19.ギルドと、この世界のこと
うーん、暇だ、此処にあるのは、ソファに不機嫌そうに座るメイデのみ、暇すぎる。
「そういや、あのアルメリっていう人。結構個性的っていうか」
「そう、たまぁーに会うと、仕入れた情報を教えてくれるのは良いけど。その分ああやって小馬鹿にしてくるから、苦手なんだよね」
珍しく苛立っているようで。
「あれでもストーリーロードっていうギルドのサブマスターでね、結構名が知れ渡ってたりするんだ。ってそういえばギルドの説明って......」
「まぁ、頼む」
あいつらもそういえば滅龍賊とかいうギルドの奴らも俺を入れさせようとしていたな。
やっぱりそういうチームみたいな、感じなんだろうけど。
「ギルドっていうのは、まぁ簡単に言ったら人と人が組むチームみたいな感じ、それでギルドに入ると、目の前にギルドメンバーと会話やメッセージのやり取りが出来る、って聞いたことあるよ、他にはギルドストレージっていう、次元の狭間みたいなギルドメンバー共通の、物を出し入れできるシステムや、メンバーストレージっていう、ギルドメンバーの一人一人の為のストレージの追加、後はギルドメンバーの名簿、とか?」
「結構詳しいんだな」
「まーね!!」
「そういえばこの原理ってどうやら、宝珠が追加能力を与えてくれるのとほとんど同じ原理らしいよ。違うところって言ったらやっぱり、普通の人達がでもできるってところだけかな?」
なるほど、ギルド入れば、収集できる数が増え、ギルドメンバーとのメッセージのやり取りも可能になる、いい事尽くめだな。
「へぇ、じゃあ俺達でギルド作ってみるか?互いの生存とかも知れていいと思うんだが」
「うん!!良いかも!!皆が回復したら誘ってみよう!!」
ストーリーロード、滅龍賊、他にもこの世界には沢山のギルドがあるんだろうな。
「もうすぐタニアとレイルは回復する、それよりもそのギルドの名前は何にするんだ?」
出ていってから数分もたってないのに、リベアとシルフィとイフが帰ってくる。
「いや、決めてはいないんだが、っていうかアルメリはどうしたんだ?」
「回復して帰ったよ」
「回復なら私だってできるんだけどね……」
ちょっと拗ねた感じにメイデが言う、そして頬を膨らませる。
「メイデはまだ練習段階だからね〜」
「前なんて賊に与えられたダメージを回復して貰おう、って思ってたら、回復魔法じゃなくって光属性攻撃で更にダメージを与えられてしまったこともあったっけ?」
「それは黙っててって言ったでしょ!?」
「うっへへ〜ごめんごめ〜ん」
リベアがメイデに追いかけられている。なんだかとても面白くって笑い出した。
「笑い事じゃないよぅ」
「何やら楽しそうだねぇ?」
「何の話をしていたのだ?」
タニアさんとレイルさんが部屋に入ってくる。
「あぁ、ギルドを作るかどうかの話だよ。次元の狭間も良いけど特にまとまっているわけじゃ無いから沢山物を詰め込んだらいざという時大変だろうし、みたいな」
「ほぉほぉ、確かに良いかもね。アイテム名とかもちゃんと分かるしね」
アイテム名?どう言うことだ?物に名前が元々ついているのか?
「この世界ってもしかして一回リセットされてたりするのか?」
「え、確か......うん」
「あ、気づいたんだ、まぁいつか言う予定だったし丁度いい、この世界は3回、消滅と再生を繰り返しているんだ。僕の記憶がただしければ、今、この世界は君の世界にあるようなゲームの世界を目指して作られた、って聞いたことがある。自由なゲームの世界を目指して、って、なんでなのかは分からないのだけどね」
ゲームの世界……?
「世界を創り直す権限を持つ為には、僕達の宝珠を全て奪う必要があって。まぁそれが出来た三代目の創造者は前あった世界を壊し。今の様になるべくゲームの世界を創ったの。君の世界から来た転移者だったのかもね、すこし未来の。まぁこれは僕の予想だけど」
つまりこの世界は、異世界だが、ゲームのような魔法あり、ギルドありで、なるべく理想のゲームに近づけた異世界なのか。
異世界ではあるものの、殆どが、見て、触って、匂いがあって、感覚があって、痛みもわかる、自分で動いて感じることの出来るゲームだったのか?今でもあまり信じれないな。
「でもどうやら、ギルドに加入している人にしかストレージが使えないのは不具合らしいんだけどね。多分そろそろ修正される、っていう噂が立っているよ、ギルドに加入してなくても個人ストレージが使えるようになっていたりパーティメンバーの確認が出来たり。まぁいつか言おうと思ってたこと言えたから僕はスッキリしたよ」
「じゃあ君達のその宝珠を護るっていう使命は」
「最初のこの異世界からの変更できない点なんだ、次の世界に繋ぐために必要な物。というところかな?最初の世界とその次の世界のことは何も知らないけど、最初は宝珠を護るのが六属珠護龍と転移、転生者しか護れない無幻の宝珠だけだったらしい」
結構詳しいんだな。
この世界が魔法あり、ギルドあり、能力ありの自分が身体を動かして楽しめる。まるでゲームのような世界だなんて知らなかった。
俺からしてみれば、普通のファンタジーな世界だと思っていたが、とりあえず今の話でわかったことは、この世界はゲームのような世界を目指して創られているんだな。
「へぇ〜、そうだったんだ」
「メイデにも教えただろ!?」
「そうだっけ?」
「そうだよ……はぁ」
深く溜息をつくリベア、まぁそれもそうか。
やっぱり宝珠を護る龍は全員知っていそうだな、メイデをのぞいて。
「さて、ギルドの件についてはどうする?」
とりあえず半分忘れられていそうな本題を持ってくる。
「折角だし作ろうよ!!」
「そ、そうですね、面白そうです!!」
「ギルドはいつか作りたいと思っていたがまさか君の方からそんな話が出るなんてね。僕も賛成だ」
「シルフィも大賛成!!」
「私も全然良いよ、遠くに基本いる私達からしたらもっと早めにギルドを作っておくべきだったのかもしれないけど」
「吾輩も賛成だ、特に言うことは無いが便利なことが多いらしいのでな」
全員賛成、まぁ別に断る理由もある訳じゃないしね。
でもギルドの名前どうするんだ?俺はなんかこう言う感じの取り返しのつかないようなものに名前をつけるのは苦手なんだけど。
「やっぱり此処は主しかいないよ!!」
「確かにな、いい名前を考えてくれよ?」
「シルフィも賛成!!だってこの人が居なかったらシルフィ達がこうやって揃うことは無かったしね」
「そ、それだけじゃなかったと思います!!宝珠を取り返せたのも貴方のおかげですよ!!」
「確かにね、あの時いきなり上から君が落っこちてきて一緒に戦ってくれたとき、本当に助かったからね、今でも凄く感謝してるよ?」
「吾輩も君にギルドマスターになってもらいたい、充分優しいしな」
「お、俺!?」
ちょっと待ってくれ、ギルドマスターになるのは別に良いんだけど名前を考えるのが苦手なんだよな。
「そうだが?主以外に誰がありえるんだ?」
「べ、別に俺はギルドマスターやってもいいけどギルドの名前が思い浮かばなくって……」
とりあえず今一番の不安を言う。
「そんなの適当でオッケーオッケー!!」
適当って言ったってなぁ。
龍だから龍に関係する名前がいいなぁ。
「俺じゃなんも案が浮かばなかったから何か考えてくれ」
「はいはーい!!」
「んじゃメイデ、言ってみて」
「ドラゴ〇ズ!!」
「うん、駄目。次」
さすがに駄目だろ、俺が生きていた頃の世界でなんかそんな感じのチームがあった気がするし。っていうか何処かのチームの名前は覚えていて自分の名前を覚えていないって相当だな。
「は、はい」
「じゃあイフ」
「ドラえも〇!!」
どこから出てきたその言葉!!最初のドラとドラゴンをかけているのか?青いたぬきのようなよくわからない未来のロボットが脳裏を横切る。
「駄目だ」
「えぇ〜」
当たり前だろ。
「うーん、自身は無いけど私、良いかな?」
「あ、タニアさん、まともな奴を頼む」
「流星群」
悪くは無い、むしろ良いのだが、なんか違う気がするんだよな、特攻が下がりそうだし。っていうかこんなに否定しまくっているなら自分で考えろよって話だよな。
「うーん、違うなぁ」
「そっかぁ」
「吾輩良いの思いついたぞ」
「お、そうか、言ってみてくれ」
「龍騎」
ライダーの名前だっけ、騎士のような……ってこれも駄目だな、格好いいけど。
「っていうかもしかして俺が生きてた頃の世界のことって結構詳しい?」
「いや?全くだが?」
ならただの偶然か、にしても自分の名前を思い出せなくてこういった俺の生きていた頃の世界のことは覚えているんだろう。
「結構名前を考えるのは楽じゃないんだな……」
「そういえば龍とはかけ離れるが主って名前を覚えていないよな?」
「んまぁ」
「じゃあ主のその特徴に乗っ取って、名無しのギルドなんてカッコよくない?まぁ僕の気まぐれな思いつきだけど」
名無しのギルド、か、案外カッコイイな。そもそも龍にこだわる必要は無かったわけか。
「いいね、それ!!名無しのギルドかぁ、シルフィは気に入ったよ!!」
「うん!!さすがリベア!!」
結構俺と同じ価値観で見れるやつが多いんだな。これは関心だ、ちょっとふざけた感じのが1番しっくりくる。
「じゃあ名無しのギルドでいいか?」
全員が賛成し、ギルド名は名無しのギルドに決まった。
自分でもかなり気に入っている。




