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自覚

今日は全然寝られない。

頭が勝手に柊君の言葉を考え始める。

考えないようにしても、目を閉じてみても勝手に思い出して考えてしまう。

「寝れない。」

言葉にしてみたら目が冴えてしまった。

その時部屋のドアが開いた。

思わず目を強くつぶる。

「………ただいま楓。」

お父さんの声に目を開く。

お父さんは優しい笑顔を作って私の頭を撫でてくれた。

「起こしちゃったかな?」

「うんん。起きてたの。………寝れないの。」

お父さんは優しい笑顔のまま言った。

「お父さんに相談出来る事かな?」

私はベッドから飛び起きて言った。

「ひぃ様の事なの。」

私はお父さんに今悩んでいることをすべて話した。

「ひぃ様をお兄ちゃん以外に思うって事がよくわからなくなって………どうしたら良いんだろ?」

お父さんは深くため息をついた。

「娘に恋の相談をうけるのがこんなにも辛いことだなんて。」

お父さんの呟きに申し訳なくなる。

「こんな話してごめんなさい。」

私がシュンとしたのを見てお父さんは言った。

「ま、知らないうちに彼氏がいて報告が有るって言われて何かと思ったら孫がお腹に居たなんて、怖い話もあるぐらいなのに俺に相談してくれたのが嬉しかったりもするんだよ。」

お父さんは苦笑いを浮かべた。

「自分の気持ちが解らなくて………告白された訳じゃないし………」

「じゃあ、想像しよう。ひぃ君が居なくなってしまう事を。」

なにを言われたのか解らなかった。

「ひぃ様が………居ない?」

「いつも側にいて楓を支えてくれていたひぃ君が居なくなる。」

柊君が居なくなる。

「楓はひぃ君が居なくなってしまったら、どうなってしまうかな?」

柊君が居ない。

「………」

目から涙がこぼれ落ちた。

「悲しいかい?」

「うん…」

「寂しいかい?」

「うん……」

お父さんは優しく頭を撫でた。

「ひぃ君は俺の代わりに楓の側に居てくれた人だよね。なら、身内として考えてみよう。」

お父さんの声は優しくて言葉が染み込んでいくようだった。

「ひぃ君が楓以外の人と並んで歩いている。想像して。楓じゃない人がひぃ君の隣に居る。そして、楓の隣に居る人もひぃ君じゃない人だ。」

想像する。

柊君の隣に知らない女の人。

私の隣に柊君じゃない男の人。

………

柊君の隣に知らない女の人想像ができない。

柊君が私じゃない人に優しく笑いかけて甘やかす。

私じゃない人と楽しそうにしている姿。

「嫌だ。」

「楓はひぃ君が他の女の人と一緒にいるのは嫌なんだね。」

「うん。」

お父さんはとびきり優しい笑顔を私に向ける。

「それが答えだと思うよ。楓はひぃ君の特別で居たい。それって好きだって事だろ?ひぃ君が他の女に触られたら嫌じゃないか?」

「嫌かも………しれない。」

「今はそれで良いんじゃないかな?楓の特別はひぃ君だって事だけが解っていれば、それで良いんじゃないかな?」

お父さんは苦笑いを浮かべる。

「まだまだお父さんが一番だと思っててほしかったけどね。」

「お父さんは特別だよ。ひぃ様とは全然違う特別だよ。」

「ありがとう。俺も楓が特別だよ。」

私とお父さんはゆっくり笑いあうと、抱き締めあった。

「お父さん大好き。」

「俺も楓が大好きだよ。」

私とお父さんはその夜たくさん話をした。

私のつたない話をお父さんはひとつひとつ解りやすくのみこめるように諭してくれた。

そのお陰で私の中にひとつの答が出た。


私は柊君が好きだ。

お父さん複雑ですよね。

うちの旦那様も娘が好きな男をつれてきたら泣くって言ってました。

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