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"忠誠"影森蒼太目線

美鈴様と影森さんの馴れ初めです。


影森さんは眼鏡の似合う大人の男のイメージです。

俺が美鈴様の専属運転手になったのは偶然だった。

たまたま美鈴様の父親である社長にたのまれて美鈴様を車で家まで送ったのがきっかけだ。

美鈴様は車に酔いやすいらしいが、なぜか俺の運転では酔わなかった。

ただそれだけ。

元々は社長の右腕秘書として彼の仕事のサポートとして半分以上をつとめていたのに、美鈴様が俺の運転では酔わなかったと言う事実だけで俺は彼女の専属運転手に任命された。

最初はふざけるなと思った。

こんな小娘の面倒をみなければいけない理由がわからないと本気で思った。


美鈴様は我が儘の言えない女の子だった。

車に乗る前に申し訳なさそうに頭を下げて一言呟く。

「いつもすみません。」

「美鈴様、お気になさらないで下さい。」

内心腹が立っても彼女にあたることが出来る立場ではなかった。


彼女の専属運転手になったせいで俺に休みらしい休みはなくなった。

休みの日でも彼女が出掛けると言えばすぐに車を走らせた。

彼女が学校に行っている時間は社長の仕事のサポートに戻った。

勿論、前よりは仕事の量は激減したが俺の休みなんてあってないようなものだった。

彼女が服を買いに行くと言えば車を出し、友達と遊ぶと言えば車を出した。

「影森さんはいつ休んでいるんですか?」

お前がそれを言うか?

「そうですね。いつですかね?」

つい、俺が呟いた言葉に彼女は傷ついたようだった。

それから彼女は土日祝日には俺を呼びつけなくなった。

それと同時に俺は寂しくなった。

矛盾している。

あんなにムカついていたのによばれなくなると寂しい。

ルームミラーごしに盗み見る彼女の顔を思い出すようになったのもこのころだった。

美鈴様は車の中でめったに喋ったりしなかった。

美少女って言葉がぴったりだ。

たまに聴く声は鈴をならしたようで可愛い。

あの声で好きだと言われたら………

そんなことを考えるようになった。

「影森さん、いつもありがとうございます。」

「美鈴様のためなら苦にもなりません。」

「影森さんは嘘つきですね。」

美鈴様の言葉にゾクゾクした。

嘘つき。

そんな言葉すら甘美に感じてしまう。

変態。

そんな言葉が浮かんだ。

「私は貴方がお父様の右腕だって知ってますよ。私のお守りなんてしてる場合ではないでしょ?」

「もう、違いますよ。」

彼女は傷ついた顔をして涙を一筋流した。

「み、美鈴様?」

「ごめんなさい。私は貴方から奪ってはいけないものをたくさん奪ってしまっています。」

ポロポロとこぼれる涙が美しくて俺は車を止めた。

「美鈴様。私のために泣いてくださっていると自惚れてもよろしいのでしょうか?」

驚いた顔をした美鈴様は涙がいっぱいの瞳がキラキラしていて美しかった。

「美鈴様が許してくださるのなら、運転席からおりて美鈴様の横に行き貴女を抱き締めたい。」

「貴方………何を言ってるの?」

俺は運転席をおりて彼女の元へむかった。

俺がドアを開けると、美鈴様は飛び上がるように驚いて顔を真っ赤にした。

「貴女って方は………なんて反応をするのですか?」

「あ、貴方がからかうのがいけないわ!」

俺は彼女の横に座ると彼女を抱き締めた。

「ヘ?………え?な、なんなん………」

「美鈴様。お慕い申し上げております。ですので、私の全てはあなた様のものでございます。」

「影森さん………」

美鈴様は体を強ばらせている。

「貴女の全てが欲しい。」

思わず呟いていた。

「………私には、許嫁が居ます。」

「存じ上げております。」

「………解っているのに?」

「この思いは止められる気がしません。」

俺は彼女の唇に自分のを重ねた。

唇をはなすと美鈴様は驚いた顔だった。

泣いて嫌がるかと思った。

抵抗するわけでもなく驚いた顔で俺の顔を見つめる美鈴様。

俺は調子にのって彼女の唇をむさぼった。

次に彼女の唇をはなすと、彼女は目に涙を溜め真っ赤な顔で俺を見ていた。

「そんな顔されるとたまらないんですが。」

「な、何を言ってるの?」

「薄く口を開いてくれませんか?」

「な、何でですか?」

「キスするからですよ。」

彼女は驚いた顔をした。

俺は彼女の唇を指でなぞる。

「私は悪い大人ですね。社長の大事な貴女の事が欲しくてたまらない。貴女に全てを捧げます。ですから、たまにで結構ですのでご褒美としてキスさせてくださいませんか?それだけで我慢いたしますから。どうか………」

「嫌です。………嫌。」

俺の勝手を彼女に押しつけるのは無理なようだ。

俺はゆっくりと彼女からはなれようとした。

しかしそれは叶わなかった。

美鈴様は俺の胸元の服をつかんではなさない。

「美鈴様。」

「私はずるい子供なのです。父の傍らに居る貴方があまりに素敵だったから少しだけ側に居たかった。………父が貴方を私の運転手にするなんて思ってなかった。」

彼女の綺麗な瞳から綺麗な涙がこぼれ落ちる。

「貴方の時間を奪い、貴方の仕事を奪った。私の我が儘で貴方のたくさんのものを私が奪ってきた。それなのに私に全てをくれるのですか?私を欲しいと言ってくれるのですか?私を恨んでいないのですか?」

最初の頃はそうかも知れない。

でも、今は美鈴様の側からはなれたくない。

「恨んでいません。今はむしろ社長に感謝すらしています。」

これはもしかしたら………

「美鈴様。お慕い申し上げています。」

俺は深く深くキスをした。

「私も貴方が………」

彼女の言葉を打ち消すようにキスを繰り返えした。

「か、影森、影森さん!」

彼女は俺の顔を押しながら抵抗する。

「はい。なんでしょうか?」

爽やかに笑顔を作ると彼女は小さな声で言った。

「影森さんを全て下さるのなら、影森さんは私の彼氏になってくださるって事かしら?」

彼氏。

甘美な言葉に頭の奥の方が痺れる。

「私を彼氏にしてくださるのですか?」

「なって欲しいの。」

俺はさらに彼女の唇をむさぼったのだった。



あの日の美鈴様はとびきり可愛かった。

あの日の事を思い出すだけで顔がにやけそうになる。

暫くして、許嫁との話がなくなったと聞いたときの俺の喜びは例えようがない。

俺のかたわらで規則正しい寝息をたてる美鈴様の頭を撫でながら小さく呟く。

「俺は貴女のものです。ですから、私にも貴女を少しだけ下さいませんか。」

俺の小さな呟きに彼女はゆっくり目を覚まし笑顔を作ると言った。

「嫌です。貴方の全てをくださるなら、貴方も私の全てをもらって下さい。」

そのあと俺の理性が飛んでしまったのは仕方がない事だろう。

今日も俺は俺のせいで目に涙を溜め可愛い彼女を見つめて誓うのだ、一生お側でお仕え申し上げますと。

影森さんはロールキャベツ男子ってやつですかね?


MぽいS?

ヤンデレぎみ?


き、気のせいじゃないかな?


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