表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/81

ヒロインとお菓子

「おはよう西田さん、今日はゆっくりだね?」

朝のホームルームが始まる5分前に教室に滑り込んだ時は、うっすら汗を浮かべていた。

「遅刻するかと思った。」

私は肩で、息をした。

心配そうにしている八尾君に私は笑顔を作る。

「おはよう、八尾君。」

「うん、おはよう…頭……大丈夫だったんだね!良かった…」

「ご心配をお掛けしました。」

「西田さんが無事なら。」

八尾君とそんな話をしていると携帯がなった。

携帯を開いて確認すると三神先生からのメールだった。

『おはよう!さっき学校来たのが見えた!話は変わって二階堂がメールも電話も寄越さないって、キレたメールをおくって来るから連絡してあげて。』

私は深く溜め息をついた。

「…面倒臭い。」

そう口からもれたが、そのまま簡単なメールを作り二階堂君におくった。

『あっそ。』

おくってすぐにそんなメールがかえってきた。

「西田さんが無事か、二階堂君あれでも心配してたんだよ。」

「えっ?あれで?」

八尾君はニコニコしている。

可愛いなーこいつ、頭なでたら癒されそう。

「八尾君!西山さんおはよう!」

その時ヒロインちゃんに挨拶された。

「数井さんおはよう!」

「おはよう…数井さん、西山じゃなくて西田さんだよ!」

八尾君、わざわざなおさなくても、彼女は君にしか興味がないよ!

「あっ、ごめんなさい。私名前覚えるの苦手で…」

チキショーなにやっても可愛いなー、羨ましい。

「気にしてないよ~!………にしても、数井さんってさ本当可愛いよね!髪の毛サラサラだしお肌ツルツル…羨まし。」

ヒロインちゃんはとびきりの笑顔を作った。

「そんなことないよ!」

腹のなかで何を考えているかわからなくても、可愛い者は可愛い。

「私、女子力低いから数井さんに憧れる。」

ヒロインちゃんは満足そうな笑顔だ。

「西田さんは女子力高いと思うけど…」

八尾君の言葉に寒気がした。

「あっ、いや、この前、春ちゃんとわけて食べたクッキー凄く美味しかったから。」

「あざーす。」

わざと体育会系に返事をする。

ヒロインちゃんの方から冷気を感じるので見ないようにした。

「西田さんは……生徒会長と知り合いなの?」

思わずヒロインちゃんの方を見てフリーズしてしまった。

「たしか、八尾君が言う春ちゃんって生徒会長の事だよね?」

怖い怖い怖い怖い…

めちゃくちゃ可愛い笑顔なのに、冷気が半端ないです。

「西田さんと春ちゃんは同じ中学で知り合いらしいよ。」

「そうなんだ~、仲良いの?」

「うん。めちゃくちゃ仲良しみたいだったよ。」

余計なことをペラペラ喋んな。

私は顔がひきつっていると自覚しながらも無理矢理の笑顔を作る。

「仲良しだなんて…七先輩は私の作るお菓子に興味があっただけで、私には興味ないよ!数井さんはお菓子とか作ったりする?」

話を何とかヒロインちゃんに向けると冷気をふくまない可愛い笑顔を八尾君に向けた。

「私もお菓子作って来たら食べてくれる?」

「…うん。嬉しいな!」

八尾君も流石のヒロインスマイルにやられて笑顔を作る。

その時、担任が教室に入って来たので、みんな席についた。

「こんな、イベントあったっけ?」

後ろの席でヒロインちゃんが呟いたのがきこえた。




家に帰ると、私はクッキーを焼くことにした。

柊君の好きなアッサムティーの茶葉をすって入れたクッキー。

「ひぃ様を攻略させないためには…」

考え事を巡らせる時、お菓子を作りながらだと無心に考えられる私はクッキーを焼くことにしたのだ。

あの時のノートをちゃんと、みておけば良かったと今更ながら後悔する。

思い出そうと一心不乱にクッキーをつくる。


オーブンから良い匂いがただよってきた時、家の呼び鈴がなった。

家のドアを開けると、柊君が立っていた。

「よ!良い匂いだな。」

ドアを取り合えず閉めようとしたが足を滑り込ませてドアを閉まらないようにされた。

「悪徳セールスお断り!」

「セールスじゃねーだろ。」

「冗談だよ~、ちょうどもうすぐクッキーが焼き上がるから、よってく?」

「勿論!」

私は柊君を家に招き入れた。


柊君はクッキーが焼き上がるまで私のやりかけの乙女ゲーのスキルUPをやってくれていた。

「ヤベ、イベントはじまった。」

「わ~、そのままにしといて。」

「わ~た。」

私は焼き上がったクッキーを皿にのせて柊君に手渡し代わりにコントローラーをうけとる。

「イベントスチル綺麗!テンション上がる~」

「はいはい………俺がこの台詞言ったらトキメクか?」

私は柊君の方を冷めた目でみた。

「3次元が2次元の台詞吐いたら引く。」

「ですよね~。」

柊君はクッキーを美味しそうに食べてくれた。

「美味し?」

「最高!」

柊君の言葉に嬉しくなる。

「夕飯も食べてくよね?なに食べたい?」

「オムライス!」

「わかった!親子丼ね!」

柊君はフリーズしてから怨めしそうに言った。

「作るもの決まってんなら…きくなよ。」

「だって、この前食べたばっかじゃん。」

「親子丼も好きだから良いけど…」

「プリンもあるよ!」

柊君は私の方を見ると笑った。

「やっぱり、楓は俺の嫁になるしかないな。」

「はいはい。」

私達はいつものやり取りをして笑いあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ