それはそうと試合が始まるな。
「デュエルを申し込む!!」
デュエル?なんじゃそりゃ。
「あぁ、デュエルについて話していなかったな。デュエルは1対1の対人戦だな。修正が入る前から導入されているシステムの一つ。デュエル中は殺しても死亡カウントには刻まれないから、武器の試し等に仲間同士でやってたりするな。今みたいに相手にデュエルをする。みたいな意思をぶつければ相手のところにテキストが送られ、Okを押せばスタートになる。ざっとこんなところだな」
へぇ……なるほど。デュエルねぇ、試し用の殺し合いか。
「……ウケタマワル……」
どこからか試合開始を表すゴングの音が聞こえる。




