another noon
文章が下手ですまない。
北原高校がある加沙川市から二つ隣にある与河原市。
その市内で最も偏差値が高く優秀な生徒が集まることで有名な私立雪華学園。小中高一貫校で広大な敷地面積を誇る。高等部の第三校舎の屋上は学校としては珍しく開放されており、庭園となっている。
その屋上庭園には現在、一人の少女がベンチに座っていた。
「ヘイお嬢さんはじめまして!僕の名前はギギ。いやぁ屋上が開放されている学校なんて珍しいね?」
そこに突如として現れたギギ。しかし少女は慌てる様子を見せなかった。
「久しぶりだね?随分と姿が変わったように見えるが、どうした?イメチェンという奴かね?こうして会うのは2年ぶりかな?」
ギギがはじめましてと言ったのに対し、少女は当然かのようにその言葉を返す。
「姿も声も何もかもを変えたところで私に気付かれないとでも思ったのかい?それほどまでに私達7人の友情が軽いと思ったかい?私もだが、朝霞にも容易く看破されるぞ?まあ彩夏と月夜は鈍いから気付かなくても仕方がないが」
「……昔から、藍星ちゃんには敵わないな。でも本当にすごいや。参考までに理由を聞いていいかな?」
ギギは正体を容易く看破されたことを悔しがらず、嬉しく感じていた。
「考えず早々に答えを聞こうとするのは浅薄だよ?『なぜ私が君の正体を看破できたのか』をタイトルとし、理由を小説を書くようにストーリー性を重視して最低八万字で提出したまえ」
「キツイ!キツイよ藍星ちゃん!!最後の条件が一番キツイ!!」
ギギは慌てて藍星の出した条件に苦情を申し立てた。
「ハッハッ、冗談だ。幼馴染への再会の挨拶だよ」
「相変わらず冗談キツイよ……」
藍星は上機嫌、ギギはげんなりしていた。
「いや何、最近こちらも少々面白いことが起きてね、気分が高揚しているんだ。まあそれはさておき、一体どんな用かな?色々大変だと小耳に挟んだのだが」
上機嫌に話していた藍星だったが、途端に真剣な表情に変わった。
「あ~うん、そのことはあまり話したくないんだ。ごめんね」
「…………」
明るかった雰囲気が重苦しい空気へと一変した。
「分かった、無理には聞かない。だが、今回の件については私も腹に据えかねるところだ。何があってその姿なのかは知らないが、私にも限度があるということを忘れるな?」
藍星は表情にこそ出しはしなかったが、瞳の奥に激しい怒りを感じさせた。
「大丈夫だよ。藍星ちゃんが何もしなくても、僕が終わらせる。絶対にだ」
ギギは藍星から目を逸らさず、付けていた仮面を外し真剣な表情で答えた。まるで覚悟を決めたような目だ。
「……本当に別人みたいだな、何もかも」
「うん、今の僕は別人だ。彼女に報いるために、僕は別人になった。今の僕はギギだ」
藍星は瞼を閉じ、ギギは外した仮面を付ける。
「さっ、重苦しい話はここまでにして、今度はこっちの話をしようか!」
「そうだな。では、拝聴させてもらおう」
暗い話に区切りを付けて、ギギは明るい表情を見せる。藍星も怒りを納め、優しい声で言葉を返した。
「今朝街を飛び回っていたらトラックに轢かれかけている少年がいたんだ。それを僕がぱっと行って助けたんだ」
「そうか。そういえばここに来た時、階段では来なかったようだな。身体能力でも上がるのか、その仮面は?」
「藍星ちゃんはやっぱり鋭いね。これは貰い物でね、結構便利なんだよ?それで少年を助けた後、その少年の学校の門が閉まる時間が迫っていて、送って行ったんだ。その後、一直線にこっちに来たんだ」
「ほう?中々に興味深いな、その仮面は」
今朝起こったことを話すギギと、ギギの付けている仮面に興味を示す藍星。
「でしょ?この仮面をくれた人はちょっとした条件でくれたんだ」
「条件?」
「この仮面の力を使った状態で最初に触れた人に正体がばれるかどうかのゲームをすること。期限付きでね」
「随分と易いな。そのゲームに勝敗に関することは何か言ってなかったのか?」
「それは内緒。誰にも言わない約束をしてるんだ」
ギギは口の前に指で×を作る。
「そうか……。そろそろ時間の様だ。切り上げようか」
「そうだね、それじゃあね、藍星ちゃん」
藍星に別れを告げて、ギギはその場から姿を消した。
「ああ、次を楽しみにしてるよ……ギギ」
去ったギギへの言葉を残し、藍星は校舎の中に戻って行った。