ランチタイムの3人
まだあらすじにすら到達していないダメ作者を許してくれ……。
結局、3人が再び集まったのは昼休みだった。
あの後何度か授業に合間はあったが、その度になごみさんは「ふにゃぁ」とか言って寝てるし、大悟は大悟でスマホ見ながら時折にやけて近寄りづらかった。
ともあれ3人集まったので、今朝の話の続きをした。
「アホか」
何があったか話した直後、大悟の口から出た言葉だった。なごみさんは「すごいね~」とだけ言っていた。
「しょうがないだろ、事実なんだから」
「だとしてもおかしいだろそいつ。どこの漫画のキャラだよ、アメコミヒーローか?」
「すごいね~」
「あいつが色々とおかしいのは同意見だ。まあ現状何にも分かんねえけど」
ギギが一体何者かと考えてはみたが、当然答えが出る訳ではないので結局やめた。
「ま、そのギギって奴のことは置いといて、無事でよかったな、一真」
「おお、ありがとな」
「でもさ~小森君?今日はさっちゃんが休みでよかったね~」
なごみさんが発した一言で、場の空気が一瞬で凍った。
「さっちゃんがいたら、小森君ぼこぼこにされてたかな~?」
「……どうかな、大悟?」
「そりゃなるだろ、斉藤だぞ?あの斉藤だぞ?騒ぎを起こしたら絶対実力行使で止めに来る風紀委員の斉藤だぞ?」
……そう、なごみさんが言うさっちゃんこと斉藤木断は、この北原高校の風紀委員である。
今日は急な用事とやらで学校を休んでいるが、もしもいたら今朝の騒ぎが起きた時に騒ぎの中心にいる僕をシバキに……もとい仕置きに来ただろう。それほどまでに彼女は容赦がない。その容赦の無さから名字をなぞって裁刀木断と呼ばれることもある。
「で、でも、さすがに今回の件は大目に見てくれるよな?な?」
「無理だな。あの斉藤だからな」
「さっちゃんだからね~」
満場一致、助かる見込みはゼロだった。
「斉藤は騒ぎの元は必ず叩くからな。中学の卒業式に同級生の不良にお礼参りしに来た不良達30人を偶々近くに置いてあった刺又で元凶になった同級生諸共血祭りに上げたっていう噂がある位だからな」
「それ、僕も聞いたことがある……てか、刺又って血祭りに上げるようなものだったか?」
たしか刺又の柄は2・3mあったはず。それを振り回したのか?
「それホントだよ~?」
なごみさんが再び空気を凍らせた。今日のなごみさんはよく空気を凍らせる。
「えっと……なごみさん?」
「私、さっちゃんと同じ中学だよ~」
「何それ初耳なんですけど?」
「あれ、言ってなかったっけ~?」
「「初耳です」」
二人同時に声のトーンが下がった。しかし貴重かもしれない話を聞ける機会だったからか、斉藤への恐怖よりこの話への好奇心がこの場で勝った。
「あの日はね~、同級生の金剛君がそれまで喧嘩してきた人達が一斉に押し寄せてきてね~?金剛君が『あれは俺の不始末だ。これまで馬鹿やってきた付けだ。大丈夫、お前達には手出しさせねえよ。……なごみさん、あんたには後で伝えたいことがある。あいつらを片付け終えたら体育館裏で待っててくれ』って言って飛び出して行ったんだ~」
「……それで?」
「それで金剛君がその不良さん達に突っ込んで行ったら、さっちゃんが刺又持ってきて、『テメエ等全員覚悟しろおお!!!』って金剛君を手始めに不良さん達を千切っては投げ~千切っては投げ~、10分くらいで不良さん達が積みあがった山の上でさっちゃん一人が立ってたよ~」
……言葉も、なかった。いやでも……あの斉藤なら有り得るか?
「えっと……それでその金剛君は?」
やはり大悟も金剛君のその後が気になった様で聞いていた。
「金剛君もさっちゃんにやられちゃって、その後体育館裏には来れなかったんだ~」
……恐らく金剛君は、なごみさんに告白するつもりだったのだろう。それを卒業式の日にしようとして思わぬ敵襲、迎え撃とうとするもまさかの斉藤さん登場で敵諸共リタイア、告白もできず現在に至る、といったところか。無残としか言いようがない。
「悲しいな……」
「ああ、悲しいよ……」
「?」
僕が大悟に共感する中、なごみさんは何のことなのか理解できなかった。
そして、そのまま昼休みは終わり、午後の授業に移るのだった。