タンコブと出会い
三神先生は私の頭を診察、そしてタンコブを冷やすように氷袋を用意してくれた。
「取り合えず、教授に連絡取って向かえに来てもらうか?」
私は苦笑いを浮かべて首を横に降った。
「お父さん今インドに居るので、向かえは無理です。」
私の言葉に三神先生は首をかしげる。
「他に保護者は?」
「今日本にいる保護者は居ません。」
私の言葉に八尾君が続けた。
「僕が送っていきましょうか?」
私はギョッとした。
するだろ、普通、攻略対象者が家まで送ってくれるイベントなんてヒロイン以外が体験しては駄目だろ?
「なら、俺が悪いんだし、俺が送るのが筋だろ。」
二階堂君は当然と言った感じに私に近付いた。
またしても、姫抱っこしようとする彼の頭にチョップを落とす。
「痛い。」
「無理これ以上の羞恥プレイたえられるわけない、三神先生タクシー呼んでもらって良いですか?」
三神先生は苦笑いを作ると言った。
「…俺が送るよ、西田教授の大事な娘だし。」
私は八尾君からカバンを奪い取ってケータイを取り出す。
「すみません、タクシー一台菅田さん指名で…」
私は学校名を言って電話を切った。
やってやった。
満足しながらタンコブを冷やす。
「タクシー会社の番号知ってて、指名までする女子高生ってどうなんだよ?」
二階堂君は信じやれない物を見る目で私をみた。
「お父さんがよく使うから、タクシー会社の番号ぐらい入ってるよ、うちは菅田さん指名って決まってるの。」
三神先生はクスクスわらっている。
「明日、体調悪かったら、休んだ方が良いよ。」
「八尾君は優しいなー。」
私は今日2回目の言葉をはいた。
「大丈夫か心配だから携帯の番号とアドレスの交換をしておくか、教授も保護者も居ないんじゃ、すぐに駆けつけられる大人の番号があると、安心だろ?」
三神先生の言葉はもっともだが、何かあったら柊君に連絡すると思う。
なんて、言えないのでアドレスと携帯の番号を交換した。
「何かあったら、すぐに駆けつけるから。」
「ありがとうございます。」
私が笑うと三神先生は乱暴に頭を撫でてくれた。
そして携帯をしまおうとしたその時、二階堂君に携帯をとられた。
「ちょっと。」
「俺の番号も、持っとけ。」
「い、いらない。」
二階堂君はムッとしたようだった。
そして、うち終わると、そのまま携帯を八尾君に渡した。
「あ、はい。」
八尾君も、わたされると携帯をうち始めた。
「八尾君?」
「僕も連絡もらえたら嬉しいな!隣の席なんだから休みだったら心配だよ。」
八尾君から返された携帯を見ると、二人の携帯の番号とアドレスが入っていた。
「…アドまで…」
「お前の言うとこの、ハイスペック男子の連絡先だ。他の女子に横流しすんなよ。」
二階堂君にそう言われ私は目の前で二階堂君の連絡先を消去した。
「…おい、お前何してる。」
「だって、三神先生はお父さんの知り合いだし、八尾君は隣の席だから何かあったら連絡出来た方が良いかも知れないけど…どう考えても二階堂君のは面倒事しかうまない、いらない。」
二階堂君はかなりムカついた顔をした。
しかも、携帯を奪われた。
「次消したら、女子がたくさんいる時を見計らって親しげに話しかけるぞ!」
「…鬼!」
私が悔しそうにしているのが、おきにめしたのか二階堂君は意地悪な笑顔を作った。
タクシーを学校に呼んだことによって、タクシーの運転手に心配された。
いつもお父さんがお世話になってる運転手のため、孫のように思ってる楓ちゃんに何かあったらおっちゃん泣くよ!って心配された。
で、家に帰って来ると、それを柊君に見られて心配された。
「何かあったなら、俺に連絡しろ!心配すんだろうが!」
しかも、怒られた。
「ごめんね、次なんかあったら一番に連絡する。」
「どこぶつけたんだ?」
柊君は私の頭を撫でながらタンコブを探す。
私は柊君の手をとると、タンコブがあった場所にのせた。
「ここ。」
「明日、目をさまさないとか嫌だからな。」
「大丈夫だと思うよ、タンコブ引いたし。」
柊君は私をゆっくり抱き締めて深く溜め息をついた。
「本気で心配、明日朝起きたら朝一で俺のとこに顔見せにこい、たのむ。」
優しい
お互いに一人っ子なため、私と柊君は仲良し兄妹みたいだと勝手に思ってる。
柊君と出会ったのは3年前。
私が中1、柊君が中2の時だった。
私とお父さんが柊君の家の横に引っ越して来たからだ。
引っ越しの挨拶に行くと、素っ気ない対応に仲良く出来ないと本気で思った。
引っ越して最初に出来た友達が、柊君の家で家政婦をしてるキミちゃんだった。
スーパーでよく会うおばちゃん!
新鮮な野菜やお肉お魚の見分けかたを教えてもらったり、洋食を作るのが苦手なキミちゃんに簡単なオムライスの作り方を教えたりしてスーパーで会う年上の友達にキミちゃんはなった。
キミちゃんには部活で作ったお菓子もよくプレゼントしていた。
キミちゃんはそれを柊君に横流ししていたと、私が知ったのは柊君にお礼を言われたからだ。
中学の帰り道、突然柊君に話しかけられて驚いた。
そこで、キミちゃんが柊君の家で家政婦をしてる事を初めて知った。
驚いた顔を見て、柊君は楽しそうに笑った。
柊君は私立の中学に通っていたから柊君がふだんどんな人かは、解らなかったが、キミちゃんが信じた人間は信頼できると言われて良い人かもしれないと思えた。
それから柊君とはすぐに仲良くなったし、柊君の両親も私が居ると喜んで遊んでくれた。
柊君の両親も餌付けしたとも言えるか?
兎に角、柊君の家は私の第2の我が家になった。
だからこそ、柊君には幸せになってほしい。
ヒロインちゃんには悪いけど、邪魔します。
楓ちゃんに対する好感度がuqしてます