ショートカット登校(↑)
書くのが遅くなってしまったくそう。
「どおすんだよこれ!?俺もうこれ確実に遅刻だろ!?ていうかここどこ!?」
「はっはっはっ、さっきまで変な事尽くしだったのに遅刻することで一番うろたえるとは思わなかったよ」
ここまでほとんど異常な状況に遭っていたにもかかわらず、彼が動揺したのはとても普通のことだったことに、ギギは軽く笑った。
「当たり前だ!今年の俺の目標は『無遅刻無欠席』だからな!!」
「うわお、普通だね。ちなみにここは『好野公園』だよ。君の制服は北原高校のものだからここからの距離は大体5キロだから100m10秒で走れる足で走り続けられたら単純計算で8分位で着くよ。やったね、大記録だ♪」
「できるか!!」
これはさすがに無茶があった。
「まあ確かあの高校は30分には門が閉まるはずだからどっちみち間に合わないね」
「そうだったああ!!」
余りの絶望的状況に、僕は地面に手をついた。
「仕方ない。原因の一端は僕にあるんだ。間に合わせてみせるよ」
「はっ?いや、お前の身体能力が凄いのは分かるけど流石に無理だろ」
「まあ普通の道ならそうかもね」
「普通の?」
「そう、僕らが行くのは………」
そう言ってギギは指を上に指して、
「直線、つまり上からだよ」
…………………………え?
「ハハハハハ!!愉快愉快、愉快だね!!一回屋根の上を走るのをやってみたかったんだ!!これはいい!!」
「まさか本当に上から行くとは……」
今僕等は、というかギギは屋根の上を走っている。(ちなみに僕はおんぶのような形で背負われている)民家の屋根と屋根との間はジャンプして渡っている。
「屋根を渡るっていうのも中々いいね!今度からやってみたら?」
「無茶言うな!!途中で落ちるわ!!」
相も変わらず笑みを浮かべながら走るギギ。そしてそれに対して突っ込む僕。正直自分でなんだこれと思った。
「そもそもこんなことになったのはお前のせいなんだから少しは自嘲しろ!!」
「助けられたのにそれ言う?少しショックだなぁ……」
全くショックを受けたように見えない。口元が完全に笑っている。
「さあ、あともう少しで……って、あれ?」
「どうした?」
「ソーラーパネルの屋根だね」
「はっ?」
前を見ると確かに数件先の屋根がソーラーパネルになっていた。光が反射して結構眩しい。
「あれ踏んでも大丈夫かな?割れたりしない?」
「気にするなら避ければいいだろ!?」
「ここまで直線で来たからさ、このまままっすぐ進みたいじゃん!!だから……」
「だから……?」
「跳ぶ!!」
ソーラーパネルの前の屋根の端でギギは力を込めて一気に跳躍した。
「うおおおおおおおおおおお!?」
「あっはっはっは!!大分飛んだね!!」
「どんだけ飛んでんだ!!」
ギギは跳躍した。優に8mは跳んでいる。最初も思ったが、明らかにギギの身体能力は人間離れしている。し過ぎている。
「お前一体どういう体してんだ?どう考えても普通じゃないぞ?」
「別に答えてもいいけど…………そろそろ着くよ?」
「着く?」
「思いっきり跳び過ぎちゃってさ、このまま北原高校の校庭に墜……着地するとこなんだよね」
「おいちょっと待て今墜落って言いかけたよな!?」
「大丈夫だよ多分」
「多分て何だああああ!?」
そんなことを言っている間にも、徐々に地面が近づいてくる。
「それでは皆さん、シートベルトをお締め下さい♪」
「ないわああああああ!?」
そうして僕とギギは、校庭に爆音と砂埃を大量に巻き上げながら着地した。
「何だ!?何か落ちてきたぞ!?」
「人じゃなかったか!?」
「一体誰だ!!」
校舎から教師・生徒が窓から顔を出し校庭を眺めている。その有様を見て何が起きたのかと更に野次馬が集まった。
一方、
「よし、無事に到着!!さっき見えた時計だとまだ28分だからセーフだね!!……て、あれ?」
何事もなかったかのように少年の方を向いたギギだったが、背負われていた少年は余りの衝撃で気絶していた。
「ありゃりゃ、これはちょっとやりすぎたかな?ま、とりあえず到着したし、万事OKだね、一真君」
ギギはまだ名乗ってもいない筈の少年の名前を呟き、少し微笑んだ。