"デート(仮)"一条柊目線
柊君を甘やかしてしまう。
ハロウィンの帰り道。
可愛く俺とデートしたいと言われた。
いや、言われてないがあれは言ったも同然だった。
可愛すぎて顔がニヤケる。
楓に見られたら困るから視線をそらして口元を押さえた。
「ひぃ様?聞いてる?」
聞いてるよ、全部叶えてやると告げると楓は凄く喜んだ。
「ひぃ様、ありがとう。大好き。」
俺は耳を疑った。
「今、なんつった?」
大好き?
楓の口からそんな言葉が飛び出すなんて思いもしなかった。
「聞こえなかった?ありがとう。」
ちげーよ!そこじゃねーよ。もっかい言えよ。
大好きだって。
「小悪魔。」
小悪魔以外のなんだってんだよ。
否定してくる姿すら可愛すぎてムカつく。
「楓は俺の嫁。」
「………はいはい。」
何時ものようなやり取りだがなんだか甘さがある気がするのは、脳みそがさっきの大好きでマヒしているからだろう。
「…面白かった~!」
「な!戦闘シーンがマジ格好良かった。」
「ね!」
楓が、見たいと言っていた映画は当たりだった。
楓とスーパーマーケット以外に出かけるなんて、もしかすると初めてかも知れない。
楓は普段しない化粧をうっすらしているし、格好も可愛い。
薄い緑色のワンピースに白いカーディガンを羽織り肩かけショルダーバックは小ぶりな茶色、靴はウエスタンブーツで可愛い。
これは間違いなくデートだろ!
俺は朝、楓の姿を見てからふわふわしたものにおそわれている。
「ひぃ様、このスカート可愛い!」
お前が可愛いよ。
駄目だ!脳みそが腐り始めている。
「………それなら、この上が良いんじゃないか?」
「本当だ!これ買う。」
俺はその二着を楓の手から取り上げた。
「他も見てこい。もっと良いのがあるかも知れないだろ。」
「……うん!でも、ひぃ様を荷物持ちにしちゃって良いの?」
「そのために連れてきたんだろ?遠慮すんな。」
「…うん!ありがとう。」
楓は嬉しそうに笑うと店の中を見て回った。
たぶん楓の性格上他は買わないだろう。
俺は楓に気付かれないように会計を済ます。
「………やっぱりそれだけで良いや。」
やっぱり。
楓は俺の手にある袋を見て固まる。
「ケーキ屋の前にCD屋行って良いか?」
「………良いけど。お金払うよ………」
「いつも飯つくってもらってんだから、これぐらいさせろよ。」
楓は不満げに口を尖らせる。
「ケーキ屋さんは私が奢るからね。絶対だからね。」
可愛いな~。
俺は楓の頭を優しく撫でた。
横に並んで歩くだけで嬉しい。
俺は今日本当に浮かれている。
欲しかったCDを手に取りながらさっきの楓を思い出してニヤケる。
すぐに口元を押さえて笑みを殺す。
「一条先輩!」
突然声をかけてきたのは生徒会の書記をやっている一年だった。
こいつの名前なんだったろ。
「一条先輩もCD買いに来たんですか?洋楽!流石です!」
面倒な奴に会った。
「一条先輩は一人ですか?僕はあそこの友達と来てるんですよ。」
男一人に女3人のグループに視線をやると女3人に手を振られた。
「良かったら、ご一緒して良いですか?」
駄目に決まってんだろ。
「悪いな。連れがいるんだ。」
「じゃあ、お連れさんも一緒に。」
ため息をつきたくなった。
その時だった。
楓が少しだけふくれてあらわれた。
「ひぃ様居た!探しちゃったよ!」
「隠れてねえよ。」
苦笑いを浮かべてそう言うと楓は俺の左手を握った。
「早く行くよ。お腹すいちゃった。」
なんだろ?俺は今日死ぬのか?幸せ過ぎる。
「ひぃ様?」
「ああ、悪い。違うこと考えてた。」
「ちゃんと聞いてよ!浩ちゃんにひぃ様に苛められたって言うよ!」
「聞きます。だから言うな。本当に殺される。」
楓はニコリと笑った。
「言わないよ~。さっき黙って服買った仕返し。」
「心臓に悪い。」
楓は悪戯が成功したように笑った。
可愛い。
俺は楓の頭を撫でる。
「へへへ。」
嬉しそうに笑う楓はさらに可愛い。
「あっ、忘れてた。悪いな。連れに脅されてるから、またな。」
俺は一年の書記に向かってそう言った。
「ひぃ様!」
「脅しただろ。」
「うー、苛めだ~。」
俺は思わずクスクス笑った。
「意地悪だ~。」
「まあまあ、ケーキ奢ってやるから!」
「やった~!………って、私が奢るって約束したでしょ!ひぃ様は私を甘やかすの禁止!ダメ人間になる~!」
俺はさらに笑って言った。
「ダメ人間になれよ!嫁にもらってやる。」
「うーダメ人間嫌だ~!」
何時ものようには返して来なかったが楓は俺の左手を握ったままだったから、本当に怒ってる訳ではないだろう。
「少しぐらい甘やかさせろよ。」
「何時も甘やかされてます!」
「甘やかし足りない。」
俺の言葉に楓は少しだけ赤面した。
可愛いな~。
「わかった、私もひぃ様を甘やかす日を作るのはどう?」
「俺の方が何時も甘やかされてます。」
「サプライズで甘やかすから、覚悟しておいてね!」
楓は一歩も引く気が無いようだ!
さっき悔しそうにしていた楓はすでに笑顔で俺を見つめている。
くそ、可愛い過ぎる。
はっきり言って楓は俺がどれだけ情けなくも楓の可愛さに打ちのめされ負け負けだって思っているなんて想像もしていないのだろう。
俺が余裕のある顔をわざわざ作っているなんて想像もしていないのだろう。
俺は苦笑いを浮かべて言った。
「楽しみにしてる。」
それ以外何て言えば良い?
俺は繋いでいた手を離すと楓の肩を抱き、ケーキ屋に向かうのだった。
もう、それデート以外の何物でもねーよ!ちきしょう!




