"愛しい朝"一条柊目線
柊君はかなり楓ちゃんLOVEです
「おはよ!ひぃ様、朝だよ。」
目が覚めると目の前に楓の姿があった。
良かった、生きてる。
俺は、ゆっくり彼女の手を掴み引き寄せた。
「こら、起きろ!朝ごはん冷めちゃう。」
最高の脅し文句に笑いがもれる。
「後5分、寝たかった。」
昨日頭を打ってタクシーで帰ってきた楓は、あまりに心配だと言いはる俺を安心させるために、うちに泊まってくれた
泊まる、っと言っても色っぽい事なんていっさいない。
うちの家には鍵のついた部屋がある、楓専用の部屋だ。
楓のために、うちの両親が作った部屋だ。
うちの両親は、息子の俺より楓を可愛がっている。
鍵がついた部屋だからと言って、楓が鍵をかけているのは見たことがないが、両親は俺を信用していないため、万が一にそなえて楓の部屋には鍵がついているのだ。
俺が引き寄せたせいで、俺の上に倒れこんだ楓の頭を優しく撫でる。
「生きてた…良かった………………」
「…ありがとう………………寝るな~。」
楓は、人との距離の取り方を知らない。
母親が居ないのと、父親がたまにしか帰ってこないせいで、人との距離をとりたがる、そのくせ極端に距離を詰められて信頼できる人だと認められればこうやって抱き寄せても嫌がらない。
「ひぃ様のために作ったんだよ。起きてよ。」
あまりの可愛さに思いっきり抱き締めると、流石にもがいた。
「や、止めろ、苦しい。」
俺に対して男だと言う意識が皆無だからこんなことさせてくれてるんだってわかってる。
俺が本気で好きだなんて考えもしないんだろう。
同じ学校に通えたらって本気で受験勉強付き合ってやったのに、うちの学校受けもしなかった。
これ見よがしに、俺と知り合いだとばれたら俺の事を狙ってる女豹達に食い殺されるから危険を避けた、と言われた。
楓の通ってる高校と俺の通ってる高校は姉妹高だ。
楓の通ってる高校の生徒会長はたまに会う。
合同行事があったりするからだ。
姉妹高って事もあって同じなんだが、生徒会長はどの学年でも出来るが推薦で決まる。
七宮春人
楓と同じ中学でよく話に出てきてた奴。
去年の生徒メンバーとして初めて会った時、俺は顔がひきつっていたと思う。
ワンコなんて一瞬も感じさせないイケメン。
こいつが楓の回りをウロチョロしていたかとムカついた。
話してみて、ワンコもわかるようになったが性格が良ければ良いほど楓の側にいてほしくなかった。
それなのに、楓は七宮の居る学校に進学とかムカついた。
「ひぃ様のいれた珈琲が飲みたいんですが?」
「…心を込めて入れましょう。」
俺以外にこんな可愛い顔見せてないと思いたかった。
珈琲を入れて楓に差し出す。
楓は笑顔でそれを受け取り、珈琲の匂いを楽しんだ。
「学校楽しいか?」
「………うん…………」
本当か?なんだ今の間は?
「ひぃ様は、どういう人がタイプ?」
思わず、フリーズしてしまった。
「えっと、何でだ?」
楓は暫くの沈黙の後、言葉を選ぶように言った。
「うちのクラスに、とびきり……美少女が居るんだけど……うん、やっぱ良いや。」
楓は乾いた笑いを浮かべた。
「俺のタイプは、料理上手で俺の入れる珈琲を飲んで喜んでくれて映画の好みが一緒ってのは譲れないな!」
「…ひぃ様と仲良くなれたらけっこうクリア出来そうか?」
「俺と…仲良くなれたらな。」
俺は過去に女子にプレゼントされたお菓子で食中毒で運ばれてから、料理人かキミちゃんの作る料理しか怖くて口に出来なかった。
楓の料理が食べられるのは、楓のお菓子をキミちゃんがこっそり俺にあたえていて楓のお菓子だと分かった時には、楓のお菓子に慣れきってしまっていたからだ。
「楓が嫁に来るのが一番はやい。」
「ハイハイ。」
楓は軽く流すが、俺は本気で言っている。
こいつが嫁に来れば良いのにってさ。