"勝てる気がしない"七宮春人目線
駅前のファーストフードの店の窓際の席に座りハンバーガーを頬張る一条に向かい合う形で座りテーブルに突っ伏してどれぐらいがたっただろう。
「七宮~。いつまでそうしてんだ?」
一条に奢るからと無理矢理ここえ連れてきたのは俺の方だ。
「一条………一条はいつから、かなさんが………その、俺の事を好きだって知ったの?」
「中学の頃だったか?お前が楓の回りをチョロチョロしてる頃だったかな?」
「そっ、そんな前!」
一条はアイスコーヒーを飲み始めた。
「楓がお前の事を意識しなかったのは六木の好きな人だって知ってたからってのもあるんじゃないか?」
「………なんと言ったら良いのか………」
「で?お前はどうしたいわけ?」
どうしたい?
どうって、かなさんは俺の事を一番解ってくれる幼馴染みで、綺麗で可愛くていつも俺の横に居て………
「だって俺は失恋したばっかりなんだよ!」
一条はアイスコーヒーを置くとポテトを俺の方にむけた。
「七宮は六木が自分を好きだって知ってどう思った?」
「どうって……」
驚いたし………嬉しかった。
「お前さ、楓にフラれてもあんまりショックじゃなさそうだったじゃん。………楓を好きだって想ってたのが嘘だとは言わねえけど、もっと前から吹っ切れてたんじゃないか?じゃなかったら俺に相談しようと思わねえだろ?」
一条の言い分は解る。
夏休みに二人が一緒に生活してるのを見て勝ち目はないと思った。
ニッシーの特別はずっと一条でニッシーをずっと守ってきたのも一条だった。
それが解って負けたって思ったんだ。
俺は一条が俺の方にむけたポテトにかじりついた。
「だったら?」
一条は呆れたようにため息をついた。
「吹っ切る時隣に居てくれた奴が居るだろが。だから、お前は悩んでんだよ。」
隣に居てくれた人。
かなさんは俺が凹んでる時はココナッツクッキーを焼いてくれる。
ニッシーと同じ家庭科部だったかなさんもお料理上手でニッシーのお菓子も美味しいけど、かなさんのお菓子は俺を安心させるから好きだ。
二階堂の別荘から帰って来た時もかなさんはココナッツクッキーを焼いてくれた。
「付き合う気がないやつが悩むかよ。」
「だって!ニッシーにフラれたからかなさんを選んだみたいに思われたくない。」
口にして気がついた。
かなさんが好きだ。
「お前が六木をフラれた傷を癒すために利用して卑怯だと思うのと同じように六木もフラれた傷心につけこんで卑怯だと思ってると思うが。」
「………」
一条は何でそんなにもかなさんの事が解るんだ?
だって俺の方がかなさんとは一緒にいるはずだろ!
一条に解って何で俺には解らない?
「………七宮、俺と六木は一緒だ。一番側に居るのに意識してもらえない。兄弟のように思われて、でも支えたいから側に居る。だから六木の事は誰よりも解る気がするし、だから六木は俺に味方してくれたと思ってる。」
一条はまた俺の方にポテトをむけた。
俺はそれにかじりついて考えた。
「好きになっても良いってこと?」
「むしろ好きになってやれよ。」
「でもさ!」
「あ、六木と楓。」
一条の目線を追うと、ガラスの向こう側で手をふるかなさんとニッシーが居た。
聞かれてないよね!
かなり焦ってしまう俺に一条は笑ってポテトをむけた。
「さっき来たばっかだしガラス厚いから聞こえてねえよ。」
俺はホッとして一条のポテトにかじりついた。
少ししてニッシーとかなさんが店内に入ってきて笑った。
「ひぃ様なにワンコ先輩を餌付けしてるの?ハタからみたらホモっプルみたいだよ。」
ニッシーの言葉に一条と俺は顔をしかめた。
「一条会長ズルいです。私もそれやりたい。」
かなさんは真顔でそう言った。
「俺は楓と帰るから七宮にいくらでも餌付けしていいぞ。」
そう言うと一条はかなさんに席を譲った。
「俺はワンコに興味ないから飼い主に返すよ。」
「ありがとうございます一条会長。カエちゃんまた明日ね!」
「奏ちゃん七先輩、また明日!」
そう言うと一条はニッシーの肩を抱いて帰って行った。
「春人君は一条会長と何話してたの?」
「いや、………色々と相談に………」
「私には言えないこと?」
言える訳がない。
「………良いけど。でも、私に出来ることがあったら言ってね!春人君の悩み事解決できるように頑張るから。」
可愛い笑顔で俺に優しい言葉をくれるかなさん。
「かなさん、好きになっちゃうからそんな可愛く笑わないで。」
俺の言葉にかなさんは真っ赤になってしまった。
照れ顔ももう反則だと言いたいぐらい破壊的な可愛さだ。
「うん、その照れ顔も可愛から。」
俺の言葉1つでかなさんはかなり可愛く動揺して、顔を両手で隠してしまったが耳まで赤い。
「春人君………み、みないで。」
かなさんのその可愛い反応に俺の胸は撃ち抜かれてしまった。
「かなさん………可愛すぎるんだけど!…………好きになっても良い?」
かなさんは指の隙間から俺の顔を見た。
「可愛い。」
「春人君…恥ずかしいセリフ禁止。」
「好きになっちゃ駄目?やっぱりこんな早くニッシーからかなさんを好きになるのは嫌かな?」
「………嬉しいです。」
かなさんは顔を隠したままうつ向いた。
「ワンコじゃなくて狼だよって一条に言われたことがあるんだけど………当たってるかも。カナさんが可愛すぎてキスしたいんだけど駄目?」
カナさんは真っ赤なままの顔に驚きをにじます。
驚きすぎて手をはずしてしまっている。
可愛いな~。
「駄目かな?」
「だ、駄目とかじゃなくて………展開が早すぎて………えっ?」
「これからもよろしくね。かなさん。俺は鈍くて鈍感な駄目な奴だけど、カナさんを幸せにしたいって気持ちが今は凄いんだ。だから俺にかなさんを幸せにさせて下さい。」
俺の言葉にかなさんはコクコクと頷いた。
俺はテーブルに置かれた、かなさんの手を握った。
今までずっと側で支えてくれていたのによそ見してごめん。
そんな気持ちを込めたけどきっとかなさんには解らないだろうな。
かなさんは真っ赤な顔をしたまま微笑んだ。
「もう、よそ見ししないでね。」
何で解ってしまうんだろう?
その一言で俺は思ってしまった。
ああ、俺はこの人に勝てる気がしないと。




