20.こういう一面もあるから気をつけて
「それじゃあギルドの作り方について説明してほしいのだが」
「ギルドっていうのはまずどこの宝珠にも属さない中心都市のラグナロクのギルド製作役所っていう場所に行かないと行けないんだ」
何処の宝珠にも属さない都市、か。まるで無幻の宝珠みたいな奴なんだな。
「何処の宝珠にも属してないからテレポートと出来ないと」
「そういうこと、まぁ徒歩になるけど光か闇の国の国境の近くから行けばすぐラグナロクだからまぁ別に大したものじゃ無いんだけど」
なるほど、まぁそれが一番手っ取り早いか。
「あ、そうだ、これ言っていたかどうかわからないが一応言わせてほしいんだが」
「ん?」
リベアが俺の方を見て言う。
「一つ一つの国の面積ってどんなものだと思っている?」
国の面積?うーん、日本と同じくらいかそれ以上かな?
「40万平方キロメートルぐらいか?よくわからんけど」
「実はそんなに大きくない、国、なんて勝手に言ったのは誰かは知らないけど、君の住んでいた日本っていう国の都道府県、のそれよりも小さいかな?」
それって国って言えるのかよ……。
「まぁ最初の世界は六つの国しか無かったわけだし大きかったのかもね。宝珠が増えるにつれてしょうがないところがあったかもしれないし」
一つ一つの国と呼ばれていたそれは、案外結構小さかったんだな。
「多分次の修正の時に、国、っていう呼ばれ方はしなくなるんじゃないかって言われてるよ!!確か領地、だっけ?」
領地か、まぁ確かにそんなものだよな、っていうか修正って一帯なんなんだ?さっきから修正がなんたらかんたらで、ストレージがどうたらとか、国の呼び方がどうたらって。
「修正するって言ったってその修正する人達どうするんだ?」
「創造主が修正したりするんだよ、ゲームの運営みたいに」
「もうやりたい放題だな」
「でも基盤をめちゃくちゃにすることは出来ないんだ、呼び方を変えたり、ちょっとした不具合を直したり。できる範囲はその程度なんだ」
あ、そうなのか、まぁそうだろうな。
「僕はそのまま、国、でいいと思うんだけどなぁ」
「や、ややこしいですもんね、国、って言える面積も無いのに、それに国の政治だって中心都市が勝手に決めてますし」
「ま、それもそっか」
納得した。
「じゃあギルド作ってくるか?」
「そうだね、とりあえずラグナロクの何処かの宿ぐらいには泊まっておきたいね」
「じゃあ光の領地のラグナロク一番近いところにレッツゴー!!」
メイデがそう言って地上へ出るための狭間を作る。
「よし、って暗いな」
真夜中か、でも一歩先はそれでも人が多く賑わっている。此処が中心都市ラグナロクか。
「とりあえず宿を探さないとね!!」
酔っ払った6人の男達が近づいてくる。
「ね〜ね〜、そんな男より俺達と遊ぼ〜ぜぇ?」
「なぁ〜良いだろぉ〜?」
うわ、酒臭い……。
「うわ!?」
急に一人の男にどつかれて尻餅する。
「ね〜ね〜いーだろぉ?そんな貧弱なやつに関わってないでさぁ?」
「主に手を出したよね?」
メイデが前に出て言う。
「あるじぃ?その男がぁ?」
「逃げるぞ!!」
リベアの声が聞こえる。
「え?ちょ!?メイデを置いてって良いのかよ!?」
「今はそんなことを言っている場合じゃない!!いち早くメイデから逃げるんだ!!」
よくわからないけどリベアに手を引っ張られ、光の領地の木の後ろに隠れる。もうとっくに俺とリベア以外は隠れていたみたいだが。
「おいおい、仲間が逃げちゃったよぉ?」
「うっひひひ、こりゃラッキー!!」
「ま、待て、さっきあいつらコイツのことメイデって言わなかったか……?」
「嘘……だろ?んなわけ」
メイデというその名前に怯えている?
「ふふ……望み通り遊んであげる。三つの選択肢から選んで」
メイデとその男達の足元に魔法陣が展開される。メイデの足元には白い魔法陣が、男達の足元には鎖を催した灰色の魔法陣が。
「一つ、だるまさんがころんだ」
「二つ、鬼ごっこ」
「三つ、命令ゲーム」
ゆっくりと喋るメイデ、その姿は一度も見たことないような禍々しい姿だった。
光の聖龍だなんて思えない、そんな威圧感を放っている。
「ねぇ、答えてよ、答えないと指、折っちゃうよ?」
指を折る仕草をするメイデ。
「……な、なぁ?メイデってあんな奴だっけ?」
「僕も初めて見る、初代の光の聖龍無邪気な性格に加えて、残酷な、例えば大事な人を傷つけられた時、怒り狂うっていう、無くても良いような性格を持ち合わせているんだ。きっとその性格を引き継いだ結果だよ」
「ねぇ、答えてよ?」
「な、なぁ?ジョークだってジョーク!!はは……」
「いいから答えて……答える気が無いなら、だるまさんがころんだにするから」
生まれたての犬のように小刻みに震える男達のその目には涙が浮かんでいた。
「止めに行ったほうが……」
それに何故だるまさんがころんだなんだ?しかも此処じゃ人目につくし一旦部屋に連れ込んだって……って待て、右から順番に両腕両足がなくなっていってないか……?血は出てないけれど。
そして全員の両腕両足が無くなって行く。
「だるまさんの完成」
全員を両腕両足が無いだるま人間にさせたのか?血は出てないけど肉の断面が……これはいくらなんでも……っていうか頭大丈夫か……?
「ルールを説明します、私が4回だるまさんがころんだと言います、そのうちに転んだ人は一生そのまま。転ばなかった人は両腕両足を元に戻せる、わかった?あ、頷かなくていいよ、転んじゃって楽しめないからね、じゃあ、だぁ〜るぅ〜まぁ〜さぁ〜ん〜がぁ〜こぉ〜ろぉ〜ん〜だぁ〜」
だるまさんがころんだを言うのに20秒も?しかもだるま側をガン見しているし。
このままじゃ全員が両腕両足が無い人間になってしまうぞ……止めないと……。
俺はそう思い、木から出る。男達の頬は涙が流れていた。
「も、もう良いんじゃ無いのか?」
「えへへ、どう?私の迫真の演技!!」
「迫真の演技?」
「そう!!この魔法は部分的透明化魔法で、透明化させた腕や足を、そこにあるけど実態が無くなる幻影魔法で包んだんだ!!そうするとこうやってだるま人間が出来上がるって感じ!!後は私がちょっと怖くなるだけ」
「じゃ、じゃあ別に本当に斬れていた訳じゃ」
「そんな怖いことしないよぉ、全く主は〜、それにどうせ5分程度で効果が切れるように設定してたし」
いつの間にか全員の両腕両足が元に戻っていた、そのまま男達は逃げるように去っていく。
きっとあいつらには忘れられないようなトラウマになったんだろうな。なんて考えながら
「でも、私ああいう一面あるから気をつけてね?」
「お、おう」
そのまま宿探しを再開した。




