飴と誤解とクッキーと
昨日作ったクッキーがカバンの中に入っている。
そして、前方から走ってくるのは………………ワンコだからなのか?だから、鼻がきくのか?
放課後、帰り支度を整えて廊下に出たら前方より生徒会長出現!
ヒロインちゃんは放課後イベントをこなすためなのか、すでに教室に居ない。
ワンコ先輩を回避するために教室にも一度入ろうとしたら八尾君がすぐ側にいて首をかしげた。
「忘れ物?」
首かしげただけでこの可愛さ!
抱き締めたら訴えられるよな?
などと思ったその時突然頭をつかまれた。
「よう、お前は本当にメールも電話もしてこねーな!なんだ?連絡先交換した意味は無いのか?」
私の頭をつかんでいるのが二階堂君だと思っただけで、血の気が引いた。
攻略対象者が3人揃うとか何の嫌がらせだろうか?
二階堂君にいたっては、言ってる意味がわからない?
頭を打った次の日にメールしたろ?
それ以外にメールも、電話もするわけないじゃん!
むしろ無かったものとして消去したいのに…
「に、二階堂君、西田さんをはなしてよ。」
「八尾君!いい人!」
思わず抱きつきたかった。…………しないよ。…もちろん。
「八尾には関係ない。」
いじめっこ~って叫んだらきっとつかんでるだけですんでいるこの手がアイアンクローになると思う。
「君達どうしたの?」
とうとうワンコ先輩登場です。
「頭痛くなってきた。」
誰にも聞こえないように小さく呟いたのにワンコ先輩にはきこえてしまったらしい。
「えっ?大丈夫?保健室いく?」
この人は…ワンコだからきこえたのかな?
しかも保健室とか何で攻略対象者増やさなきゃいけないんですか?
「大丈夫で~す。」
「そう?二階堂、手はなしてあげてくれる?」
「ハイ!」
やけに礼儀正しく二階堂君は返事をして私から手をはなした。
「七宮会長は何でこんな所に?八尾に会いに?」
二階堂君はいじめっこの姿を隠してワンコ先輩に話しかけた。
「ううん。ニッシーに会いに!」
「私…ですか?」
ワンコ先輩は私の手を掴むとニコッと笑った。
「ほら俺ニッシーに貰ってばかりだから、たまにはお返ししないとだと思って。」
ワンコ先輩は飴の沢山入った可愛い瓶を私の手にのせた。
「可愛い!七先輩ありがとうございます!嬉しいです!」
「良かった!ニッシーはたまにキツいから、いらないって言われたらどうしようかと思った。」
ワンコ先輩は嬉しそうに笑った。
「私は七先輩にそう思われてたんですね…」
「えっ?いや、それは。」
「わかりました。七先輩が変なもの持ってきたら、全力で拒否します!」
「ごめん。ごめんなさい。持ってくる物のハードルを上げないで~!」
私はクスクス笑いながらカバンの中に瓶を入れてクッキーを取り出した。
「お手。」
「ワン!」
ワンコ先輩は反射的に手を私の手にのせた。
私はいつものように、ワンコ先輩の手をかえすと、ワンコ先輩にあげる用のクッキーをのせた。
「わ~い!…………ってお返しあげたばっかりなのに、またもらうとか…」
「いらないなら、返してください。」
「いるよ!ニッシーのクッキー我慢するとか無理だよ!」
私はまたクスクス笑った。
私が笑うとワンコ先輩も笑ってくれた。
「やっぱり仲良しだよね。春ちゃんと西田さん。」
八尾君にそう言われ、ワンコ先輩は嬉しそうに言った。
「飼い主だから!」
「アホなワンコは飼いません。」
「酷い!」
つい、いじめたくなるんだよね!ワンコ先輩って。
「七宮会長?」
二階堂君は信じられない物を見る顔をしていた。
「二階堂君は春ちゃんが憧れなんだよ。」
八尾君の言葉にワンコ先輩を指差して言った。
「アホなワンコなのに?」
「ニッシー!酷いよ~!」
二階堂君は眉間にシワを寄せた。
「……七宮会長は、バスケの凄い選手だったし生徒会長やってるし優しいし頭良いし…」
二階堂君はまだワンコ先輩のワンコの部分を受け入れられないようすだった。
私は、そんな二階堂君を見なかったふりして八尾君にカバンからクッキーを出してあげた。
今日はプレゼント用に小分けのクッキーの袋を準備していた。
「あ、ありがとう、西田さんのクッキー本当に嬉しい。」
八尾君は柔らかい笑顔を向けてくれた。
癒やされる!
「俺には?」
二階堂君に言われ、フリーズしてしまった。
「なんだよ!」
「いるの?」
「ダメなのかよ…」
二階堂君は拗ねたような顔をした。
ヤバイ、これがいわゆるギャップ萌えってやつか~。
私は、ついクッキーを手渡してしまった。
「…サンキュ。」
ギャップ萌え……………怖い………逆らえる気がしない。
「ひぃ様は、女の子のどんなしぐさに、グッとくる?」
「…また、意味のわからん事を。」
柊君が落とされないための参考にしようと思っただけなんだけど?
「そうだな~………笑顔とか?」
「ちょろいな」
「おい!真面目に言ったんだぞ!」
私はいれたての紅茶を柊君の前に出しながら言った。
「そんなんで好きになってたら、どんな女でもひぃ様を攻略出来ちゃうじゃん。」
「お前がきいたのは、グッとくる時だろうが!好きな女が何したらグッと来るか?だろうが。」
地味に怒られた。
「なら、何したら好きになる?」
柊君は深く溜め息を吐き出すと言った。
「何?お前は俺を落とす気なの?」
凄い誤解された。
「いや、そうじゃなくて…今日隣の席の八尾君可愛いな~って思ったり、隣のクラスの二階堂君がギャップ萌えだったりしたもんで…ひぃ様はどんな時にグッとくるのかな~って思ったの。」
ひぃ様はあからさまに顔をひきつらせた。
「八尾と二階堂って奴らは、もしかして生徒メンバーの二人か?」
そう言えば先週選挙があって生徒会長以外の生徒会メンバーが決まったんだっけ?
「たぶん、その二人。」
柊君は私から視線をそらした。
「お前は俺にはグッときたりしないんだろ?」
拗ねてるのか?
「グッときたりするよ。………………でもひぃ様には笑顔の時にグッとくるかも?」
ひぃ様は驚いた顔をした後呆れたように笑った。
「お前、人の事言えねえじゃねえか。」
「ですよね~。」
二人で笑いあってからキッチンにむかった。
その途中、カバンに飴の瓶が入っているのを思い出して取り出した。
色とりどりの小さな飴がビー玉のようだ。
それを少し眺めていると、柊君がそれに気がついた。
「なにそれ、トイレの芳香剤?」
「やめてよ!飴だよ!芳香剤にてるけど、食べ物!」
柊君は私から瓶をとると言った。
「可愛いじゃん!なに、買ったの?」
私は首を横にふった。
「ワンコ先輩からもらった。」
「………へー、でもお前家で飴食うの?」
私はハッとした。
そうだ、私は外でしか飴を食べない。
家では食べる気にならなくて溶けて、酷い状態にしたことが何度もある。
「可愛いのに…」
すると、柊君が言った。
「……1時間待ってろ。」
そう言って家から出ていた。
1時間後、柊君は可愛い細工の細かい小物入れを私に手渡した。
「へ?なに?」
「飴ケース。」
「ヘ?」
小物入れは、よくよく見ると大きめなタブレットケースのようになっていた。
「凄い!」
「もともとタブレットケースにしようとして、失敗したやつ。タブレットケースにしてはでかすぎだけど、その飴小さいからこれで持ち運べるだろ?」
「ありがとう!しかも、この細工可愛い。」
「柊の葉に蝶と蜘蛛。なんか盛りすぎか?」
私は首を横にふった。
「何だかダークで格好いい!これ、大好きなデザイン。」
柊君は柔らかく笑った。
「柊は魔除けだから、俺だと思ってコイツ使ってやって。」
「うん、持ち歩く!ひぃ様だと思ってお守りにする。」
柊君は照れたように笑った。
柊君、けっこう、嫉妬深い?