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"焦り"一条柊目線

楓ちゃんオーバーヒートのため、一回休み。

楓が熱を出した。

俺のせいだと思う。

最近楓との距離が近くて、嬉しくて調子にのってしまった。

あの時キスするつもりだった。

目の前の顔を赤らめた楓が俺に抱きついてきたうえに上目使いに理性が飛んだ。

唇を見詰め顔を近付ける。

ふと目を見て踏みとどまった。

驚いたような怯えたような目を見てしまった。

踏みとどまって良かったと思う。

楓はそれだけでも俺を意識してくれると思ったし、動揺したのは解った。

逃げ帰るなんていままで無かったからその日の俺は浮かれて、もしかしたら一気にこのままいい方に転がるかと思った。

次の日にはけろっとして家にくるし、昨日の事を友達に相談したら使えないアドバイスしかしないと文句を言う始末。

俺の昨日の頑張り?理性ぶっ飛ばしただけだが、あれは何の効力も持たないなんてアリかよ!って思ったよ実際。

ほっぺにチュウされるなんて思わないから簡単に浮かれたってのも認める。

ほっぺにチュウも熱のせいだろどうせ。

家の楓の部屋にお姫様ダッコで運んで寝かして、アイスノンを頭の下に入れて俺はどうすればいいか悩んだ。

「取り合えず、薬局行ってくるから大人しく寝てろよ。」

楓は苦しそうだし意識もあるのかないのか解らないし、俺は役立たずだし。

俺は取り合えず薬局に急いだ。



「…ひぃ………様?」

「喉乾いたか?何か食べれるか?リンゴあるぞ?」

おでこに熱を取るのか取らないのかのアレを張った楓が目を覚ますと少しだけ安心した。

「ひぃ……様……」

消えそうな楓の声に耳を近付ける。

「手………」

手?

俺が手を近付けると、楓は俺の手を握った。

「へへへ。」

弱々しく笑う楓に胸が締め付けられる思いがした。

「ごめんな。」

俺が焦りすぎたから。

「ひぃ様………ありが…とう。側に………居てくれ…て。」

「側に居ることしか出来ないからな。」

俺が笑うと楓も笑ってくれた。

弱々しいが可愛い笑顔。

独り占めだな。

楓はすぐに寝息をたてはじめた。

「……はー。可愛い。」

俺は空いている方の手で楓の頭を撫でた。

気持ち良さそうな顔をしている。

「やるんじゃなかった。可愛いすぎる。」

キスしてえ。

撫でていた手を頬に滑らせて頬を触ると楓は俺の手にすりよった。

たぶん俺の手が冷たいからだ。

解ってる。解ってるから煽らないでくれ。

くそ。学習しろ俺!

俺が暴走したせいで楓は熱を出してるに決まってる。

俺のせいで苦しんでるんだぞ。

「煽るなよ。マジで。」

俺はすりよる楓を見詰めることしか出来なかった。



看病しながら寝るなんて在り来たりだが、楓が手を離してくれないから仕方がないと思うんだ。

人の動く気配に目を覚ましたが、俺は目を開けるのはやめた。

楓が俺の頭を撫でている。

「ありがとう。」

楓の呟く声がする。

ああ、気持ちがいい。

細い指先が髪の毛をすり抜けていく。

「ひぃ様が居てくれて本当に良かった。」

そのあと頭に柔らかい重みとリップ音がした。

やることまで可愛いな~。

ヤバイ頭がいかれてる。

笑ってしまいたかったが起きているのがバレると不味いから取り合えずこらえる。

暫くすると楓は眠ったようだった。

「楓が大事で仕方ないのに………困らせて悪かった。俺が一番近くに居れてるのに欲張りすぎたよな。」

俺はさっき楓がやってくれたように髪の毛をとかすように撫でた。

「他の男に…取られたくないんだ。好きだ。俺のものになってくれ。………起きてるときに言えよ。くそ、ヘタレ。」

思わず毒づくと俺は部屋を出た。

頭を冷やさないと。

楓は俺にそんなこと望んでない。

今は誰の事も付き合いたいとか楓は考えてないんだから焦るな。

楓の回りに楓の事を好きな男がたくさん居るからって………焦るな。

俺だけ違う学校だけど、焦るな。

兄貴なんて確実に親しいけど恋愛対象に思われないポジションでも………焦るだろ。くそ。

階段の途中でしゃがみこむと俺は頭を抱えた。

たのむ、たのむから俺を見てくれ。

「くそ、好きだ。楓。」

俺はそれだけ呟くと顔を洗いに洗面所に向かった。

おおー柊君がこじらせてます。

楓ちゃん!頑張って!

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