16.霊龍とのデートは地獄への道
イフは部屋に帰っていった、はぁ、どうしようかな?今のところ何もすることが無いし。
「えへへ、来ちゃった」
「は!?」
俺の背後からすぅっと現れる、妙に寒気のようなものが込上がってくる。
「君の体に、支障を、きたさないようにするの、大変だった」
嘘だろ、あの時からずっと憑依していてそれで此処にすんなり入ってこられたのか......最初からそれが目的だったとは思いがたいが恐らく逃げた先で、目的を果たさせる為に憑依していたのだろう。
「さ、行こ?」
勝手に登録したのか、っていうかそんなことが出来たのか、でも実態を手に入れてしまったらこんな芸当も出来なくなるのでは無いのか?
「行かないの?」
目の前に出口の方の空間の狭間が作られる、そこから少しだけ見えるその先には墓地の様なものが広がっている。
「約束、したよね?」
「あ、あぁ」
デートだっけ、出してあげるからデートして、だったような気がする、でもなんかデートと言うには明らかに地獄への道を歩まされそうな気がするんだけど。
「じゃ、行こ?」
正直断れるなら断りたい、っていうか今すぐにでもこの場を離れたいのだが、そうした場合メイデが危うくなりうる、それにイフは行ってしまったし。
「わかった」
恐怖に震える体を押さえつけて、メイリの作った出口を通る。
「デートに、最適な、場所でしょ?」
何処をどうとったら最適になるんだよ!!そもそも此処が最適って相当頭吹っ飛んでるぞ。
「あ、久しぶり」
「ん?メイリ、遂に友達ができたのかい?」
メガネを掛けた肌白の男性がこっちに気づき話しかけてくる。
「友達、じゃない、恋人」
「あっははは!!へぇ、恋人!!そりゃ凄いじゃないか!!まさか君が人間の恋人を作るんてね、あぁ、自己紹介が忘れてたね、僕は怪仏の宝珠を護る怪龍のリビュド、少しこの墓場に用があって来てたんだけど、まさかメイリに恋人が出来るなんてね!!」
どういう関係なのかよくわからないけど、好戦的じゃ無いだけマシか。
「そうそう、メイリに話があって、彼氏には悪いけど離れてもらって良いかな?」
「あ、はい」
そう言ってリビュドはメイリを森の深い方へ連れていく。
ん?リビュドの右手に何か書いてある?さっきまで何も......とりあえず龍の目にして、えっと、逃げろ?
俺はその文字を見た時身体中が鳥肌状態になってくるのを感じた、そうしてリビュドがこちらを振り向く、少し微笑んだ、そしてまた右手の文字は変わり、逃げろの文字は、早く!になった。
詳しく説明している暇は無いのだろう、俺はさっき居た空間に逃げ込もうと思ったが彼処は駄目だ、メイリも来れる、となるとこの場所でやり過ごす必要があるのか、いや、そうで無くても1回あの空間に戻り別の国の何処に出ればいい話じゃないか。
俺は少し躊躇った後空間に戻った。
「はぁ、はぁ」
心臓が鳴り止まない、軽くあんな約束を作ってしまうんじゃなかった!!
俺は急いで廊下に出て部屋の数を数える、8個のドアがあった、8個目には霊魂の文字が入っている、完全にメイリの部屋だ。
「君か、どうしたんだ、汗がってそのドア、誰のだ?」
「メイリのだ、俺に憑依して勝手に登録したらしいんだ」
「メイリは確か賊の仲間だったよな?そうか、言わなくていい、大体察した、メイリに好かれてしまったんだろう?」
「まぁ、そんなところだがっていうか何処か良い隠れ場所は......」
「慌てなくていい、登録したのなら除外することだって出来る、普通にメイリの登録を削除、って思えばいいんじゃないか?作ることが出来るなら消すことも出来るはずだし」
そ、そうか、無駄に隠れなくても登録自体削除してしまえばいいのか。
おぉ、ドアごと消えた、これでひとまず安心な訳か。
でも次会ってしまった時はどうしようも無いよな、とりあえずリビュドっていう人が居てくれて本当に助かった、そもそもどういう関係なんだろうか?あのままメイリと一緒に居たら俺はどうなっていたんだ?何か知ってそうな雰囲気がしたんだけど。
それに宝珠を護る龍でもあったし。




