ハロウィン
ハロウィン始まりました。
ハロウィン当日がやって来た。
3時で学校が終わり夕方6時から学校が開放され、思い思いのコスプレをした生徒や先生方がお菓子をあげたりもらったりする行事だ。
部活などがイベントや体育館で劇をやっている人達も居る。
マリーさんが作ってくれた和風ドレスはデザインが少しだけ変わっていて、紅い着物の部分に私が柊君からもらった飴ケースのデザインの柊が楓の葉っぱになったバージョンの絵が入っている。
勿論柊君の方には飴ケースそのままの絵が入っていて嫌がっていた。
黒猫のリアルな耳とシッポがキュートで大好きだ。
柊君の方のリアルな狐耳とシッポもふわもこでさわり心地が抜群なはずだ。
まだ触らせてもらっていない。
学校の自分のクラスにつくと、血塗れナース姿のマリナちゃんと血塗れゾンビの警察官姿の八尾くんがお菓子の交換をしていた!
このスチル見たことあるかも!
などと少しだけはしゃいでしまう。
「楓ちゃん可愛い!」
ほどなくしてマリナちゃんが私に気がついた。
「黒猫楓ちゃんとかピッタリすぎてニマニマしちゃう。京君に自慢したいから写メ撮って良い?」
「良いよ!」
私はマリナちゃんに写メを撮ってもらった。
「可愛い!この柄飴ケースの別バージョンだね!」
「飴ケースはひぃ様の着物のデザインだよ!ひぃ様無駄な色気を撒き散らしてるんだよ!」
「この前の双子話の時の衣装?」
「そうなの!目茶苦茶エロっぽい。」
「エロいだけに聞こえるから止めろ。」
振り向くとそこには柊君が立っていた。
「「エロっぽい。」」
私とマリナちゃんがハモると柊君は嫌そうな顔をした。
そこに、ワンコ先輩と二階堂君が現れた。
「一条エロ!ニッシー可愛い!!ってかおそろい………」
ワンコ先輩は狼男………座敷犬のようだけど………
二階堂君は吸血鬼の格好だ。
「二人の衣装は出来が良いね。」
八尾くんが苦笑いで言ってくれた。
「ひぃ様のお母さんのマリーさんが作ってくれたの!」
「忘れてた。この間の写真持ってきたぞ。」
柊君はマリナちゃんに写真を差し出した。
「へ?」
私が?マークをとばすと柊君が言った。
「数井がどうしても双子の時の写真が欲しいって言うから持ってきた。」
「わーい!楓ちゃんの可愛い写真!」
手を出すマリナちゃんに柊君は言った。
「トリックorトリート!写真に落書きされたくなかったらそれにみあった対価を払え。」
柊君の言葉にマリナちゃんしぶしぶ携帯を取り出して、何かを物色してからこそこそと柊君にだけ見えるように携帯の画面を見せた。
「お前が男だったら殺すのに………」
「要らないなら、良いですけど?」
「要ります。これもやるからそれを俺の携帯に宜しく。」
「おまけにこれも送ってあげますよ!送信!!」
柊君は自分の携帯をいじりながら呟いた。
「マジぶん殴りて~!」
何のやり取りをしているのかは解らなかったが、甘い雰囲気では無いことだけはわかった。
「かっ、可愛い~!話には聞いてたけど可愛い過ぎる!」
マリナちゃんは目を輝かせている。
「私じゃない人でやり直して欲しい………」
「駄目だよ!楓ちゃんと一条会長だからこの可愛さとエロさなんでしょ!」
「エロいのはひぃ様だけだもん。」
「誤解を招く言い方をするな!」
ひぃ様に軽く頭をこずかれた。
「いやいや、これはどう見てもひぃ様のフェロモンでしょ!」
私はマリナちゃんの持っている写真を指差して言った。
「そんなもの出してねえよ。」
「「いやいやいやいや、駄々漏れですから。」」
私とマリナちゃんは向かい合って頷きあった。
「えっ?何の話?」
ワンコ先輩にきかれて、私はマリナちゃんが持っている写真を一枚抜くとワンコ先輩に手渡した。
「ひぃ様のお母さんのスタジオで言われるままに撮った写真なんですけど………」
写真を見たワンコ先輩が固まる。
少しだけワンコ先輩に渡した写真をのぞくと、私の手にキスしている写真だった。
「それじゃあわかりづらいから、マリナちゃんひぃ様のフェロモン写真をワンコ先輩に見せたげて!」
「………楓ちゃん!七宮会長が可哀想だから止めたげて!」
「?」
私が首を傾げるとひぃ様が言った。
「フェロモン写真言われる俺は可哀想じゃないのか?」
「一条会長は楽しんだんでしょ!」
私は口を尖らせて言った。
「浩ちゃんに見せたらひぃ様からフェロモンが半端ないって言ってくれたのに~!」
「おまえ、これを浩ちゃんに見せたのか?俺に死ねと?」
「だってマリーさんが浩ちゃんに見せなってくれたよ?」
「ああ、おふくろは俺に死ねと言ってる。」
柊君は視線を落とした。
「大丈夫だよ!浩ちゃん怒ってなかったよ。」
「お前の前で浩ちゃんがキレるわけないだろ!浩ちゃん目茶苦茶怖いんだからな!お前に近付く男はすべて殺したいって言ってたし、たまにビックリするほど殺意こもった目向けられるし。ヤバイ、次浩ちゃん帰ってきたらヤバイ。」
柊君の顔色が青くなる。
「大丈夫だよ!浩ちゃんひぃ様気に入ってるから手加減してくれるよ!ほら、お父さん施設で育ったから、ばかにしたやつ全員ボコってたらしくて、喧嘩なれしてるから手加減してくれるよ!」
「今の聞いて、そっか~!ってなるわけねーだろ!ばか!………ヤバイ、マジ死ぬかも………」
柊君はうなだれた。
私はそんな柊君を無視することにした。
「七先輩、トリックorトリート!お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!」
「すでに悪戯されたみたいな疲労感だよ。」
ワンコ先輩はハハハっと笑うだけだ。
「仕方ないですね。」
私は柊君にもらった飴ケースからピンク色の飴を出すとワンコ先輩の口元に持っていった。
「甘い物を食べると疲れがとれますよ!」
ワンコ先輩は少しだけ顔を赤くして固まった。
「はい、あーん。………指まで食べちゃ嫌ですよ。」
ワンコ先輩の口に飴を入れてやると、ワンコ先輩は真っ赤になっていた。
相当恥ずかしかったのだろう。
「美味しいですか?」
「………甘い…です。」
私はそのまま振り向くと柊君に笑顔をむけた。
「ひぃ様も食べる?」
私の言葉に柊君はマリナちゃんの後ろに回りマリナちゃんの頭を固定した。
「へ?」
マリナちゃんのちょっと抜けたような声がもれた。
「俺の代わりに数井が食べたいんだってよ。」
「えっ?なになになになに?この状況って嫌な予感しかしない。」
私はニコッと笑うと言った。
「女の子にそんな酷いことできるわけないでしょ?」
その言葉が言い終わる前にワンコ先輩が口を押さえたのが見えた。
「あいつ噛んだな。」
「もう少し大丈夫なはずだよね?噛んだね。」
ワンコ先輩は右足で地団駄を踏んでいる。
「………七宮会長って今どうなってるの?」
「あれ?酸っぱさに悶えてる。この飴、浩ちゃんが可愛い格好するなら装備しとけってくれた海外製の凶悪キャンディーなの!お菓子くれないから悪戯しちゃった!」
皆がドン引きしてるのは明らかだ!
「でも、ひぃ様は何であの飴知ってるの?」
「浩ちゃん怒らせて食わされた。」
私はその言葉に驚いた。
「浩ちゃんを?どうやって?」
柊君は少しだけ考えて嫌そうな顔をした。
「何で怒らせたかは忘れたけど、笑顔で背後に回り込まれて膝裏蹴られて倒されて背中のられて後ろからアゴ持たれて5~6個口の中入れられた………ピンクの飴は、なに味だろうと食わん!三日間味覚障害で何にも味がしなくなった時は悲しかったな~。」
皆がさらに引く。
「浩ちゃん格好いい!」
私がはしゃぐのを見て柊君も引いていた。
「でも、海外のお菓子って手加減を知らないよね。」
さらにワンコ先輩を見つめて言う。
「吐き出せば良いのに!」
「楓、あの飴中に死ぬほどヤバイ粉が入ってんだよ。出したところで何も変わらない………七宮見てるだけでアゴが痛い。」
「アゴ?」
「レモン想像しただけで唾たまるだろう?あれの酷いやっだ。」
可哀想。
「ひろぃよ。ニッヒー。くひがやはい。」
たぶん
酷いよ。ニッシー。口がヤバイ。
だろうな~。
「七先輩がお菓子くれないから!ごめんなさい。」
私はさすがに可哀想になった。
ワンコ先輩は涙目だ。
「チワワみたい。」
「ニッヒー!」
怒られてしまった。
「楓ちゃん!ちょっと………」
マリナちゃんに呼ばれて近付くとマリナちゃんに耳打ちされた。
「それで許してくれるかな?」
「絶対だよ!」
私はマリナちゃんに言われた通りにワンコ先輩に抱きついた。
「…許してくれる?」
なるべく下から見上げるように言う。
「………はひ。」
ワンコ先輩は耳まで真っ赤になって頷いてくれた。
私は恥ずかしいことをしてしまったのかもしれない。
すぐに柊君に引き離された。
「楓!数井の言うこときいたら駄目だ!ダメ人間になる!」
「………はい!以後気をつけます。」
取り合えずそう返すと、頭を軽くチョップされた。
「浩ちゃんが悲しむ。」
「………わかった。」
私はちゃんと反省したのだった。
柊君とマリナちゃんのやり取りは、たぶん楓ちゃんの秘蔵写真でしょうね。
予想では海に遊びに行った時の寝起き写真と浩ちゃんの話をして可愛い笑顔の楓ちゃんの予定です。
海外のお菓子って何でって物がありますよね。




