柊君の友達
電話をもらい駅の改札の前で待っていると騒がしい3人が近付いて来る。
「お前らは駅関係ないだろ!帰れよ!」
「ヤダヤダ!楓ちゃん見たい!」
「気色悪い。」
「良いじゃないですか!減るもんじゃないんですから!」
「減る。お前らの存在価値が減る。」
「俺らの方が減るのは理不尽じゃね?」
話しかけるのが躊躇われる。
「………ひぃ様?友達?」
「楓悪いな。コイツらは直ぐに帰るから。」
「可愛い!写メなんか比にならないぐらい可愛い!」
「日曜はデートの邪魔しちゃってすみませんでした。」
テンションの高い方の人は茶色の髪の毛が目を引くちょっとつり目の男の人、もう一人は日曜日に会った黒髪に真面目そうな雰囲気のタレ目の男の人だった。
「あー、ありがとうございます。それとデートじゃないですよ!」
「「………」」
「楓、帰るぞ。」
「えっ?友達と遊ぶんなら私一人で帰るよ!家でもゲームできるし。ひぃ様が友達と居るなんて珍しいし。」
「気にするな。コイツらは友達じゃない。」
「酷いぞ柊!」
「酷いですよ先輩!」
二人に両手を掴まれ柊君は嫌そうだ。
「ご飯食べて帰る?」
「えっ?」
「卵買ってないし、友達をないがしろは良くないよ。」
私の言葉に二人は柊君の手をはなし、私の手を掴んだ。
「「いい人!」」
私は苦笑いが浮かんだ。
「自己紹介がまだだったよね?俺は友基!友基って読んで!」
「自分は東堂正也って言います。宜しく。」
茶髪の人が友基。黒髪の方が東堂正也。覚えた。
「西田楓です。」
「可~愛~い!」
「楓、目を合わせるな。」
私はコクコク頷いた。
「こらー柊はなんなの?友達に彼女も紹介できない駄目人間なの?」
私は思わずキョトンとしてしまった。
「彼女じゃないですよ。」
「本当に?実は付き合ってんじゃない?」
仲が良い自覚はある。
「付き合ってないですよ!」
私は柊君の方を見て笑顔を作った。
「ね。」
柊君はハハハと乾いた笑いを浮かべた。
「じゃあ、俺が立候補しても良い?」
「何でですか?」
「へ?」
「何でですか?会ったばかりの人に好かれる意味が解らない。」
私は視線を外して言った。
「私は人に好かれる意味が解らない。」
私が小さく呟くと、柊君に頭を撫でられた。
私は柊君の方を見て笑顔を作った。
「お前なんかに楓をやるか!殺すぞ。」
「独り占めずるい。」
「殺す。」
柊君は明らかな殺意をにじませた。
「楓さんは一条先輩の事は好きじゃないんですか?」
「大好きだよ。」
聞かれたから答えただけなのに柊君の友達二人は物凄く驚いた顔をした。
「大好きなの?」
「はい。」
「大好きなのに、付き合ってないんですか?」
不思議そうな二人に私が首をかしげると柊君は面倒臭そうに言った。
「浩ちゃんは好きか?」
「大好き!」
満面の笑みだった自信がある。
「浩ちゃんと俺どっちが好きだ?」
「勿論浩ちゃんです。」
拳をにぎりそう力強く言う。
「ですよね~!知ってた。」
柊君は私から視線を外して笑った。
「なんだか可哀想だな柊。」
友基さんは柊君に睨まれていた。
「楓さんは一条先輩の事を何番目くらいに好きなんですか?」
東堂君の言葉に少し考える。
「………2……3番目?」
「ちょっと待て、2番目は誰だ?」
柊君は私の方を見た。
「え?キミちゃん?ひぃ様とキミちゃんは迷う所だけど、キミちゃんが居なかったらひぃ様とは一生仲良くなれなかったと思うから。」
私の言葉に柊君は頭を抱えた。
「キミちゃんか~!キミちゃんじゃ仕方ないか~!」
「大丈夫大丈夫。ひぃ様大好きだよ!」
「ムカつくな~!」
柊君はそう言って私の頭を乱暴に撫でた。
「髪の毛がくしゃくしゃになる~!」
「煩い。」
ひとしきり撫でられて、柊君の手がはなれると私の頭は酷い有り様になっていた。
「酷~い。」
柊君は手櫛で私の髪の毛を直してくれたが、直すぐらいならやらないで欲しかった。
「悪いやり過ぎた。」
「酷い。」
「悪かった。スキル上げ手伝ってやるから。」
「絶対だからね。」
私と柊君は柊君の友達二人に生暖かい目で見つめられているなんて気付きもしなかったのだった。




