放課後 遊びと仮面と偽り
やっとあらすじに追いついた……。
あっという間に午後の授業は終わり、僕は家に帰ろうとしていた。そして校門に差し掛かろうとしたところに、奴はいた。
「よっ」
壁に寄りかかり組んだ手で挨拶代りの動作をしたギギが、そこにいた。
「約束通り、待ってたよ?」
「約束って、お前が一方的に決めたことじゃないか………あと、何で疑問形?」
「さあ?まぁそれは置いといて、場所を変えようか」
そう言ってギギはゆっくりと歩き始めた。僕もその後を追いかけた。
ギギに付いて行った先は、朝訪れた公園だった。
「ここでいいよね?じゃあ話を始めようか」
「それはいいんだが………、なぜそこなんだ?」
ギギが座っていたのは公園に合ったブランコ………の上だった。
「別にいいじゃん。一度くらいこういうことしてみたいでしょ?」
そう言ってギギはサーカスのように足だけでぶら下がっていた。流石にそんなことを問い詰めていては限がなさそうなので、僕は本題に入ろうとした。しかし、
「それじゃあ本題に入る前に一つ、ちょっとした遊びを提案したい」
「はっ?何だよいきなり」
「いやぁ、だって君今朝、僕に命の危機を助けられた訳じゃない?その分のお返し代りにちょっとした提案をしただけだよ?」
「見返り求めんのかよ………」
「勿論、だって僕は聖人君子でも正義の味方でもないからね。それに、僕のことを話す件ともあながち無関係とは限らないし」
………こいつの考えていることがまるで分からない。だけど、確かにこいつには借りがある。
「………分かった。で、どんなゲームだ?」
「よくぞ聞いてくれた!!………と大仰に言っても、単純に僕の名前を当てるだけのゲームなんだけどね?」
ギギはぶら下がったまま、右手を前に突き出し力強く言ったが、すぐに普通のテンションに戻った。ギギの普通がどうなのかは知らないが………。
「名前って………、お前のか?」
「他に誰がいるって言うのさ?発案者は僕だよ?それに誰がどう考えても明らかに偽名な人物、それはこの場にただ一人、そう!!僕だけしかいない!!」
ギギはぶら下がっている体勢からブランコの支えを軸に回転、体操競技の鉄棒ばりのジャンプをして着地した。
「期間は半年。その間、何度回答しても構わない。あ、でも理由も込みで答えてね?当てずっぽうだと面白みにも欠けるし」
「………」
カシャッ。
「………なんでカメラで撮ったのかな?」
「お前の写真を撮って、手当たり次第に人に見せてそれに見覚えがある人物を辿って行けば、自然に答えに辿り着くだろ?」
期間は半年、回答無制限理由込み。正体を暴く方法までは提示されていないから文句は言わせない。
「ルールを細部まで取り決めなかったことが仇となったな………」
「身も蓋もないなぁ、何か顔もあくどいし………。まぁ別にやってもいいよ?無駄だけど」
「?無駄ってどういう………」
「こういうこと」
瞬間、ギギの姿が変わっていた。まるで別人、………いや、完全に別人になっていた。姿だけでなく、声までも。
「さて、どうかな?」
「お前、それって一体どうなってるんだ?」
「君が疑問に思っていたことの答え、僕が付けているこの仮面の力さ」
ギギはさっきの姿に戻ると、自分の付けている仮面を指差した。
「この仮面は特殊なものでね、付けていると色々嘘を付けるんだよ」
「嘘………?」
「さっき僕自身の姿を変えたのも、この仮面の力で自分の姿を偽ったんだ。身長体格性別年齢声まで自由自在さ。有り体に言えば、変身能力だよ」
「変身………?」
「そう、ちなみにこの姿は偶々見かけた子を参考にしたんだよ?あと君を助けられたのもこの仮面の力だよ。この仮面は同時に3つまで嘘を付けるんだ。これに言葉の嘘は含まれないよ?口に出すだけならタダだからね。それで、僕が君を助ける時、身体能力を偽って君を助けた。これで君の疑問は大体解消されただろ?」
「………ああ」
正直、とても信じられないが、こうして目にしてきた以上信じるしかないだろう。同時に、先程考えた手が無駄だということが実感として湧いた。
「それじゃあゲーム開始と行こうか」
「ああ………」
ギギがゲーム開始の宣言をして、それに返事をした時、ふとどうでもいい疑問が脳裏に浮かんだ。
「なぁ、そういえば僕を送っていった後、何してたんだ?」
「ん~、まぁ別にいっか。ちょっと人に会ってたよ」
「人に?知り合いがいるのか?」
「そりゃいるさ。人間誰しも知り合いの一人や二人いるだろ?」
「それは………そうだな」
「よし、それじゃあ行こうか」
僕の質問に答え終わるとギギはどこかに向かおうとしていた。
「行くってどこに?」
「どこって、君の家」
ギギはまるで当然のように僕を指差した。
「はぁ!?」
「暇だからね、ちょっとお邪魔させてもらうよ」
「いやいやいやちょっと待て!!」
「大丈夫大丈夫、今日だけだから!」
あ、これもう駄目そうだ。と諦めつつ、僕はギギを連れて家に帰ることになった。